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1983年の富良野と北の国から

2017年08月28日 18時33分02秒 | バイク・旅の話題
 

 1983年の北海道ツーリングでのことだ。稚内から札幌に行く途中で富良野に寄ってゆくことにした。

 当時の富良野は観光的にまったく無名だった。ガイドブックに富良野のページはないほどだ。『たびんぐ』という旅の情報誌にも、山と渓谷社がだした『トラベルJOY』にも記述はない。わずかにラベンダー畑が人口に膾炙されているくらいで、たずねる者もすくなかった。その富良野に行ってみようと考えたのは、ラベンダー畑を見てみたい気持ちが8割、TVで放映中だった『北の国から』の舞台にたってみたい気持ちが2割だった。


 その富良野に着いたがラベンダー畑はない。もっと先なのかと進んでいく。富良野にはいったのは昼時をすぎた、食堂などが休憩時間になっているころだった。国道をゆくとログ建築の洒落た喫茶店があり、その店のまえの歩道にバイクを乗りあげているツーリング・ライダーがいる。対向車線だったが、急ブレーキをかけてハンドルを切り、歩道に乗りあげて彼のとなりにバイクをとめた。ただ同じツーリング・ライダーというだけで、すぐに友達になれるので、ためらわずにそうしたのだ。
「こんにちは。何をしているんですか?」
 ヘルメットをとりながら話しかけると、彼もにこやかに答えた。

 彼は関西の人だったと思う。バイクはアメリカンだったと記憶する。休憩中の喫茶店が夕方にひらくまで、あと4時間ほど、待つか思案しているところだそうだ。喫茶店をおとずれたツーリング・ライダーを店主が写真にとり、店のなかに飾ってくれるという。私も雑誌で読んだような気がしたが、せっかちで貧乏性のさがゆえ、4時間も時を無駄にしたくない。それに店内にはられた写真を、また見に来ることができるのかはなはだ疑問だ。次にいつここに来られるのか見当もつかないのだから。いろいろと話していると彼は言った。
「五郎の家には行きました?」
「北の国からの? いや、行ってないし、だいいちどこにあるのかも知らないのだけれど」
「富良野の駅から、砂利道を15キロばかり登っていったところですよ。急坂で、えらい道です」
「行ったんですか?」
「行きました」
「どうでした?」
「どうって、誰も住んでない小屋が、森のなかにポツンとたっていて、なかに撮影で使ったような、いろいろなガラクタが放りこんであるだけで……、行ってみます?」
「道は厳しい?」
「かなり」
「それじゃ、やめときます」

 簡単にあきらめる私だった。道道でもない砂利道を、それも急坂を15キロも走るのはご免だった。どんなにひどい道か、想像がつく(当時の私はオンロード・バイクにしか乗ったことがなくてジャリ道は避けたかった。今では好んで林道を走っているのだから笑い話のようだが)。彼はその付近でナンバーをつけていないトラックを見たと言う。警察がくることも稀なので、車検なし、ナンバーなしで、私有地から公道まで走っていると言うのだ。
 
 またそのころ北の国からの原作者で脚本家の倉本聡が主催する、富良野塾という演劇集団があった。この年はたしか二回生だったと記憶するが、彼は塾生から聞いたといって、倉本聡の人となりを語った。
 曰く、ものすごく我儘で、塾生を人ともおもわぬ態度でこき使い、傲慢で鼻持ちならない、と。私がTVで倉本聡を見て感じていたのと同じ印象だった。それで、そうなんでしょうね、と相槌をうった。ただ、倉本聡の作品は『北の国から』はもちろんすべて見ているし、ほかの作品も気づけば必ず見たいとおもっている。倉本聡の人となりはどうなのか知らないが、昔から作品のファンである。2017年では、やすらぎの郷、を楽しんでいる。

 彼は喫茶店があくまで待つと言う。待てない私は出発した。ラベンダーの時期ではないのかほかの花はあるが紫の花はない。一面にコスモスが咲いている畑があって写真をとる。それが冒頭の写真でほかに何もない富良野だった。


2001年。麓郷にて。燃えてしまった家だろうか。

 現在は麓郷に石の家や拾ってきた家があり、最初の家も2006年に移築されて見物料もかかるようになっているようだ。何もなく、観光客もいなかったころの富良野の話だ。

1983年の北海道ツーリング』もどうぞ。該当日は『何もない富良野、そして札幌の夜

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