左:イスタンブールで買ったいわし缶(直径15cm)
右のオイルサーディンと比較すると大きさがわかる
日本語は奥深い。
トルコのイスタンブールは、“イスタンブール”と表記することで、異国情緒がずんずん掻きたてられる。
「アジアとヨーロッパの接する地」という点がそもそも魅力的だし、日本では何といっても、庄野真代の
[飛んでイスタンブール]
この歌謡曲の大ヒットが、いまだに忘れられないのであります。
しかし、実際にトルコに行ってみると、発音は“イスタンブル”だった。“ブール”というように母音を伸ばさないのだ。
気になって広辞苑を引いてみると(広辞苑には国名も載っている)、“イスタンブール”と伸ばし表記だった。
現地の発音に合わせるか。
あるいは、大衆に馴染みのある言葉で通すか。
常に悩むところであります。
新市街のガラタ塔より旧市街を望む
この景観はやはり“イスタンブール”といいたい
その、イスタンブールで買ってきた缶詰の話しだ。
スパイスから絨毯、宝石まで売っているエジプシャンバザールをひやかしていたら、どういうわけか肉屋の一角で缶詰が売られていた。
肉類の缶詰もあるが、魚介の缶詰も充実している。同地を取材した中で、もっとも品揃えが豊かだったほどだ。
そこで見つけたのが、最初の画像の黄色いいわし缶。
表記はすべてトルコ語で不明。しかしこの大きさといい、表面のいわしのイラストもあって、僕はオイルサーディンだと思った。
その前夜に食べたいわしのフリットが記憶に残っていたせいもある。
現地の大衆料理ハムシィ・タワ(片口イワシのフリット)
郊外で食べればサラダ・パン付きで300円代と安価
この愛らしい盛りつけが印象に残っていたものだから、前述のいわし缶を見たときも
(これはオイルサーディンだ。そしてハムシィ・タワのようにひまわり状に詰まっているに違いない…)
こう缶違いしたのであります。
一応、店員に尋ねてみた。
「これはオイルサーディンか?」
「うんうん、そうそう」
「ホントか?」
「うんうん、そうそう」
こちらは英語、むこうはトルコ語である。
まったく会話は通じていない。
だから上記の内容は、店員の表情から察して判断したのだ。
ここでもまた、缶違いをしてしまった。
店員の笑顔があまりに素晴らしかったので、こちらの意思が通じていると思ってしまった。
ところが、帰国して開缶してみると…。
何と、アンチョビ缶だった
それも上下2段詰めで40尾も入ってる
一尾を取り出してみると、個体自体が大きい。全長10cmほどもある。
おまけに背骨と尾がついたまま。うろこもチラチラと混じっている。
実に野趣溢れるアンチョビであります。
アンチョビ缶(瓶)は、一度開けてしまうと、毎日劣化していく。油が酸化し、身が黒ずんで、フレッシュな風味がなくなってしまうのだ。
劣化を少しでも遅らせるには、オリーブオイルなどに詰め、冷蔵保存するしかない。
かくのごとし。
清潔な瓶詰にして、取りあえず冷蔵庫に入れることにした。
これが昨年の12月のことである。
あれ以来、サラダにアンチョビ、ピザトーストにアンチョビ、温野菜にはアンチョビソースと、とにかくアンチョビを使っている。
まさに精励恪勤であります。
それでもいっこうに減らぬ。いや、それどころか事態はもっと深刻だ。
実はこのアンチョビ缶、デザインが可愛いからと、2缶買ってきてしまったのだ。
おかげで塩辛い生活が、当分は続きそうである。