日々の恐怖 11月17日 墓の道
長野在住のHさんの話です。
その話は、Hさんが母親から聞いた話です。
母親が小学生の頃、徒歩で1時間ほど歩いて学校に通っていた。
その途上に、1つ山を通る。
何の謂れもない普通の山だ。
ある日、いつものように帰宅途中だった母は、その山で見慣れない道を発見した。
普段から同じところを通っているのに、
“ こんな道なんか、あったっけ?”
などと思いながら、気分でその道を通った。
その道を歩いていると、不思議と幸せな気分に包まれた。
一本道がずっと続き、しばらくすると出口が見えた。
その先には見知った光景が広がっていた。
ふと、背後が気になり振り返ってみると、なぜ今まで気づかなかったのかという程の無数の墓が並んでいる。
恐らく放置された墓で、草がぼうぼうに生えていた。
急に怖くなった母は走って家に帰り、それを祖母に報告したが、
「 そんなところ、近所にある訳ないでしょ。」
と一蹴された。
更には、普段1時間かけて帰ってくるはずが5分で帰ってきてしまったようで、
「 勝手に早退したな!」
と怒られてしまった。
そこで、母も意地になって祖母を引っ張って、もときた道を探すも、当然ある訳もなく、
「 嘘をつくな!」
と、なおさら怒られて家に戻った。
翌日、念のために先日入ったはずの山道を探してみても見つからず、結局その幸せな気分に浸れる墓場は、一度見たきりだったそうだ。
母親はHさんに、そんな昔話を懐かしそうに語ったという。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ