6/12/11海保`演習用の教材 未完
講義における私語防止のための方策の提言
ムムム講義内容の理解不能の観点からーーー
東京成徳大学福祉心理学科 海保博之
第1 問題の所在
1-1)大学大衆化と私語
大学進学率が50%を越えた。文部科学省発行の学校基本調査速報(2006)によると、大学、短大の数も、21年間増え続けて744校を越えた。少子化もあり、希望者全員入学が2007年度にはほぼ実現する。
入学者の数の増加もさることながら、学生の質も、その内実がつかめないほど、多用になってきている。
こうした背景の中で、講義中の私語の頻発をとらえる必要があることを、まず指摘しておきたい。
1-2)講義の理解力と私語
大学の講義内容は、担当者が自由に決めることができる。しかも、建前として、みずからの専門とする領域の講義については、その最先端知識を盛り込む内容にすることが暗黙の内に要求されてきた。
しかしながら、基本知識が十分ではない学生にとって、講義内容が先端的であればあるほど理解ができないジレンマが発生してしまう。そのジレンマの学生側の安易な解決として私語に逃げ込むという面がある。
第2 本レポートのねらい
本レポートでは、講義における私語防止のための具体的な方策をいくつか提言してみる。提言の視点については、第3で詳述する。
第3 提言の視点
講義に限らないが、理解できないものに対する対処はさまざまである。
一方の極には、わかろうと懸命に自助努力するような対処があるのに対して、もう一方の極には、そこから逃避してしまうような対処がある。
ここで、吉田(19::)が挙げている一つのエピソードを紹介しておく。
大学1年の教養課程の数学教師。受講生の誰一人理解できない数学の講義を実に楽しそうに講義をする。1年が終わってみると、あんなに楽しいそうな数学ってなんだろう、という学生が続出して数学専攻に進むのだそうだ。
さて、その両極端の間に、図に示すようなさまざまな対処がありうる。言うまでもなく、私語もその一つである。
・自助努力をする
・質問する
・隣の友人に聞く(相談私語)
・わかるレベルの目標設定を下げる
試験に通ればよい
わかるところだけわかればよいなど
・私的私語(講義に無関係な私語)
・逃避(寝る、欠席するなど)
図 わからない講義に対する対処のさまざま
なお、この図で、相談私語と私的私語とが挙げてある。
相談私語とは、ちょっとしたわからない点を、教師に質問するのではなく、隣の友人に聞くような場合である。私的私語と一見すると区別がつかない。しかし、このタイプの私語は、自助努力に近い積極的な面がある。したがって、これについては、今回は、触れない。
本レポートでは、私的私語の防止を、講義内容が理解できないために発生する逃避的な行為と見なし、それをいかに防ぐかについて、教師の立場から3つの提言をしてみたい。
第4 3つの提言
4-1)理解することのメリットを強調する
4-2)理解のための道具立てをふんだんに提供する
4-3)絶えず、理解状態をモニタリングする
第5 まとめと今後の問題
5-1)講義内容の理解と私語
本レポートでは、講義内容の理解不能によって発生する私語をいかに防止するかについて提言してみた。
5-2)今後の問題
本レポートでは、教師の側への提言に限定したが、さらには、学生側の方策の提言も残されている。
さらに今後の課題として3つ指摘しておく。
一つは、私語の発生要因は多岐にわたっている(たとえば、山田、2999)。まずは、そうした要因の整理をおこなうことである。
2つは、それに応じた私語防止の方策を考えることである。
3つは、さらに、私語の発生メカニズムをきちんと実証的に把握しておくことである。
文献
文部科学省 2006 学校基本調査速報
山田博之 2999 私語の発生状況のタイプ分け 大学教育法、23,12-18。
吉田章宏 19** 授業の心理学 国土社