日々の恐怖 6月28日 左手(2)
しばらく沈黙が続いたが、失言に酔いが一気に覚めた俺は、
「 なんか変なこと聞いちゃってスイマセン。」
と、心から詫びた。
その間、リストバンド越しに手首をさすっていたKさんは不意に、
「 君さ、お化けとか幽霊とか、そう言う話信じるタイプ?」
と、意外なことを聞いてきた。
唐突な質問に面食らったが、俺はこう答えた。
「 いや、むしろ好きっすね。
昔、稲川淳二のライブとか行ったことありますよ。」
Kさんは、
「 そうか、好きなんだその手の話が・・・。」
と言うと、ゆっくりと傷跡の由来を語ってくれた。
Kさんは高校の頃、彼女と肝試しに行ったことがあるそうだ。
肝試しと言っても本格的な心霊スポットではなく町外れの小さな雑木林で、幽霊が出ると噂が流れた程度の場所らしい。
放課後、彼女と2人で雑木林に来てみたが、それらしい様子は全くない。
肩透かしを食らった気分だったが、少し奥まったところに小さな鳥居と祠を見つけた。
あまりしっかりと管理されていないようで、祠は朽ちかけている。
が、それだけ。
肝試しに飽きてきたKさんは、彼女に、
「 もう帰ろうぜ。」
と声をかけたが、なぜか彼女は祠の前に行き、あたりまえのように扉を開けた。
「 なにこれ、見て見て!」
中にはお札やら燭台の他に、なぜか三宝の上に石が置いてある。
大きさは拳大で何の変哲もない、そこらに転がっているような石だ。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ