日々の恐怖 6月8日 心当たり(1)
病気で入院しているばあちゃんを、親戚揃って見舞いに行ったときのことだった。
実際、ばあちゃんの容体は芳しくなく、それは見舞った全員が既に知っていた。
ばあちゃん本人がどこまで自分の状態をわかっていたかは、俺にはわからない。
そんな時、従兄弟が急にばあちゃんにしがみついて泣き出したんだ。
それも、子供が泣きじゃくるように、わんわんと泣いた。
みんな焦っていた。
まるで、ばあちゃんが今にも死んでしまうとでも言わんばかりの騒ぎだからだ。
なんとか落ち着かせてなだめようとすると、従兄弟は泣きながら、
「 自分のせいで、ばあちゃんが死ぬ。」
と言い出した。
わけがわからないなりに詳しく聞いてみると、夢の話だという。
普通の日常的な夢を見ていたら、唐突に黒い男が現れて質問をされた。
道でも尋ねるような自然さに、従兄弟はつられるように答えてしまったらしい。
「 近々、死んでしまうものの心当たりはないか?」
「 ばあちゃんのこと?」
目を覚ましてから、
“ 何てことをしてしまったのだろう。”
と思った。
日々病状が悪くなりつつあるばあちゃんの様子に、あの男は死神だったのではないかと思うようになり、とうとう耐えきれなくなったとのことだった。
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