巻き寿司の元とローマ字で書いてある
「ニューヨークには、もう行かれましたか?」
レコード店の、ジャズ担当の男が訊いてきた。
「はぇ? えっと、まだ行ってませんが...」
「そうですか。やはりジャズといえばニューヨークですよね」
「はあ」
「今度、行かれる予定は?」
「えっ? いやその...」
時は1986年。国鉄国分寺駅近くにあるレコード店、新星堂でのことだった。大学でジャズに目覚めた僕は、自分のアパートに近いこのレコード店をよく利用していた。
ジャズ担当の男は推定年齢40歳というところ。学生である僕に対して、いつもていねいな口をきいた。
しかし、変わった男でもあった。僕がウィントン・マルサリスの新しいアルバムをチェックしていたら、いきなり話しかけてきたのだ。
その第一声が「ニューヨークにはもう行かれましたか?」
なのである。
やっ、中身はかんぴょうではないか
どこからどう見てもビンボー学生の僕だ。ジャズを聴きにニューヨークになぞ、行けるわけがない。
しかし彼はあくまでも澄んだ瞳で僕を見つめる。
何となく、話を合わせたほうがいいような気がする
「まっ、近いうちに行ってみたいですな」
妙な緊張をしたのか、言葉遣いがおかしくなった。
しかしその言葉は、彼を満足させたようだった。
「この新譜はおススメですよ。買いです」
「はあそうですか」
かくのごとし
このまま食べても美味
当時の国分寺は実に魅力的な町であった。
レコードでジャズとファンクを聴かせる、ピザの美味い店もあった。
プロのジャズギタリスト、宮ノ上貴昭が経営するジャズバー『きりきりぶらうん』もあった。
そして新星堂の向かいには喫茶店の珈琲館があり、そこのマスターがまた、実に個性的な男でもあった。
そのエピソードはいずれまた書かせていただくことにして...。
ともあれ、この缶詰さんである。
以前ご紹介したいなり寿司の元と同じシリーズである。
ブログ仲間のNoritanが、米国出張の際に買ってきてくれたのだ。
今回のこの巻き寿司の元、実は食する前から、覚悟をしていた。
米国の缶詰は、とてつもなく甘いものが多いのである。
ましてや甘辛く煮つけたであろう、巻き寿司の元なのである。
しかし意外や意外。そのまま食べても実に美味い。かなり塩辛いのだが、もともと寿司ネタなのだから納得である。それをそのまま食べると、酒のあてに最高である。
何となれば今回は巻き寿司など作らず、このまま毎日ちびちびと食べていこうと思うのであった。
内容量:240g
原材料名:かんぴょう、しいたけ、醤油、グルタミン酸ナトリウム
原産国:ちゃあんと日本製であった