日々の恐怖 11月24日 我が家の妖怪
専門学生の頃に深夜専門でコンビニのアルバイトをしていた時期がある。
ある日の深夜1時頃に駐車場の掃除をしてたんだが道路を挟んだ向こう側のほうで、何か乾いた物を引き摺る、
「 カラカラカラ・・・・。」
って言う音が聞こえてきた。
最初は、
“ こんな時間に、酔っ払いが木の枝でも引きずって歩いてんのかな?”
と軽い感じで捉えてたのだが、通り過ぎて行ったと思ったら、また戻って来てと往復を繰り返していることに気づいた。
しかも移動スピードが徐々に加速していて明らかに在り得ない速度で移動している。
流石に気持ち悪いなと思ったが、勤務時間はその日は深夜3時までだったから駐車場掃除はそこそこにして店内に戻ってバイトを続けていた。
それで、勤務時間も終わって店を出たのだけれど、その時には音も止んでいたので、
“ まあ、あれは気のせいだったんだ。”
と思うことにして、自転車に乗って家に帰ろうとした。
しかし、少し店を離れた辺りで、俺の後ろの方からまた、
「 カラカラカラ・・・・・。」
って聞こえてきた。
びびって少し早めに自転車を漕ぐが、音は明らかに俺に付いてきている。
俺の家はバイト先の店から10分くらいしか離れてないから、
“ ここは、むしろ焦って行動した方が危険だ。”
と思って、早めに、でも慎重に自転車を漕いで行く。
それでも、音は俺から10m以上は離れてはいるが、ぴったりと付いて来る。
家の近くの所まで来て、あと角を3つ曲がったらすぐに家につくという距離まで来たとき、1つ目の角を曲がった途端、音は急に俺の真後ろまで接近した。
「 カラカラカラ・・・・・。」
という音が、
「 ガラガラガラ・・・・・・。」
と大きく背後で鳴り響いた時は、流石に全身から鳥肌が立った。
緊張はピークにまで達していたけれど、もう家まであと少しという所まで迫っていたから、振り返りたい気持ちを必死で堪えて、とにかく自転車を漕ぎ続け、家の門が見えた時には、すぐさま中に飛び込んだ。
家までついたという安心感か、びびりながら振り向いた先には、拍子抜けだろうが何もいなかった。
その次の朝には家族に深夜にあったことを話して笑われた。
母からは妖怪ガラガラとか、変な名前を付けられたそれは、家族の間で暫く茶の間を賑わす話題になっていた。
それから、4年くらいたったときのことなのだが兄(長男)から唐突にこんな話をされた。
兄「 あの当時にさ、お前には言えなかったことがあるんだけど、実はその音は俺も聞いてるんだよね。
大分昔なんだけど次男(これも兄)にさ、
『 何か気持ち悪い音が聞こえるから、一緒に聞いてくんない?』
って言われて、一緒に部屋で外の音聞いてたら、確かになんかお前が言ってたような音が聞こえて、二人して気持ち悪いなって話してたんだわ。」
俺「 ちょ、言えよ!」
兄「 だって、うちの周りで聞こえてたんだぞ、そんなこと言ったら余計びびらすだけだと思って言えなかった。」
どうも、そいつは随分前からうちを狙っていたみたいです。
ちなみに、今でも数年に一回くらいは聞こえて来ます。
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