一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『約束された場所で-underground2』

2007-03-27 | 乱読日記

村上春樹による『アンダーグラウンド』の続編で、今回はオウムの(元)信者へのインタビューです。

巻末には河合隼雄氏との対談(ひとつは『アンダーグラウンド』刊行後のもの、もうひとつは本書のためのもの)が収録されています。

本書は1998年の刊行なので、河合隼雄さんが(文化庁長官などという厄介ごとを引き受ける前で、当然)御元気な頃ですから、非常に示唆に富む対談になっています。

本書では『アンダーグラウンド』のときも村上春樹がこだわっていた「物語性」への問題意識--麻原彰晃のストーリー、特に死生観・終末思想に対抗するストーリーをわれわれの社会が持ちえていなかったこと、一方でオウムの元信者たちの、ストーリーへの思い入れ方=唯一の世界観にあまりにも単純に同一化してしまうこと(平たく言えば純粋だが薄っぺらい考え)への違和感はより高まります。

河合隼雄さん曰く

やっぱり人間というのはほんとにしょうもない生物やからね。だから自分の悪というものを自分の責任においてどんだけ生きているかという自覚が必要なんです。

最後の対談だけでも読む価値はあると思うのですが、オウムを正邪の基準で考えない(逆に多数の善良な人々が判りやすい正邪の基準に巻き込まれてしまったこと自体が問題だという)問題意識は健全だと思います。


それは現在でも、安倍政権の改憲論議とか北朝鮮をめぐる六カ国協議を国民に提示するやり方や逆にマスコミ(特に朝日新聞など)の論評のありかたへの補助線にもなるかと思います。

 






コメント (2)
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