ロンドン・サウスケンジントンのフラットに住む長年の友人とSkypeでビデオ交信してみた。この友人は先月15日以降、一切外出していないという。日用品、食料品はすべて宅配業者に依頼し、しかも配達はコンシェルジェに受け取らせるなど、徹底した感染防止に努めている。運動はフラットの屋上での散歩程度(彼の家はペントハウスで屋上にも出られる)。いつもはひっきりなしに西の上空を飛行するヒースロー発着の飛行機はなくなりすっかり静かになった。また、車の往来も激減して騒音も排気ガスも少なくなって、空気がきれいになった。そのせいか、ベランダに来る鳥の数が随分と増えたという。外出は固く制限されていて、家族、友人といえども会うことは禁止されているので、実際、彼は郊外に住む娘さんとも会えない。家から出れば警官に行き先や目的を聴取され、警官が納得しないと家に戻されるし、もし従わなければ逮捕されて罰金刑に処せられることになる。罰金は一回目は60ポンド、2回目は120ポンド、それ以降繰り返せば倍額となる(3回目は240ポンド、4回目は480ポンドか)。人が集まることには厳しい制限がある。当初は(コロナウイルスによるものか)死因にかかわらず葬式への参列は出来なかったが、最近になって5人までの会葬者の葬儀であれば認められるようになった。外出の際には常に2メートル以上の間隔を保つことが要請されている。公園へは一日1回それもグループで行くことを禁じられている。(イギリスに比べ、相変わらず家族づれを中心に公園への人出が絶えない日本とは緊張感が大きく異なる。この日本の風景が感染者のオーバーシュートにつながらないことを・・・)。
市民は午後8時にバルコニーや庭先に出て医療関係者への激励のために、拍手を送るというのが慣例になっている。フランスでは、同じようなことが行われているが拍手の後、楽器演奏などのパフォーマンスが披露されたりクイズあてなどの娯楽で、無聊を慰めるのが流行っていると。また、仕事がなくなった航空会社のCAがマスクつくりや医療関係の補助をしている。感染者、死者の増加数が少し安定してきた兆しがあり、ピークアウトしたのでは、との見方もあるが、希望的(楽観的)観測かも知れない。政治家はそれぞれに感染拡大の責任をめぐって相手を非難しているのは世界どこでも同じ。市内の雰囲気は一見戒厳令下のようでもあるが、市民はとにかく退屈、うんざりした、というもの。それを紛らわすためにジョークであふれかえっているが、やはり、トランプを揶揄したものが一番多い。
感染者数、死者数について、実際にはさらに多いのではないかといううわさがあるのも各国共通。また、今回の休業補償の乱発によって、各国の財政状態は極度に悪化し、破綻の可能性もあるし、これによる借入の返済には何世代もかかるだろう。コロナウイルスのみならず国家財政崩壊による国民生活破綻のリスクも孕んだものになるとの危惧も広がっている。
彼にとって、バルコニーに遊びに来る鳥を眺めるというささやかなバードウオッチングが一つの息抜きになっているという。鳥たちといえば澄んだ大空を気持ちよく飛べるようになり、この都市封鎖で一番得をしているのかもしれない。
まだ先が見えない中、国会議事堂の正面にある、パーラメントスクエアガーデンに鎮座するチャーチルの像がなんとなく頼もしく見えてくる(ような気がする)。