『 序 章 』 美しい風景に出会ったとき、作曲家はその風景にメロディを想い浮かべ
るという。
只見線沿線はこれから4か月の間、きびしい雪の季節を迎える。 なまり色の雲。 八海山周辺はすでに雪模様。 次に雪が降る時には、間違いなく里にも落ちてくる。
こんな重苦しい風景に、人はどんなメロディを想い浮かべるのだろう。
< OM-3 80-210mm F4 1/250sec ハーフNDフィルター RD100 >
フォトエッセイ 写真家の見た風景
― 第十四話 ― 会津弁の丁寧語
あるとき 私たちは、JR只見線に乗っていました。 JRが販売している割引切符 「 土日きっぷ 」 を利用しての、冬の旅です。
福島県の郡山から 磐越西線に乗って会津若松へ。 そして、只見線に乗って 新潟県の小出へと抜ける、ローカル線を乗り継ぐ旅になります。
この旅の、計画段階での友人とのメールのやりとりには、「 雪見列車 」 という言葉が飛び交っていました。
「 雪見列車 」 という名の臨時列車が走っている訳ではないのです。
豪雪地帯をゆくローカル線。 暖房の効いた車内でお弁当を広げ、ほろ酔い気分でまったりと過ごす。 吹雪の中をひた走る列車の姿を心に想い描いて、私たちは 「 雪見列車 」 と呼んでいたのでした。
以前、新潟に在住する方に電話をかける機会がありました。 その人は電話を取るたび、「 ハイ、○○でしたー。」 と、語尾を過去形にして 声を返していました。
変わった電話の取り方だなぁと、ずっと不思議に思っていました。 そして、その後 分かった事ですが、会津 ・ 越後地方の人の丁寧語は、過去形になることを知りました。
相手に敬意を払い、言葉使いを丁寧にしようとすると、なぜか 過去形になるの でした。
『 静 寂 』 雪は、音を吸収する働きがある。 列車が接近していても、背後に野生動物がいたとしても、その存在に気付けない。 「 静寂 」 という名の騒音に心をかき乱されて、鼓動の高鳴りは治まることが無かった。
都会の鉄道は1cmでも雪が降れば、運転を取り止めてしまう。 只見線は10cm以上の雪が積もっても、時刻表通り、ピッタリに運転されている。 強引な気もするが、一度止めたら それまでだし・・・。
< OM-4Ti 85mm F2.8-4 1/250sec RD100 >
旅行中、私たちはある異変に気が付きました。 山間部に入っても、陽が当たっているのです。 会津 ・ 越後地方の冬は、ひたすら雪が降り続く。 青空がのぞくのは一ヶ月に一度くらいのもの。
吹雪の中の列車を期待して出掛けたわけですが、どうやら、その一ヶ月に一度の晴天日を、ミゴトに引き当ててしまった様です。
予想外の展開に戸惑いながらも、結果的には、期待以上の景観に出会うことができました。
夕日に向かってひた走る列車の車窓から、私たちは、オレンジ色に染まっていく雪原のその果てを、声も無くただじっと、見つめているの でした。
『 慈 雪 』 越後の冬は ひたすら雪が降り続く。 それが当り前だと思ってた。 気が付くと、灰色の空は青空に変わっていた。 2月中旬、午後になっても陽が山々を照らしているのが、なんだか妙に嬉しかった。
< OM-3 110mm F5.6 1/500sec RD100 >
― 第十四話 ― 会津弁の丁寧語 ― 終 ―
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でも、当方と東京の仲間と会話すると普通に話しているつもりですが、何時もなまっていると言われますよ。
ま~みんなが標準語を話すよりも地域地域により色々な言葉があった方が、日本らしいと思います。
なまりの強い方から電話があり、会社名や連絡先を聞いたのですが、聞き取れませんでした。
電話を取り次いだ事務所の女性に 「 今の電話、どこの会社からだったの? 」 と聞いたところ、「 聞き取れなかった! 」 とのこと。
「 まずい! 修理部品の注文もらったのに、どこに送っていいか分からないやー! 」
などという 失敗をやらかした事があります。。。