日々の恐怖 3月16日 仕出し(1)
大した話じゃないけど、実際に俺が不思議だと思ったことだ。
大学の頃地元の友達の家でバイトをしていた。
仕出しもしてる割烹だ。
俺の仕事はお客さん帰ったあとの片付け、皿洗い、そして配達だった。
配達っていうのが近所の寺や葬儀会場に弁当や料理を持ってくのが主だ。
お通夜の時の葬儀会場への夜食の注文もよくあった。
でも、何故かそれの注文の数がよく間違える、しかも必ずひとつ多い。
葬儀場の裏口で遺族の人に、
「 ひとつ多いよ。」
と言われることが結構あった。
注文を受けるのは女将である友達の母ちゃんか中居さんで、俺のせいじゃない。
「 今日もひとつ多かったですよ。」
とか女将さんや親父さんに報告すると、
「 今までいた家族の分まで頼んじまうんだろ、精進落としだ食っちまえ。」
とか言われて、だいたい夜食の注文は親子丼かうな丼だから有難く頂いていた。
それで、何年か前に俺の父親が死んだ。
嫁さんと実家から離れたところで住んでたから地元に戻って葬式をした。
通夜は俺が配達してた葬儀場だった。
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