「山伏問答」とは、相手が本物の山伏か或は当流のものかどうかを確認するための問答です。『勧進帳』では「勧進帳読み上げ」のあと「山伏問答」があります。これは聖護院山伏の例です。--------------------------------------------------------------------------------
【山伏問答】
答者 案内申す。案内申す。
問者 承け給う。承け給う。旅の行者、住山何れなりや。
答者 豊の国は求菩提の住。総本山聖護院宮門跡配下の先達にて候。
問者 本日、当道場に来山の儀は如何に。
答者 本日、当道場に於いて天下泰平、五穀成就祈願の採燈大護摩供ありとうけたまわり馳せ参ぜし者にて候。同行列座に加えられんことを請い申す。
問者 聖護院宮門跡配下の山伏とあるからには、修験の儀、御心得の筈。当道場の定めとして一通りお尋ね申さん。
答者 何なりと、お答え申さん。
問者 そもそも山伏の二字、その儀は如何に。修験の儀は如何に。
答者 山伏とは真如法性の山に入り、無明煩悩の敵を降伏するの儀。修験道とは、修行を積みてその験徳を顕す道にて候。
問者 修験道の開祖は如何に。
答者 修験道の開祖は役行者神変大菩薩なり。舒明天皇の六年一月一日大和の国茅原の里にご誕生。十七歳にして、葛城、顕の峰に抖そうし、十九歳にして大峰山に修行、密の峰を開き給う。斉明天皇の四年霊瑞を感じ、箕面山の瀧窟に於いて龍樹菩薩を拝して、修験の秘法をうけ給い、大峰順逆三十三度、御歳六十八歳にして箕面山天井ヶ岳に於いて昇天し給う。
問者 修験道の本尊は。
答者 総じては金胎両部の曼陀羅と言うべきも、修行専念の本尊は、大日如来の教令輪身大忿怒形の不動明王にて候。
問者 頭に戴く頭巾のいわれは如何に。
答者 大日如来五智円満の宝冠を表ず。十二のひだは十二因縁を顕す。右の六ひだは六道衆生還滅の儀、左の六ひだは六道衆生流転の儀なり。これ即ち凡聖不二の表示なり
問者 して、身につけたる鈴掛けの儀は如何に。
答者 入峰修行の法衣なり。鈴は五鈷鈴、即ち大日如来の三昧耶形にして、その音声は法身の説法なり。この大日阿字不生の宝鈴を衣裡にかけて、一乗菩提の霊峰するをもって、かくは名付けたり。
問者 肩にかけたる結袈裟は如何に。
答者 結袈裟とは修験専用の袈裟にして、九條袈裟を折り畳みたるもの、九合は九界を表じ行者は仏界にして十界一如の不動袈裟。また三股なるは三身即一。六總は六波羅密を顕すものにて候。
問者 腰につけたる其の綱は。
答者 螺緒と申す。山岳抖そうの際、絶壁をよづる時、または危難の際、これを解きて用うる要具にて、法儀には金界バン字の形、壇線の意を表ず。
問者 手に持ちたる錫杖の儀は如何に。
答者 錫杖とは一法界の総体にして衆生覚道の智杖なり。これに三種の別あり。四輪は四諦を表す声聞の錫杖。十二輪あるは十二因縁を表す縁覚の錫杖。六輪六度を表す菩薩の錫杖これなり。この錫杖の音声により三界六道に苦をうくる衆生の迷夢を驚覚するものなり。
問者 然からば問わん。汝仏者にして獣の皮を身につけたるいわれは如何に。
答者 これ引敷と申す。文殊菩薩が獅子に跨り降臨おりしを象る獅子乗の儀にして入峰修行勇猛迅速の形。無明法性円融無礙の儀にして、実用は木の根、岩角に座する行者の要具なり。
問者 腰に帯びたる利剣は如何に。
答者 不動の智剣。煩悩魔障を破断するものなり。
問者 八つ目草履とは。
答者 八葉蓮台を踏むの心なり
問者 然からば本日厳修せられる採燈大護摩供のいわれは如何に。
答者 採燈大護摩供とは、修験道の秘法護摩供にして、仏の智火をもって、業煩悩の薪を焼き尽くし、法性の理体を顕現するの儀にして、有漏生死の依身を断焼して本有不生の阿字に帰入し、五仏の三魔地に住し六大理観に入り、本尊と我と不二の境地に入るの儀にして、その形義、次第、観念には、深甚なる意義を有するものなり。
問者 先程よりのお答え、まこと聖護院宮門跡配下の山伏たること疑いなし。然からば、しからば、お通りめされ、案内申す。
答者 しからば御免。
【山伏問答】
答者 案内申す。案内申す。
問者 承け給う。承け給う。旅の行者、住山何れなりや。
答者 豊の国は求菩提の住。総本山聖護院宮門跡配下の先達にて候。
問者 本日、当道場に来山の儀は如何に。
答者 本日、当道場に於いて天下泰平、五穀成就祈願の採燈大護摩供ありとうけたまわり馳せ参ぜし者にて候。同行列座に加えられんことを請い申す。
問者 聖護院宮門跡配下の山伏とあるからには、修験の儀、御心得の筈。当道場の定めとして一通りお尋ね申さん。
答者 何なりと、お答え申さん。
問者 そもそも山伏の二字、その儀は如何に。修験の儀は如何に。
答者 山伏とは真如法性の山に入り、無明煩悩の敵を降伏するの儀。修験道とは、修行を積みてその験徳を顕す道にて候。
問者 修験道の開祖は如何に。
答者 修験道の開祖は役行者神変大菩薩なり。舒明天皇の六年一月一日大和の国茅原の里にご誕生。十七歳にして、葛城、顕の峰に抖そうし、十九歳にして大峰山に修行、密の峰を開き給う。斉明天皇の四年霊瑞を感じ、箕面山の瀧窟に於いて龍樹菩薩を拝して、修験の秘法をうけ給い、大峰順逆三十三度、御歳六十八歳にして箕面山天井ヶ岳に於いて昇天し給う。
問者 修験道の本尊は。
答者 総じては金胎両部の曼陀羅と言うべきも、修行専念の本尊は、大日如来の教令輪身大忿怒形の不動明王にて候。
問者 頭に戴く頭巾のいわれは如何に。
答者 大日如来五智円満の宝冠を表ず。十二のひだは十二因縁を顕す。右の六ひだは六道衆生還滅の儀、左の六ひだは六道衆生流転の儀なり。これ即ち凡聖不二の表示なり
問者 して、身につけたる鈴掛けの儀は如何に。
答者 入峰修行の法衣なり。鈴は五鈷鈴、即ち大日如来の三昧耶形にして、その音声は法身の説法なり。この大日阿字不生の宝鈴を衣裡にかけて、一乗菩提の霊峰するをもって、かくは名付けたり。
問者 肩にかけたる結袈裟は如何に。
答者 結袈裟とは修験専用の袈裟にして、九條袈裟を折り畳みたるもの、九合は九界を表じ行者は仏界にして十界一如の不動袈裟。また三股なるは三身即一。六總は六波羅密を顕すものにて候。
問者 腰につけたる其の綱は。
答者 螺緒と申す。山岳抖そうの際、絶壁をよづる時、または危難の際、これを解きて用うる要具にて、法儀には金界バン字の形、壇線の意を表ず。
問者 手に持ちたる錫杖の儀は如何に。
答者 錫杖とは一法界の総体にして衆生覚道の智杖なり。これに三種の別あり。四輪は四諦を表す声聞の錫杖。十二輪あるは十二因縁を表す縁覚の錫杖。六輪六度を表す菩薩の錫杖これなり。この錫杖の音声により三界六道に苦をうくる衆生の迷夢を驚覚するものなり。
問者 然からば問わん。汝仏者にして獣の皮を身につけたるいわれは如何に。
答者 これ引敷と申す。文殊菩薩が獅子に跨り降臨おりしを象る獅子乗の儀にして入峰修行勇猛迅速の形。無明法性円融無礙の儀にして、実用は木の根、岩角に座する行者の要具なり。
問者 腰に帯びたる利剣は如何に。
答者 不動の智剣。煩悩魔障を破断するものなり。
問者 八つ目草履とは。
答者 八葉蓮台を踏むの心なり
問者 然からば本日厳修せられる採燈大護摩供のいわれは如何に。
答者 採燈大護摩供とは、修験道の秘法護摩供にして、仏の智火をもって、業煩悩の薪を焼き尽くし、法性の理体を顕現するの儀にして、有漏生死の依身を断焼して本有不生の阿字に帰入し、五仏の三魔地に住し六大理観に入り、本尊と我と不二の境地に入るの儀にして、その形義、次第、観念には、深甚なる意義を有するものなり。
問者 先程よりのお答え、まこと聖護院宮門跡配下の山伏たること疑いなし。然からば、しからば、お通りめされ、案内申す。
答者 しからば御免。