由紀ちゃんは前を向いたまま、俺に言った。
「 何、しらばっくれてるのよ!
昨日、お風呂覗いたでしょ!」
「 由紀ちゃんが入っていたとき?」
「 そうよ!」
「 俺が?」
「 そう!」
「 風呂の窓は、庭に面してるな。
生垣を乗り越えたら、目の前だ。
ムフフフフフ・・・・!」
「 何がムフフフよ!
この変態オトコ!」
「 あっ、違う違う。
違うって!
俺じゃないって!」
「 ダメダメ、また、誤魔化そうとする!
おかげで、変な夢まで見たわ。」
怒った横顔が、ちょっと恐い。
俺は、重ねて否定した。
「 そんなこと、してないよ。
何時頃だよ?」
「 9時半よ。」
「 9時半だったら、親父と一緒にテレビを観ていたよ。
9時から11時まで、テレビで映画をやっていたから、それを観ていたんだ。
途中に、家から出たりしていないよ。
嘘じゃないからね、親父に聞けば分かるよ。」
由紀ちゃんは、横目でチラッと俺を見た。
「 そう・・・?」
「 ホントだって!」
「 う~ん・・・。
じゃ、思い違いかな・・・?」
とにかく、俺は事情を聞かなければと思った。
「 どうして、俺だと思ったの?」
「 うん、声がしたの。
“お~い、由紀ちゃん”って。
私がお風呂に入っていたら、お風呂の窓から聞こえたのよ。
あの声は、貴ピ~の声だと思ったんだけど・・、変ね・・?」
もう、俺は分かっていた。
“ あいつだ!
でも、説明しても、由紀ちゃん信じてくれないだろうなぁ・・。”
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