ヒューマンエラー低減のための心理学からの提案
―ーもう一人の自分のパワーをアップしてエラーを減らすーー
東京成徳大学人文学部 海保博之
はじめに
只今ご紹介をいただきました海保でございます。本日はお招きいただき光栄です。
今日は短い時間ではございますが、心理学の方から見たヒューマンエラー、あるいはそれが事故に繋がらないようにするにはどうしたら良いかと言うようなことにつきましてお話しさせていただきたいと思います。
●本日の講演のねらい
頭の中にはもう一人の自分(ホムンクルス)がいて、それが自分の頭の働きや行動を監視したり、調節したりしているという感覚は、誰しもがそれなりにお持ちのはずです。
今日の話は、このホムンクルスのパワーをアップして、自分のヒューマンエラーを減らそうというものです。
具体的には、2つの方策があります。
一つは、エラーの心理学についての知識を豊富にすることでホムンクルスのパワーをアップするというものです。これが主たる話になります。
もうひとつは、内省・反省をすることです。(reflection)ことによって、ホムンクルスのパワーをアップさせようというものです。話の随所で、自己チェックリストをやってもらうことになります。
●話の枠組
さて、本日の話の枠組です。
我々は、何をするにも、Plan―Do―See、つまり、計画を立てて実行をし、評価をすると言うサイクル(PDSサイクル)に従っています。その多くは暗黙のうちに実行されますが、ごく一部は、はっきりと意識しています。たとえば、「水を飲もう(計画)ー>水を飲む(実行)ー>水を飲んだ(評価)」となります。ただ、注意してほしいのは、意識しているPDSサイクルの下には、たとえば、「水を飲もう」そのためには、「ボトルを手に取ろう」そのためには「手をボトルに近づけよう」―――という具合に、下位目標への分解がおこなわれます。
しかし、慣れれば慣れるほど、こうした下位目標への分解は無意識におこなわれるようになります。いちいち意識してやっていたら、仕事になりませんね。
そのPlan・Do・Seeのサイクルの中でヒューマンエラーを考えてみようと言うのが、本日の話の中心です。
なお、Plan・Do・Seeのもう一つ上に使命(Mission)と言うものがあります。その使命と言う大きな制約の中でPlan・Do・Seeを繰り返しながら、一つひとつの目標を達成する事になっておりますので、「使命―Plan・Do・Seeサイクル」の四つの段階でヒューマンエラーを考えていきたいと言うのが今日の話の大枠です。
もうひとつ、話の大前提です。
エラーを人間は自分の中に作り込むことによって新しいことに挑戦して行く、エラーをしながら新しい領域をどんどん作り出すことによって進化の歴史の中で生き延びて来た、そんなところがあります。
安全のお仕事をされている方々にこんな前提を申し上げるのは、ややそぐわないところがあることは十分承知はしておりますが、しかし人間と安全の問題を考える時、人間はロボットではないのだと、機械ではないのだと言うこと、常に新しいことをやることによって、エラーをするけれども自分の生存の可能性を高めている面があると言うことは認識しておく必要があるのではないかと思います。
すなわち、エラーをさせないと言うことは、人間に機械になれ、ロボットになれと言うことです。あるいは、何もするな何もしなければエラーはしない、ただし、新しいことも出来ないと言うことになるわけで、この辺の前提は是非認識していただきたいと思います。 「角をためて牛を殺す」という諺がありますが、こんな事になっては好ましくありません。
―ーもう一人の自分のパワーをアップしてエラーを減らすーー
東京成徳大学人文学部 海保博之
はじめに
只今ご紹介をいただきました海保でございます。本日はお招きいただき光栄です。
今日は短い時間ではございますが、心理学の方から見たヒューマンエラー、あるいはそれが事故に繋がらないようにするにはどうしたら良いかと言うようなことにつきましてお話しさせていただきたいと思います。
●本日の講演のねらい
頭の中にはもう一人の自分(ホムンクルス)がいて、それが自分の頭の働きや行動を監視したり、調節したりしているという感覚は、誰しもがそれなりにお持ちのはずです。
今日の話は、このホムンクルスのパワーをアップして、自分のヒューマンエラーを減らそうというものです。
具体的には、2つの方策があります。
一つは、エラーの心理学についての知識を豊富にすることでホムンクルスのパワーをアップするというものです。これが主たる話になります。
もうひとつは、内省・反省をすることです。(reflection)ことによって、ホムンクルスのパワーをアップさせようというものです。話の随所で、自己チェックリストをやってもらうことになります。
●話の枠組
さて、本日の話の枠組です。
我々は、何をするにも、Plan―Do―See、つまり、計画を立てて実行をし、評価をすると言うサイクル(PDSサイクル)に従っています。その多くは暗黙のうちに実行されますが、ごく一部は、はっきりと意識しています。たとえば、「水を飲もう(計画)ー>水を飲む(実行)ー>水を飲んだ(評価)」となります。ただ、注意してほしいのは、意識しているPDSサイクルの下には、たとえば、「水を飲もう」そのためには、「ボトルを手に取ろう」そのためには「手をボトルに近づけよう」―――という具合に、下位目標への分解がおこなわれます。
しかし、慣れれば慣れるほど、こうした下位目標への分解は無意識におこなわれるようになります。いちいち意識してやっていたら、仕事になりませんね。
そのPlan・Do・Seeのサイクルの中でヒューマンエラーを考えてみようと言うのが、本日の話の中心です。
なお、Plan・Do・Seeのもう一つ上に使命(Mission)と言うものがあります。その使命と言う大きな制約の中でPlan・Do・Seeを繰り返しながら、一つひとつの目標を達成する事になっておりますので、「使命―Plan・Do・Seeサイクル」の四つの段階でヒューマンエラーを考えていきたいと言うのが今日の話の大枠です。
もうひとつ、話の大前提です。
エラーを人間は自分の中に作り込むことによって新しいことに挑戦して行く、エラーをしながら新しい領域をどんどん作り出すことによって進化の歴史の中で生き延びて来た、そんなところがあります。
安全のお仕事をされている方々にこんな前提を申し上げるのは、ややそぐわないところがあることは十分承知はしておりますが、しかし人間と安全の問題を考える時、人間はロボットではないのだと、機械ではないのだと言うこと、常に新しいことをやることによって、エラーをするけれども自分の生存の可能性を高めている面があると言うことは認識しておく必要があるのではないかと思います。
すなわち、エラーをさせないと言うことは、人間に機械になれ、ロボットになれと言うことです。あるいは、何もするな何もしなければエラーはしない、ただし、新しいことも出来ないと言うことになるわけで、この辺の前提は是非認識していただきたいと思います。 「角をためて牛を殺す」という諺がありますが、こんな事になっては好ましくありません。