ふせちゃんのブログ

布施隆宏 公式ブログ。 鉄道写真 風景写真 ジオラマ制作など 趣味の世界を紹介します。

フォトエッセイ 雲海を見に行く ♪

2012-02-17 22:43:36 | 伝えたいもの

    < 2007年に掲載の フォトエッセイを 加筆・修正し、再掲載しています >



 御荷鉾スーパー林道より 雲海の二子山
 < OM-3 80mm F11 1/60sec  RDP >

 写真集 西上州の山 ( 上毛新聞社 刊 ) より抜粋


フォトエッセイ  写真家の見た風景

― 第八話 ―  雲海を見に行く ♪

シーン1.
 あるとき私たちは、前橋花火大会の会場にいました。
 午後の降水確率は70%。 生中継予定のFM群馬に 「 花火決行 」 の確認を取って、いざ利根川周辺へ。
 今回は友人の ワゴン車の中での宴会です。 開け放たれたルーフから、打ち上げ花火を眺めます。 駐車スペースを何とか確保し、花火が始まると同時に 宴が始まりました。
 そのうちに、ルーフから雨が吹き込み、食料を濡らし始めました。 花火を打ち上げるペースが早くなり、数を減らして、予定より30分も早く 終了してしまいました。
 宴会は今が真っただ中で、さらに1時間ほど続きました。 誰も居なくなった駐車場に、ウチの車だけがポツンと残っています。
 さて、そろそろ帰ろうかという頃、誰もが 「 このまま帰るのは惜しいな 」 という気分になっていました。
 ふと、私が 「 雨の降った次の日は、雲海になり易いんだよ 」 と言ってみると、全員一致で 山に行くことになりました。 しかも、「 そのあと、温泉に行こう 」 と付け加えれば、みんな 大はしゃぎです。

 目指したのは、上野村の御荷鉾 ( みかぼ ) スーパー林道。
 メンバーは、私と友人夫婦と、その子供の 小学生と幼児の、合計5人。 途中のコンビニで 翌日の食料と花火を買い込み、現地に着いたのは 午前0時を回っていました。
 5m先も見えない濃霧の中での花火大会。 私たちは、幻想的と言うには 度を超した風景の中を、花火を持って 駆け回っていました。
 本当は、分かっていたのです。 雲海を見られる確立は1割程度。 このまま霧が晴れなければ、「 残念だったねー 」 で、笑ってごまかすつもりだったのです。
 それでもちょっと責任を感じ、まだ暗いうちに車を降りて、雲海のかけらを見つけるため、林道を歩き回りました。
 あたりが白みかける頃、遠い山並みに雲がたなびいているのが見えました。
 「 一面の雲海 」 という訳にはいきませんでしたが、初めてこの風景に出会った彼らにとっては、印象に残るものになったようです。
 でもって また、こういう時に限って、カメラを持って来ていないものなのですが・・・。




 御荷鉾スーパー林道より 樹氷の ラインダンス
 < OM-3 70mm F5.6 1/250sec  RDP >

 写真集 西上州の山 ( 上毛新聞社 刊 ) より抜粋

シーン2.
 11月下旬。 私は、御荷鉾スーパー林道へと 車を走らせていました。 前日の雨は夜半過ぎにあがり、空には星がまたたいています。
 山道に入り、東の空が少し明るくなった頃、私はある異変に気が付きました。 山の稜線付近が、霧がかかったように 白く見えています。 「 この分だと霧で何も見えないな 」。 そう思いながらも さらに進むと、標高1000mあたりから 積雪になっていました。 どうやら、霧のように見えていたのは、白く染まった樹氷だったようです。

 郡界尾根のトンネルを抜け、御荷鉾林道に入ります。 日の出には 間に合わなかったものの、日差しを浴びて 中腹から水蒸気が 高く舞い昇っていくのが見えます。
 小さな尾根を回り込むと、一面の雲海が開けました。 雪をまとったカラ松の林。 その木々の間から のぞく秩父の山々。 そして、車道のすぐ下から遠い山並みまでを、白くまぶしい 雲の海が広がっています。
 標高1000~1400mを走る、全長70kmの 御荷鉾スーパー林道。 私は、車道まで打ち寄せる 雲海の水しぶきをくぐり抜け、いちばん南に突き出た 岬を目指しました。
 太陽が高度を上げるに従って、山肌に陽が差し始めます。 雪化粧した稜線に スポットライトが当たると、樹氷の森が ラインダンスを踊っているように、輝いて見えました。
 南の方角に両神山。 その左には、雲からチョコンと顔を出した 二子山の姿が。 双耳峰 ( 西岳、東岳 ) の二子山は、雲の増減によって 大きくなったり小さくなったりを 繰り返しています。
 11月の雪は すぐに溶けてしまいましたが、普段なら日の出から1時間もすれば 消えてしまう雲海が、今日は正午過ぎまで見えていました。 山の風景写真は 十数年撮っていますが、これだけはっきりとした 雲海を見ることが出来たのは、後にも先にも、この日だけでした。
 「 たとえ無駄だと思うことでも、諦めずに続けていれば、いつか価値のあるものになる ( 持論 ) 」。 その言葉を信じて、毎週末、夜明け前から始めている 写真活動。 たまには、報われる事もあるのです。。。




 御荷鉾スーパー林道より 両神山の雲海
 < OM-3 50mm F11 1/250sec  RDP >

 写真集 西上州の山 ( 上毛新聞社 刊 ) より抜粋


― 第八話 ―  雲海を見に行く♪  ― 終 ―

< 無断転載を 固くお断りします >



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