日々の恐怖 6月30日 歪み(2)
その日を境に爺さんすら兄に声をかけなくなった。
それから2年して大学進学のために兄は一人暮らしになった。
大学卒業の時に連絡は寄越したものの、それ以来連絡はこず、連絡手段もなく兄は行方不明になった。
たぶん兄は自発的に行方をくらましたと思う。
婆さんを無視し続けた頃くらいから、家にいる事に嫌悪感を持ち始めていたそうだ。
お釈迦様が現れたとき、爺さんは恐怖したのではなくて、声を出そうと思っても出なかったので、今話しかけてはいけないんだと本能的に感じたそうだ。
元々船乗りだったのもあり、水の神様に昔助けてもらったとかで家にも色々祀ってあったような人だった。
信仰深い人がそういうものを見るとそう思い込んでしまうのか、はたまたウソなのかはわからない。
ウソをつくような人でも無い人から、耳からお釈迦様と聞いたとき、ちょっと笑ってしまった。
父親からの虐待については、兄以外はみんな大丈夫だった。
原因もハッキリしてて、兄は父に反抗的だったからだ。
俺とか妹とかは理不尽な事を言われてもわからんから、ふんふんって聞いてるんだけれど、兄はそうじゃなかった。
最初の虐待があるまでは兄も聞き流してたけど、最初の虐待があってからはほとんど父を無視していた。
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