「・・特攻隊に代表される戦場の軍人たちはもとより、銃後の国民における義勇奉公、忠君愛国の精神と功業の数々を忘れることがあってはならぬ。それらの意義は歴史的に不朽であり日本精神の精粋であることは敗戦によっても何等動揺しない。しかし冷厳なる事実として敗戦を明視しなければならぬ。(日本精神は国体と世界文化摂取との二本立てでできているといったが)戦争中の指導者はただ國體を宣揚するに努めて相手国の物質的精神的全ての方面における実力を蔑視するに傾いた。・・この一種の興奮が麻酔的効果を伴って非科学的・非実証的・非計画的・非社会的・非協力的という類の国民的短所や弊害への反省を失わしめ・・國體ぼこりの増上慢となって上記弊害をますます助長せしめた。・・かかるあやまちを犯さしめたる原因としては殊に指導者層における日本精神に対する・・叡智の欠乏が考えられる、・・終わりに我々に課せられた新日本の建設は・・我が国体の裡に世界文化を摂取して新たなる日本文化を創造して以て世界に貢献するというわが歴史的大道を勇ましく進行する以外にない。・・民主主義化においても天皇を中心として戴く国体は依然として存在し得る。・・国体の護持は此処に存する。・・しかしてかかる日本精神にもとずいた民主主義の実現こそが我が国が世界に貢献すべき所以である。・・・(村岡典嗣「日本精神を論ず」終り)」
(最後に村岡は、途中で分析して日本精神の一番奥にあるとした「あかき心」「正直」「大和魂」を出してないが、指導者層が「国体」の宣揚に力を入れすぎ、もう一つの日本精神の特性である「世界的文化摂取」を怠ったのはこういう「あかき心」を失い、自己利益追求のセクショナリズムに走ったためであるというのがほんとうはいいたかったことであろうと思います。最初に述べたようにこの自己利益追求のセクショナリズムに犯されている指導者層こそ明治以来の日本を破滅に導いてきた元凶でしょう。その指導者層の心がなぜかくも汚れてしまってきたかは、廃仏毀釈によるモラルの崩壊にあるというのが滝川政次郎「日本人の歴史」にあります。ここにあります
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