02/10・9海保
ヒヤリハットの心理
事例「うっかり確認しないために起こったヒヤリハット」
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2事例「●
出発時間直前に乗客対応をした。出発信号の確認をしないまま、ドアを閉めブザーで運転士に出発合図をした。運転士も出発信号の確認をしないまま発車操作をしたが、すぐに停止信号に気がつき急停止した。
●事例分析
このヒヤリハット事例には、2つの問題があります。
1つは、「注意の囚われによる手順の省略」といううっかりミスです。
2つは、「2人確認による油断、つまり、相手が確認しているから自分は確認しなくとも大丈夫(社会的手抜き)」という、これもまた典型的な確認ミスです。
1)「注意の囚われによる手順の省略」ミスについて考えてみます。
注意は、そのとき一番大事なこと、目立つことに精一杯に集中します。したがって、他のことへは注意が払われなくなります。この事例では、乗客への対応にほとんどの注意を払っています。それが終って元の発車手順の続きに戻るのですが、その手順は習慣化しているため、注意がその手順の実行から一瞬乗客対応のほうに向けられた間も、「発車前の信号確認」という手順を実行したかのように思ってしまいます。それが、手順省略になってしまったわけです。
これに対処するには、「ご破算で願いましては」です。手順の最初に戻るのです。途中での妨害があったら、「最初からやり直す」のです。
この事例は、別の見方をするなら、「習慣化した手順ほど確認行為が難しい」ということでもあります。ベテランやベテランになる直前の人がおかしやすいエラーの一つです。初心者は、一連の手順が習慣化していませんので、一つやっては確認、また一つやっては確認---をきちんとやらざるをえませんので、こうしたエラーはあまりしません。
これへの対処は、習慣化した手順の流れを断ち切ることです。
○最も大事な手順のところ、たとえば、発車信号を確認したら、確認ボタンを押す/信号確認の貼紙を裏がえすなどの、もう一つ面倒な「目に見える行為」をするようにすることが有効かもしれません。
○指差唱呼ももちろん非常に有効な手立てですが、これ自体が習慣化していますので、それをやろうとした瞬間に注意がよそに囚われてしまうと、やったように錯覚してしまうことがありますので、万能ではありません。
2)もう一つは、2人確認による油断、つまり、相手が確認しているから自分は確認しなくとも大丈夫」という、確認ミス事態で起こる社会的手抜きです。
斜めの段差のある廊下でつまずく」
3 絵と文章 データベースからそのままを使う
4 (オフィスヒヤリハットより)
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「解説」
平面を歩くときは、ずっと平面であるとの前提で歩く。そこに突然の段差や斜面があったり、上下があったりすると、それがほんのわずかであっても、つまずく。下手をすると転んで怪我をすることもある。
人の行為は予測によってガイドされているのである。
自然環境なら、平面なのか斜面なのか、凸か凹かなどは、光線の加減や土の色具合などから自然にわかることが多い。自然には人の行為の予測をガイドする条件(アフォーダンス)が整っているである。
しかし、人工環境では、同じ色や模様でしかも光線もかなりきついときには、平面ではないことを示す情報が瞬時にはわからないことが多い。結局、つまずいたり転んだりしたあとで気がつくことになる。
こうしたことを防ぐためには、色彩や模様を使って、平面ではないことを気がつかせるようにしないと危ない。
「類似ケース」
○観光バスは座席が高いので、入り口に何段もの階段がある。降りるときに、とりわけ、薄くらい時には段差に気がつかないでびっくるすることがある。最近は、段差なしのバスも増えてきた。また、降車時には、段差のところが点滅するような仕掛けもある。
****本文 19行 イラストを除く