大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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☆(  しづめばこ P574 )                          

霧の狐道57

2008-05-19 18:05:53 | E,霧の狐道
 由紀ちゃんは前を向いたまま、俺に言った。

「 何、しらばっくれてるのよ!
 昨日、お風呂覗いたでしょ!」
「 由紀ちゃんが入っていたとき?」
「 そうよ!」
「 俺が?」
「 そう!」
「 風呂の窓は、庭に面してるな。
 生垣を乗り越えたら、目の前だ。
 ムフフフフフ・・・・!」
「 何がムフフフよ!
 この変態オトコ!」
「 あっ、違う違う。
 違うって!
 俺じゃないって!」
「 ダメダメ、また、誤魔化そうとする!
 おかげで、変な夢まで見たわ。」

怒った横顔が、ちょっと恐い。
俺は、重ねて否定した。

「 そんなこと、してないよ。
 何時頃だよ?」
「 9時半よ。」
「 9時半だったら、親父と一緒にテレビを観ていたよ。
 9時から11時まで、テレビで映画をやっていたから、それを観ていたんだ。
 途中に、家から出たりしていないよ。
 嘘じゃないからね、親父に聞けば分かるよ。」

由紀ちゃんは、横目でチラッと俺を見た。

「 そう・・・?」
「 ホントだって!」
「 う~ん・・・。
 じゃ、思い違いかな・・・?」

とにかく、俺は事情を聞かなければと思った。

「 どうして、俺だと思ったの?」
「 うん、声がしたの。
 “お~い、由紀ちゃん”って。
 私がお風呂に入っていたら、お風呂の窓から聞こえたのよ。
 あの声は、貴ピ~の声だと思ったんだけど・・、変ね・・?」

もう、俺は分かっていた。

“ あいつだ!
 でも、説明しても、由紀ちゃん信じてくれないだろうなぁ・・。”



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