< 2007年に掲載の フォトエッセイを 加筆・修正し、最掲載しています >
ダンスパーティーの会場になった、ホテル ヘリテイジ。
屋外のイベントもできる広い庭が 高級感を表しています。
フォトエッセイ 写真家の見た風景
― 第十三話 ― 心も踊る 魅惑の宵
あるとき私はダンスパーティー会場にいました。 ワクワク、ドキドキ。 初めての体験です! ・・・ って、私がダンスを踊るわけではありませんでしたー。
私は行きつけの写真店の店主に誘われ、ダンスパーティーの撮影の お手伝いに行くことになりました。 ダンススクールのPRを兼ねた写真集を製作する依頼が入ったとの事で、面白そうだったので、参加させてもらいました。
リハーサル現場の張り詰めた空気は、凛とした夜明けの空気と似ているものがありました。 リハーサル中は関係者以外、立入り禁止。 写真撮影も禁止されています。 主催者側から依頼を受けていた私たち3人だけが撮影しているので、なんだか、プロのカメラマンにでもなった気分です。
社交ダンスの知識も経験も無い私たちは、「 どこがシャッターチャンスなのか? 」 「 次にどんなポーズになるのか? 」 まったく分からない状態です。
2回のリハーサルでも要領を得られず、「 とりあえず、いっぱい写しとけばいいや 」 が、3人の合い言葉になりました。
リハも全力で行く!
オープニングを飾った二人。 休憩に入っても、
最後まで練習していたのが この二人です。
大人たちの踊る姿を 真剣なまなざしで見つめ
ていたのが、とても印象的でした。
ダンススクールの先生方の デモンストレーションの
あい間に、観客のためのダンスタイムがあります。
けれど先生方には、休む暇などありません。 大切
な生徒たちの 相手をしなければなりませんから。
ステージを囲んで、観客のテーブルと椅子が並びます。 観客の姿とダンサーが重ならないよう、低い位置から見上げて写すのがいい様です。 ダンサーの足も、長く写せるはずです。
天井には、オレンジ色のやわらかな照明が並んでいます。 これを背景に、ムードある写真が撮れそうです。
ストロボの光はあまり強くせず、部屋の明かりを利用した、雰囲気重視の写真にしたいところです。 が、
1. 写真集の購入を予約している生徒を中心に写すこと。
2・ 先生よりも生徒を、そして、誰が写っているのかがハッキリ分かること。
という条件が出てしまいました。
どれだけ綺麗な写真を写しても、売れなければ仕方がない。 商業写真の宿命を思い知らされます。
三脚を一番低く立て、手ぶれを防止します。 三脚を抱きかかえるようにして座り、カメラを180°旋回させる練習をします。 かなりみっとも無い姿だと、自分でも分かっています。 すぐに足もしびれてきました。 けれど、それが最善の写し方だと、覚悟します。
ダンスタイムはバンドの生演奏です。
「 ダンスをやってて良かった!! 」
そんな声が聞こえてきそうな、こころ
も踊る 至福のひとときです。
ステージ脇でカメラを構えていると、迫力ある写真
を撮らせようと、最接近してきます。
カメラをいつ蹴飛ばされるかも分からず、ヒヤヒヤ
ものです。 前髪で風圧を感じていました。
本番直前まで、持てる技術の最大限に挑戦するプロ
意識。 社交ダンスという枠組みを超えた 大胆な振り
付けに、300人の観衆が魅了されました。
せっかく写真屋さんにダンスパーティーの撮影に誘ってもらった訳ですが、「 動くものを写すのに、静止画では表現しきれない!」 という事を痛感させられる結果になりました。
半年後、私はカメラをビデオカメラに持ち替えて、フィールドに立つことになるのでした。
― 第十三話 ― 心も踊る 魅惑の宵 ― 終 ―
< 無断転載を 固くお断りします >