●高齢者の持っている暗黙知を活用しよう
ここでやや話しが大いに飛ぶことになるが、リストラや団塊世代の退職の話題とからめて、高齢者の活用について一言。
うれしいことに、中高年者を対象としたリストラの嵐が吹きすさんだ5年前とは少しずつ情勢が変わってきたようだ。団塊世代の大量一斉退職の時期を迎えて、企業では、退職年令に近い高齢者の力量がようやくわかってきたらしい。なんとかもう少し企業にとどまってくれないかと言い出すようになってきた。高齢者がその企業の中で長年にわたり蓄えてきた暗黙知をもう少し活かしてほしいというのである。
暗黙知は、暗黙なので、言葉ではっきりと表現できないところがある。技能にはマニュアルとして残せる部分と、いわく言い難しの暗黙知の部分とがある。その暗黙知の部分はその人がいなくなると企業の現場からもなくってしまう。それは困るというのである。
コラム「現場力が落ちてきた!」****
日経ビジネス(04年3月8日号)による「製造業の工場長227人を対象にした調査」の一端を紹介してみる。
○「現場の力が落ちていると感じている」かと聞かれて
そう思うと答えたた割合が 54。2%。
その背景としては
○「技術の伝承や教育体制の不備で、働く人に充分な知識や経験を 与えられていない」を指摘する割合が 71。7%
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工場火災、石油タンク火災など、信じられないような「想定内」工場災害が多発しているだけに、企業としては事は深刻である。
暗黙知の継承は、OJT(on the job trainng)しかない。その人と一緒に仕事しながら、見よう見まねで覚えていくしかない。その人がいなくなったら困る。そのことに企業が気が付いたのである。
現場力の再構築が焦眉の急であるとして、作家で元旋盤工の小関智弘氏は次のような味わい深い言説を披露している。
「大量生産の時代は、人間は”マイナス要因”でした。まあ、人間はなまけたがるし、不平は言うし、おしゃか(不良品)は出すし、できるだけ排除した方がいい。ーーーところが、多品種少量ですぐれた製品をつくるには人間の技と知恵が不可欠です。人間を”プラス要因”としてとらえ直す。町工場が持っていた”現場力”を見直す動きが、大企業の現場にも出てきています。」(朝日新聞朝刊、05年1月12日付け)
