日々の恐怖 3月14日 雪の駐車場(2)
もう、結末はひとつしか見えなかった。
窓の雪を払ってみたら、やっぱり、いた。
後部座席に横になって、目を瞑っていて呼びかけに応じない。
足元には練炭が置かれていた。
正直もうだめだろうと思ったけど、無線を傍受してくれていた本署が救急車を呼んでくれていたらしく、遠くから救急車の音が聞こえていたので、窓を叩き割って、足をつかみ、外に引っ張り出そうとしたとき、いきなりその人がクワッと目を見開いた。
俺は、とんでもなくびっくりして、少し固まってしまったけれど、どんどん大きくなる救急車のサイレンで少し冷静を取り戻せたんだと思う。
俺はもう、その人が生きてるのか死んでるのか、生死の境を彷徨っているのか、もうわからなかった。
目を見開いたのを見てから、とても混乱していたと思う。
体は冷たかったが、とりあえず心臓マッサージをして、もしかしたら助かるかもという希望を持っていた。
救急隊員と本署からの刑事さんたちがほぼ同時に到着して、俺は、その人たちに状況を説明して、それぞれの担当に引き継いだ。
しばらくして、仲のよかった刑事さんが近づいてきて、
「 何で心臓マッサージなんかしたんだ。
死後硬直の具合から死後1日は経ってる。
死因解明のためにも、今後は明らかに死んで時間が経ってる死体は、そういうことはしないでくれ。」
と言われた。
その言葉を聞いたとき、
「 目が開いたんです。」
とは、言えなかった。
俺自身、ありえないことだと思っているし、言ったら、どうかしていると署内中の笑いものだろう。
あのときのことは今でもゾッとするし、これは不思議な体験だったなと今でも思う。
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