生物の生命維持には「鉄」は必要不可欠な栄養素である。ヒトの体内には、釘1本分(約5g)の鉄がイオンとして存在し、様々な生体機能の調節に使われている。この鉄は、食物に含まれる鉄イオンを十二指腸の柔毛で吸収することで得られ、毎日そのうちの1~2mgが、排泄・皮膚の剥離・脱毛などにより失われてしまう。失った鉄イオンは日々の食事から補う。
兵庫県立大学大学院の澤井仁美助教と理化学研究所放射光科学研究センターの杉本宏専任研究員を中心とした共同研究グループは、大型放射光施設「SPring-8」を利用して、ヒトの鉄吸収メカニズムに関わる膜タンパク質の立体構造を世界で初めて解明した。さらに、その立体構造に基づく機能解析により、食物に含まれるビタミンCや有機酸が鉄分の吸収効率を向上させる仕組みを原子レベルで明らかにした。
鉄イオンの吸収に関わる膜タンパク質は、「食物中の鉄イオン(Fe3+)を還元する酵素;Dcytb」とDcytbによって「還元された鉄イオン(Fe2+)を細胞内に取り込むトランスポーター;DMT-1」の2種類。食物に含まれる鉄イオンのほとんどがFe3+の状態で存在しているが、DMT-1がFe2+しか輸送できないため、DcytbがFe3+をFe2+に変換する重要な役割を担っている。取り込まれた鉄イオン(Fe2+)は、細胞中では鉄貯蔵タンパク質に蓄えられ、必要に応じて毛細血管へと輸送される。毛細血管中の鉄イオンは、血清タンパク質と結合し血流にのって全身を巡る。
本研究は、ヒトの十二指腸における鉄イオンの吸収メカニズムをさらに詳細に理解するために、鉄イオンの吸収に重要な鉄還元酵素Dcytbの立体構造や機能メカニズムを明らかにした。
Dcytbの鉄還元メカニズムを解明するために、高純度なヒト由来Dcytbを調製し、脂質キュービック相法 により脂質環境中でDcytbの結晶を作る。その結晶に大型放射光施設「SPring-8」の理研マイクロフォーカスビームラインBL32XUの高輝度なX線ビームを照射して測定したデータを解析することにより、世界で初めてヒト由来Dcytbの立体構造を解明した。Dcytbは6本のαヘリックス構造からなる単量体が2つならんだホモ二量体を形成しており、単量体あたり2分子のヘムを含んでいた。
ビタミンCと金属イオン(Fe3+の代わりに加えたZn2+)は、Dcytbの腸管腔側に面した部分に結合していた。この構造から、DcytbはFe3+だけでなくビタミンCを協働的に結合することが明らかになった。また、Dcytbの細胞質側にもビタミンCが結合しており、Fe3+の還元に用いられる電子は、ビタミンCから供給され、タンパク質中を通って腸管腔側のFe3+へと伝達されることがわかった。 さらに、これらの構造情報に基づく機能解析により、ビタミンCだけでなく食物に含まれる有機酸(クエン酸やリンゴ酸など)もFe3+とともにDcytbに結合し、Fe3+の還元反応を促進することを見出した。
本研究グループが解明したビタミンCやクエン酸などが鉄イオンの吸収に必須の反応を促進する仕組みは、鉄分の効率的な摂取方法や鉄代謝異常による疾病への理解につながり、世界人口の約30%(20億人以上)を苦しめる鉄欠乏性貧血の予防や治療の端緒を拓く可能性がある。
◆用語解説
SPring-8
大型放射光施設「SPring-8」は兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出す理化学研究所の施設。SPring-8の名前はSuper Photon ring-8 GeV(80億電子ボルト)に由来。放射光とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、電磁石によって進行方向を曲げた時に発生する強力な電磁波のこと。これらの施設では、放射光を用いてナノテクノロジー・バイオテクノロジー・産業利用まで幅広い研究が行われている。
脂質キュービック相法
膜タンパク質を脂質二重層に再構成させた状態で結晶化させる方法。近年、本手法により結晶化が実現した膜タンパク質の結晶構造決定の例が多く報告されている。
ホモ二量体
二量体は、2つの分子が物理的・化学的な作用によって集合した状態。同一分子の二量体をホモ二量体、異種分子による二量体をヘテロ二量体という。本研究におけるDcytbの立体構造は、ホモ二量体である。
ヘム
ポルフィリンと呼ばれる環状平面分子の中心に鉄原子をもつ化合物。ポルフィリン環の修飾の種類や位置によっていくつかの種類に分類される。ヘムを分子中に取り込んで、はじめてその機能が発揮されるタンパク質をヘムタンパク質と呼び、通常、赤色を呈する。酸素運搬体であるヘモグロビン、電子伝達に関与するシトクロム類、酵素活性をもつペルオキシダーゼなどがヘムタンパク質の代表例。本研究対象のDcytbもヘムタンパク質であり、ヘムを介して細胞質側から腸管腔側へ電子を伝達する。
ビタミンC
L-アスコルビン酸のこと。水溶性ビタミンの一種で、生体内では還元剤として機能する。ヒトは体内でビタミンCを生合成できないため、食餌などにより外部から摂取する必要がある。
朝から雨。台風の影響で東北は雨。明日も明後日も雨かな。
”ハマナス”に花が咲いている。そう言えば、お盆に帰省した時、八戸駅前の植栽地で、”ハナマス”に沢山の赤い実がついていた。今日は、”ハマナス”の花と赤い実。赤い実は、良い香りがして、甘酸っぱく、ビタミンCを豊富に含む、と言う。葉・枝に細かいトゲが沢山あり触ると痛い。
名(ハマナス)の由来には幾つかの説があり、最も有力なのは、浜に自生し実が梨に似た味がする「ハマナシ:浜梨」が転訛して「ハマナス」となった説。ナス(茄子)からの由来ではない。
因みに、アイヌの人々は玄関前に魔よけのために立てた。
ハマナス(浜梨、浜茄子)
学名:Rosa rugosa(ロサ・ルゴサ)
バラ科バラ属
落葉低木(丈は0.5m~2m)
分布は東アジア温帯~亜冷帯
日本では北海道に多く”北海道の花”となっている
知床の岬に~はまなすの咲く頃(知床旅情)
皇太子徳仁親王妃雅子殿下のお印
開花時期は5月~6月
花色は赤、白色もある
結実は夏(8月~10月)、固くて赤い小さな丸い実(ミニトマト様)
兵庫県立大学大学院の澤井仁美助教と理化学研究所放射光科学研究センターの杉本宏専任研究員を中心とした共同研究グループは、大型放射光施設「SPring-8」を利用して、ヒトの鉄吸収メカニズムに関わる膜タンパク質の立体構造を世界で初めて解明した。さらに、その立体構造に基づく機能解析により、食物に含まれるビタミンCや有機酸が鉄分の吸収効率を向上させる仕組みを原子レベルで明らかにした。
鉄イオンの吸収に関わる膜タンパク質は、「食物中の鉄イオン(Fe3+)を還元する酵素;Dcytb」とDcytbによって「還元された鉄イオン(Fe2+)を細胞内に取り込むトランスポーター;DMT-1」の2種類。食物に含まれる鉄イオンのほとんどがFe3+の状態で存在しているが、DMT-1がFe2+しか輸送できないため、DcytbがFe3+をFe2+に変換する重要な役割を担っている。取り込まれた鉄イオン(Fe2+)は、細胞中では鉄貯蔵タンパク質に蓄えられ、必要に応じて毛細血管へと輸送される。毛細血管中の鉄イオンは、血清タンパク質と結合し血流にのって全身を巡る。
本研究は、ヒトの十二指腸における鉄イオンの吸収メカニズムをさらに詳細に理解するために、鉄イオンの吸収に重要な鉄還元酵素Dcytbの立体構造や機能メカニズムを明らかにした。
Dcytbの鉄還元メカニズムを解明するために、高純度なヒト由来Dcytbを調製し、脂質キュービック相法 により脂質環境中でDcytbの結晶を作る。その結晶に大型放射光施設「SPring-8」の理研マイクロフォーカスビームラインBL32XUの高輝度なX線ビームを照射して測定したデータを解析することにより、世界で初めてヒト由来Dcytbの立体構造を解明した。Dcytbは6本のαヘリックス構造からなる単量体が2つならんだホモ二量体を形成しており、単量体あたり2分子のヘムを含んでいた。
ビタミンCと金属イオン(Fe3+の代わりに加えたZn2+)は、Dcytbの腸管腔側に面した部分に結合していた。この構造から、DcytbはFe3+だけでなくビタミンCを協働的に結合することが明らかになった。また、Dcytbの細胞質側にもビタミンCが結合しており、Fe3+の還元に用いられる電子は、ビタミンCから供給され、タンパク質中を通って腸管腔側のFe3+へと伝達されることがわかった。 さらに、これらの構造情報に基づく機能解析により、ビタミンCだけでなく食物に含まれる有機酸(クエン酸やリンゴ酸など)もFe3+とともにDcytbに結合し、Fe3+の還元反応を促進することを見出した。
本研究グループが解明したビタミンCやクエン酸などが鉄イオンの吸収に必須の反応を促進する仕組みは、鉄分の効率的な摂取方法や鉄代謝異常による疾病への理解につながり、世界人口の約30%(20億人以上)を苦しめる鉄欠乏性貧血の予防や治療の端緒を拓く可能性がある。
◆用語解説
SPring-8
大型放射光施設「SPring-8」は兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出す理化学研究所の施設。SPring-8の名前はSuper Photon ring-8 GeV(80億電子ボルト)に由来。放射光とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、電磁石によって進行方向を曲げた時に発生する強力な電磁波のこと。これらの施設では、放射光を用いてナノテクノロジー・バイオテクノロジー・産業利用まで幅広い研究が行われている。
脂質キュービック相法
膜タンパク質を脂質二重層に再構成させた状態で結晶化させる方法。近年、本手法により結晶化が実現した膜タンパク質の結晶構造決定の例が多く報告されている。
ホモ二量体
二量体は、2つの分子が物理的・化学的な作用によって集合した状態。同一分子の二量体をホモ二量体、異種分子による二量体をヘテロ二量体という。本研究におけるDcytbの立体構造は、ホモ二量体である。
ヘム
ポルフィリンと呼ばれる環状平面分子の中心に鉄原子をもつ化合物。ポルフィリン環の修飾の種類や位置によっていくつかの種類に分類される。ヘムを分子中に取り込んで、はじめてその機能が発揮されるタンパク質をヘムタンパク質と呼び、通常、赤色を呈する。酸素運搬体であるヘモグロビン、電子伝達に関与するシトクロム類、酵素活性をもつペルオキシダーゼなどがヘムタンパク質の代表例。本研究対象のDcytbもヘムタンパク質であり、ヘムを介して細胞質側から腸管腔側へ電子を伝達する。
ビタミンC
L-アスコルビン酸のこと。水溶性ビタミンの一種で、生体内では還元剤として機能する。ヒトは体内でビタミンCを生合成できないため、食餌などにより外部から摂取する必要がある。
朝から雨。台風の影響で東北は雨。明日も明後日も雨かな。
”ハマナス”に花が咲いている。そう言えば、お盆に帰省した時、八戸駅前の植栽地で、”ハナマス”に沢山の赤い実がついていた。今日は、”ハマナス”の花と赤い実。赤い実は、良い香りがして、甘酸っぱく、ビタミンCを豊富に含む、と言う。葉・枝に細かいトゲが沢山あり触ると痛い。
名(ハマナス)の由来には幾つかの説があり、最も有力なのは、浜に自生し実が梨に似た味がする「ハマナシ:浜梨」が転訛して「ハマナス」となった説。ナス(茄子)からの由来ではない。
因みに、アイヌの人々は玄関前に魔よけのために立てた。
ハマナス(浜梨、浜茄子)
学名:Rosa rugosa(ロサ・ルゴサ)
バラ科バラ属
落葉低木(丈は0.5m~2m)
分布は東アジア温帯~亜冷帯
日本では北海道に多く”北海道の花”となっている
知床の岬に~はまなすの咲く頃(知床旅情)
皇太子徳仁親王妃雅子殿下のお印
開花時期は5月~6月
花色は赤、白色もある
結実は夏(8月~10月)、固くて赤い小さな丸い実(ミニトマト様)