一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

ネットカフェ難民

2007-08-30 | よしなしごと

ネットカフェ難民5400人 50代も23%、厚労省推計
(2007年8月28日(火)15:58 産経新聞)

定まった住居がなく、インターネットカフェなどで寝泊まりしている「ネットカフェ難民」が全国で約5400人に上ると推計されることが28日、厚生労働省が実施した調査で分かった。20代が27%で最多だが50代も23%おり、高齢層にも広がっていることが判明。このうち半数が日雇い労働など非正規労働で日々の生計を立てているとみられるほか、失業者や無業者も全体の4割に達しているという。
(中略)
厚労省職業安定局は「住居のない不安定就労者の数が、多いか少ないか、意見は分かれるところ。しかし、就職していないために住居を持てず、住所がないために就職できないという悪循環があるのは確かで、これを絶つための支援を行っていく必要がある」と話している。

これに対しては
「お客様は難民ではない」ネットカフェの業界団体が声明
(2007年8月29日(水)00:30 INTERNET Watch)

厚生労働省が8月28日に公表した「住居喪失不安定就労者の実態に関する調査」では、ネットカフェなどに寝泊まりしながら不安定就労に就いている人の実態を報告している。この調査にあたっては、JCCAにも協力の打診があったが、「ネットカフェ難民ありき」の調査だとしてJCCAでは協力を断わったという。

という業界からの批判もあるようです。

見出しの「5400人」という数字またはネットカフェをとらまえて人数を推計することの意味合いはいまひとつわからないので、厚生労働省のレポート(こちら)をみてみました

調査対象住居喪失者のうち、寝泊まりの場所として「ネットカフェ等のみ」利用する者
(12)は、東京では4.0%、大阪では14.6%である。逆に言えば、これらに該当しない96.0%(東京) ・85.4%(大阪)の者は、寝泊まりのために路上やネットカフェ等以外の施設も利用しているということになる。
「路上」を利用する者の割合は、4割程度(東京41.1%、大阪41.5%)である。
その他の施設の利用の状況をみると、東京では「ファーストフード店」(46.4%)や「サウ
ナ」( 32.1%)が多く利用されている。
これを年齢別にみると、「友人の家など」を利用する者は若年層で約半数(東京49.4
%)であるが、中高年層では6.3%(東京)にとどまっている。
また、「路上」を利用する者は、若年層( 東京34.6%)に比べて中高年層(東京44.8%)
に多い。(p23)

ちなみに、簡易宿泊所(ドヤ)の利用は東京3.4%大阪14.6%となっています。
一方でこういうデータもあります。

調査対象住居喪失者のうち就業者の就業形態については、「日雇直用労働者」が最も多く(東京45.6%・大阪36.0%)、「日雇派遣労働者」はそれよりも少ない(東京18.1%・大阪20.0%) 。
(p31)

調査対象住居喪失者のうち就業者の職種については、「建設関係」が最も多い(東京40.9%・大阪24.0%) 。次いで、東京では「運転・運搬・倉庫関係」( 13.5%) 、大阪では「製造関係」( 20.0%)が多い。
(p33)

「住居喪失不安定労働者」という言葉から私がイメージするのは、簡易宿泊所や公園などに住んで日雇い労働をする人だったのですが、これを見ると就業形態は(私の偏見による)「従来型」と同じでありながら生活形態が今までと違う人々が一定数いる(増えている?)ということだと思います。
人数的には「従来型」の人の方がまだだいぶ多いのかもしれませんが、携帯電話の普及などで、人集めに来るところに住んでいないと仕事にありつけない、ということではなくなりつつあるのでしょうか。


つまり「ネットカフェ難民」と言っても、その多くは問題の根っこや就業形態は従来型の「住居喪失不安定労働者」と同じなので、やはりとりたててこの名称を使うのは問題をミスリードすることになるように思います。
ネットカフェが「住所喪失者」をもたらしたり、新しい「住居喪失不安定労働者」の労働形態を作っているわけではないので。

就業支援など何らかの支援が必要な人が一定数いて、しかも深夜営業の施設に分散しているとなると、支援の仕組みを構築するのは難しくなるというあたりが一番の問題なのではないかと思います(その意味では、この調査も一定の意味があったのではないかと思います。)。

ちなみに、他の施設の利用状況を見ると「ファーストフード難民」と言ってもおかしくないですが、テレビ局はスポンサーに配慮して絶対に言わないでしょうね。その意味では業界団体の怒りも理解できます。



ところで、今回の調査は厚生労働省の「労働」部門が行っていますが、旅館業を所管する「厚生」部門としてはネットカフェのような仮眠を前提にした深夜営業施設について、衛生面や安全面の検討は必要ないのでしょうか。
一緒の役所になって久しいのですから、共同で調査してもよかったように思います。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする