缶詰blog

世界中の缶詰を食べまくるぞ!

リビーコンビーフ

2004-06-29 00:13:52 | インポート
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 今回は大変にメジャーな缶詰さんにご登場いただいた。コンビーフーcorned beefである。cornedとは塩漬けという意味。片岡義男に影響を受けた世代のお方はキチンとコーンド・ビーフと発音するのも宜しいと思うが、英語でも単にcorn beefという言い方が存在する。

 今回はブラジル産、Libby社のものであった。毎度お馴染み近所の大丸ピーコックで340g缶が何と今月のお買い得価格で315円。そこを更に10%offで283円。国産のK&Kニューコンビーフも真っ青の安値で購入したものだ。ちなみに『ニューコンビーフ』は牛肉と馬肉をミックスした独特の風味で、この製法のものはニューコンビーフと明記することが義務づけられているらしい。 
 とにかく安くあげようと画策している私にとって、国産超高級品のノザキのコンビーフなんか一生買うことはないのかもしれない。一抹の寂しさを憶えるが、ごく平凡に生きてきたことがあるいは幸せと言えるのかも知れない。思えば実にいい人生であった。合掌。 

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 デジカメさんがまだお戻りにならないので、携帯電話のカメラを使用した。それにしても、コンビーフに付属する愛すべきくるくる切りの道具、巻取鍵はいつ使っても楽しいものだ。子供の頃は使用した後にもらい受け、大事に宝箱に仕舞っておいたものである。デザイン上も鍵の形を意識して作られたに違いないこの巻取鍵を使った開け心地は、全缶詰さんの中でもトップに君臨するほどの悦楽を伴うものであろう。そしてなぜか“豊かな国、米国”、“いつでも肉が食べられる国、米国”というトンチンカンな発想まで甦ってくる。コンビーフは元々米国のご出身である。

 この料理方法は、知人に教わったペンネ料理をアレンジしたものだ。コンビーフを炒めたのちにリコッタチーズ(Ricotta)を加えてさらに加熱し、最後にイタリアンパセリを散らしたところにアルデンテさんのペンネを絡ませている。胡椒、オレガノ、バジルも始めに加えてある。コンビーフの塩気があるのでハーブとスパイスだけで充分であった。またリコッタチーズは個人的に好きなので、最後に上にも盛りつけてみた。
 しかし一口頬張ってみると、やや調理を失敗したのが分かった。コンビーフをもっと炒めるべきであったのだ。一寸カリカリになりそうだぞ、というところまで炒めると、脂っこい匂いがとれてうっとりと香ばしいものになるのである。また今回は手元になかったのだが、ペパーミントを少々加えたほうが良かったと思う。リコッタに合うはずだ。

 コンビーフは肉をボイルしたのちに細かくほぐして、そこに少々のブロックも加えて缶に詰められる。加熱しても赤色を保てるように、発色剤として亜硝酸Naが添加されているのだが、この残存量は食品衛生法で定められた70ppm以下という数値のさらに1/14から1/5という量であるらしい。これが胃の中でアミン類と反応してニトロソアミンを生成し、これが発ガン性があるという説もあるのだが、実際の残存量から勘案すると今のところ大丈夫らしい(参考資料(社)日本缶詰協会)。

 そしてまたまた大量に作ってしまったが、今回からは悩むことなどない。昨日我が家には冷蔵庫さんがやってきたのである。これで臆することなくどんどん缶詰さんを開けていけるのである。現在冷蔵庫さんの中はスッカラカンだが、近い将来は食べ残した缶詰の中身で満たされることだろう。
 思えば実にいい人生を歩んでいるようである。ブログ仲間のみなさんに多謝多謝なのである。合掌。
 
 


白桃黄桃(桜町荘セレナーデ)

2004-06-28 03:03:27 | 連載もの 桜町荘セレナーデ

~太字部分をクリックすると画像が表示されます~

「おい、俺の桃缶を見なかったか?」
 川崎が鼻をほじりながら、誰にともなく尋ねた。穏やかな日曜日の昼下がりであった。
「モモカンって何ですか」意思表示の早い隼人が訊き返す。
「バカ野郎。あの、あれだ、ん~」引き抜いた鼻毛をしげしげと眺めながら、川崎はたおやかな眉を寄せた。
「桃の缶詰だよ」
「ああ、あれか。見てないですねえ」
「おい優、お前は?」川崎はDX-7を弾いていた優に訊いた。
 優の弾いていた曲は『戦場のメリークリスマス』、通称センメリであった。
 数年後にはプロとしてデビューし、いつかは武道館でライブをやるのだという大きな目標を掲げている若人4人なのだが、本来はジャズ&フュージョンをやるはずなのである。
 しかし練習している曲はセンメリだったり、エリック・サティの『ジムノペディ』だったり、はたまたオフコースの『さよなら』だったりして、いかにも不成功に終わりそうなへっぽこ4人組であった。
 さて、桃缶の続きである。
「はあ、なんスか?」優は大儀そうに言った。
「なんスかじゃねえよおめえはよ桃缶知らねえかっていってるんだよ」川崎は苛立ちを露わにした。
 そうしながらも、彼自身は座椅子をどかしたり台所に行ったりと本気で探していた。
 彼は桃のシラップ漬け缶詰が大好きな青年であった。
「うっひゃー、このベースライン! どうやっだら思いつくんだべ」お国訛りが一番激しい犬丸が、奥の六畳からすっとんきょうな声をあげた。一人でラジカセを聴いていたらしい。
「何を聴いてたんですか?」意思表示の早い隼人が尋ねる。
ビリー・ジョエルのストレンジャーを聴いでだのや」
「いいっすねえ! ステレオでみんなで聴きましょうよ」
「んだんだ、みんなして聴くべ。そんでベースラインを勉強するぺ」
「おおい、桃缶知らねえかっ!」とうとう川崎は大声を出した。
「ん? 何だよ」犬丸が尋ねる。
「いつもの桃缶がねえんだよ。お前、食わなかったか? 正直にいえば許してやる」
「俺は食ってねえな」
「おいお前ら、本当は食ったんだろ」
 川崎は後輩二人を睨みつけた。しかしいくら怖い顔を作ろうとしても、話題は桃缶である。迫力を出すのは難儀である。
「俺は甘いものは食わないんですよ」隼人がいった。
「バカ野郎! あれはフルーツだ。甘いものとは違うんだ!」
「だってあれシラップに入ってるじゃないですかあ」
「お前な、食ったら食ったっていえよなっ!」
「くぁーっ、このピアノの歯切れの良さ、すんげえ!」
「やっぱビリー・ジョエルは天才っすねえ」
「先輩、ババロアを買ってきましょうか」優が意味の分からぬ気遣いを始めた。
「おーいっ! 話しを聞けっ! 桃缶だって言ってー」
「俺、ババロアとポカリスウェットを買ってきますね」
 優はヤマハDT200に乗って、行ってしまった。
「あんの野郎っ」
「くぅーっ、このベースライン! どうしだら思いつくんだべ? なあ隼人」
「いいっすねえ」
「お前らああっ、頼むから俺の話しを聞いてくれえっ!」
 さて、犯人はだあれ?


 昭和59年、武蔵小金井にて つづく
 ひとつ前の話へ


~いとしの白桃黄桃缶詰~ 
 白桃缶詰は、岩手、山形、福島などの各県で作られています。製品は、糖度18%以上のヘビーシラップが多く、二つ割り、四つ割りがあります。原料は大久保や白鳳が代表的な品種です。
 黄桃缶詰は、日本の白桃とアメリカ系の黄桃を交配して育成した缶桃という缶詰専用の黄桃を原料に作られます。産地は山形、福島などです。
 参考資料 (社)日本缶詰協会発行 かんづめハンドブックより
 
追:この記事は『和散歩日記』“朝食は果物~♪”、『不埒な天国~Paradiso Irragionevole~』“Bellini”、『**国境を越えて**』“缶桃”、『blackcurrant』“愛缶”~にトラックバック♪
 


シーチキン(連載小説 桜町荘セレナーデ)

2004-06-20 14:51:58 | 連載もの 桜町荘セレナーデ

~太字部分をクリックすると画像が表示されます~

「まだ飯を作ってねえのか。今日の飯当番は誰なんだよ?」
 川崎が腹立ちもあらわに言う。
「えーと、優のはずですけど。何なら俺が作りますか」
 隼人が川崎先輩のお怒りを察知して、穏便に処置してしまおうと提案する。
「バカ、それじゃあダメなんだよ。あいづにやらせろ」
「はあ」
「イカした娘はだあれ~、っと♪」南佳孝を口ずさみながら優が帰ってきた。
「あれ、先輩。もう帰ってたんスか。早いっスね」
「バカ野郎、俺は腹が減ってるっつーの! さっさと夕飯作れこの野郎」
「あらお怒りだわこの人。いやあね、暑いからって苛ついちゃって」優が女言葉でやり返す。
「お前、夕飯の当番なんだぞ」
「もうすぐ犬丸先輩も帰ってくるぜ」隼人が気を遣う。
「あ~あ面倒くせえな。先輩、弁当買ってきませんか?」ヘルメットを放り出した優が言った。キャビンに火をつけ、ベンジャミンを抱き寄せる。
 飼い猫ベンジャミンは迷惑そうな顔をするも、一声、鳴いてみせた。
「弁当ねえ。それでもいいけどさ、カネが続かないよ君たち。共同生活で自炊してる意味がないんでないの?」
 川崎の腹立ちはおさまったようだ。弁当の話題に興味が移っている。
「いつものドカベン喰いましょうよ、ギョーザとハンバーグ入りの」優が提案する。
「う~ん、しかしなあ」
「そんで、デザートにババロアはどうですか。プリンではなくてババロアなのがポイントです」
「う~んう~ん」
「あっそうだ! 先輩はギターを買うんでしょ。贅沢しちゃダメですよ」隼人が甲高い声で言った。
「んだ! ババロア食ってる場合じゃねえべ!」川崎がお国訛りで叫んだ。「馬鹿野郎、優は早く飯作れ!」
「そんんじゃ、シーチキンご飯でも炊ぎますか」優が重い腰をあげた。
「ああ、それでいいや。ショーユ多めに入れてな」
 川崎の頭は、今度はギターのことでいっぱいになっている。音楽雑誌をめくって広告を眺め始めた。
 川崎は、一度に多くのことを考えるのが不得手だった。新たな事柄が頭の中を占めると、その前のことはすぐに忘れられるという妙技を持っていた。
「くっそー、俺たちも早くデビューして、武道館でライブやろうぜ。な、お前ら!」
「そ、そうですね...」
(いつかはプロのミュージシャンに...)。
 ここで生活している4人は、とても大きな夢を持っていたのである。
 まっ、しかし。そんな夢物語は実現しないのであるが。

 昭和59年、武蔵小金井にて つづく


 ビンボーシーチキンご飯レシピ 4人分
1,米を4合研ぐ(一人1合食べるのだ)
2,シーチキン缶を1缶分、サラダオイルごと釜に入れる
3,醤油をどばどば入れる
4,炊きあがったら争うように食べること

 追:デジカメが修理に行ってしまったので暫く画像なしです。どうかこの不道徳不謹慎な企画をお許し下さい。


パルミット

2004-06-18 16:20:24 | インポート
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 今回はパルミットだ。これは椰子の芯の柔らかい部分。コロンビア産である。椰子と言えばやはり子供の頃に夢見た南の島を連想してしまう。どこの国とは限定しがたいがやはり「ばななんばななん♪」といった歌が唇から自然と流れ出るのを止めることが出来ない。
 ところで二、三日前にデジカメさん(ニコンCOOLPIX885)が一部壊れてしまった。ホワイトバランスとかを調整出来なくなったのだ。使えないわけではないが、所謂バカチョンさんになってしまった。このブログは食べ物を撮るわけだから、なかなか厳しい状況だ。それ以前に私はカメラの腕がへっぽこなので、今回以降はあまり美味そうに撮れないかも知れない。ステレオからもなぜか『亡き王女のためのパヴァーヌ』が悲しく切なく流れ、明るく楽しい「ばななん♪」は消え去った。合掌。

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 かくのごとし。これは今時珍しい紙ラベル巻き缶詰だ。前号でこの紙ラベルが海水で破れてしまったイギリス青年の航海記をご紹介させていただいたが、ここでもう一つ、あるマンガを想い出したのである。『少年アシベ』という愛らしいゴマフアザラシの子供と少年のお話だ。こちらではある凶暴な小鳥が缶詰の紙ラベルをみんな剥がしてしまういたずらをしたエピソードがあった。あの大変な人気を誇ったマンガも奥付を見ると第一刷が89年とある。前世紀のものである。こうして時代は巡る。

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 輪切りにする。大変に柔らかく、縦方向の繊維にそってどんどんほぐれていく。ちょいとつまむと食感は貝柱に似ている。歯触りがいいのである。アーティチョークの水煮と同じく食塩とクエン酸を使用しているのでやや酸味があってしょっぱい。少しの間水に浸しておくことにする。
 それにしても今日は暑い。画像で少しだけ底部の見えている『銀河高原ビール』が早く飲みたくて調理と撮影を急ぎ、部屋の中をむやみに水浸しにしている。誰も見ている者がないのが嬉しい。

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 湯剥きトマト一個乱切り(というのか? テキトーカット)、半額だったマリボーチーズそぎ切りとともに輪切り終了したパルミットを器に入れて、純玄米酢とエキストラバージンオリーブオイルを垂らす。黒胡椒を挽いて、塩を軽く一振り。これはトマトとモッツァレラチーズのサラダのときによくやるドレッシングだ。写真を撮ってから大きく一口。なかなか美味い。パルミットの酸味が酢で打ち消されて良かったようである。定番のドレッシングがあれば怖いものはないのである。嬉しくてばくばくと犬食いする。やや腹が膨れてきたところで突然ビールがあったことを想い出した。すっかりぬるくなったビールをグラスに注ぐと泡だらけである。誰も見ている者がないのが嬉しい。

 ちなみにこういう古いタイプの缶詰には、上下に数字がやや乱暴に印刷されている。今回は上面に“281102”、底面に“281105”だった。上面が製造年月日で、02年11月28日(反対に読んでいく)、底面が賞味期限で同じく05年11月28日ということになる。

 ビールがぬるくて苦い。せっかく高級ビールだったのになあ。少しやけになりイッキ飲みしてみると実はそんなにビールが得意ではなかったことに気付いた。胸元にだらだらとこぼしてうなだれる。誰も見ていないのが本当に嬉しい。
 
追記:初トラックバックが嬉しくて反射衛星トラックバックを撃つのである。パルミット繋がりの出来た『チャイディーな世界』“パルミット”~なのである。
 


生誕200年目

2004-06-15 10:42:59 | 缶詰考察
 さて、今日は初めての考察雑記を記述してみようと思う。まずは参考にしたサイト『社団法人日本缶詰協会』をご紹介させていただきたい。こちらはお堅いホームページかと思いきや、トップページでは愛らしいキャラクターがダンスをしてみせ、ダウンロードにて「かんづめ・びんづめ・レトルト食品の歌」その名も『かんづめサンバ』が聴けるという大変に楽しいところである。缶詰好きにとってはまことに心丈夫となるものだ。
 今年2004年は缶詰瓶詰というものが誕生してからちょうど200年目にあたる。そんな記念すべき年にこの缶詰blogを発足開始したのはやはり何かの符号を感じずにはおれない。

 缶詰の基本的な仕組みは、食品を缶に入れて密封、加熱して殺菌するというものだ。1804年にニコラ・アペールというフランス人が開発したらしい。我が国での最初の缶詰は「いわしの油漬け」とある。1871年(明治4年)のことだ。そうして現在は世界中で作られている缶詰たちの種類は実に1200種類と言われている。これは大変な数である。長い歴史を有しかつ現在も栄養面、衛生面で優れた材料とされる缶詰さんなのである。

 今日のお勉強はここまでなのである。そうして最後に一冊の本を紹介する我が儘を許していただきたい。R・ノックス=ジョンストン氏の名著『スハイリ号の孤独な冒険』~草思社~である。
 単身で3万マイル10ヶ月半の船旅、持っていった缶詰は1500缶。後半では度重なる船内への浸水によって缶詰の紙ラベルが全てはがれてしまったそうである。この非常事態(食べることは旅において最大の楽しみだ)においても彼は「まるでロシアンルーレットよろしく・・・」と英国人らしいユーモアで表現している。素晴らしい冒険航海記である。