大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 9月26日 桜

2020-09-26 09:15:58 | B,日々の恐怖



 日々の恐怖 9月26日 桜



 自分は昔から好きな神社があって、そこの桜や銀杏を見にバイクで行っていた。
ある日その神社の近くで、中古住宅のオープンハウスやっていた。
今でも、その時どうして家なんか見ようと思ったのか分からないけど、何故か家に入りたいと強く思った。
 家なんか見学するのは初めてだし緊張したけど、中には爺さんがいて、

「 この家は売れてるんやけど、まあ見てやってください。」

と言ってくれたので、安心して見せてもらった。
 建物は古めだけど、立派な邸宅って感じで庭も広い。
庭には大き目の桜が植えてあって良いなあと思い、桜を褒めると、爺さんは、

「 今度住む人には、桜を切って引き渡さなきゃアカンのや。」

と寂しそうに呟き、何かをじっと考え込んでしまった。
帰り際、爺さんが俺の連絡先を知りたいというので教えて帰った。
 数週間後、その爺さんから電話が掛かってきて、俺に住んで欲しいという。
しかも売値が相場より信じられないほど安い。
だが当時の俺の社会人ランクでは、まだまだ到底及ばない代物だったのに、何故かトントン拍子で話が進み、偶然と不思議が絡み合い、俺は家を手に入れた。
 爺さんは家の売主だった。
そして、爺さんはこんなことを言った。

「 家と桜が、あんたに住んで欲しいって言うんですわ。
こうするしか無いんですわ。」

 当初、自分には不釣合いな家だと思ってたけど、あれから5年が経ち、自分でもビックリするぐらい昇進し、会社も大きくなり、それなりになって来た。
あとで知ったが、家の桜は例の神社から分けてもらった物だったらしい。
 また今年も桜が綻んで来た。
神社の桜と家の桜が、俺と家を結びつけてくれた思っている。








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