と、いきなりインパクトのある表紙ですが、最近マスコミにもよく出ている小泉武夫東京農業大学教授のエッセイなどをまとめた本です。
世界中の発酵食品について触れられているのですが、すごいのが著者が全部それを実際に食べた経験があること。
「さすがに抵抗がありました」などといいながらも絶対に断らない姿勢は研究者として立派です。
もっとも発酵は太古からの人間の食料保存やビタミン・アミノ酸を摂取するための知恵であり、「薬食い」とも言われるように、発酵食品は身体によいことからそれぞれの文化に定着したものですから、臭いへの違和感はあるものの、理屈で言ったら身体に悪いわけではありません。基本的には人間は酵素による発酵臭と腐敗臭であるアンモニアを本能的にかぎ分けられるらしく、アンモニアを生成する唯一(?)の発酵食品である韓国南部のエイの発酵食品(強烈な刺激臭で自然と涙が出るので冠婚葬祭の時の必需品らしい)以外では間違って中毒になるということもないそうです。
とはいいながら、エスキモーがオットセイの皮につめて地面に埋め込んで丸ごと発酵させた海鳥を肛門に口をつけて中身をすする(これは北極圏では貴重な栄養源だし、相当臭いがクセになるらしい)などという話を聞くと、世の中は広いなと思わざるを得ません。
いざそういう場面になったら僕だったらどうしますかね・・・
発酵は基本は食品製造のための伝統技術であり、本書でもいかに美味しいか、美味しく食べるにはどういう料理法があるかというところにかなりのこだわりを持って触れられています。
レシピなども参考になるものがけっこうあります。
『もやしもん』の樹教授のモデルとも言われ、少なくともネタ元でもあるのでこちらをお読みの方は既にご存知の話もあるとは思います。