事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「大豆田とわ子と三人の元夫」(2021 関西テレビ)

2022-07-19 | テレビ番組

ほぼ十年に一度、テレビドラマをイノベートする作品が出現する、が持論。

天下御免」(早坂暁)

前略おふくろ様」(倉本聰)

王様のレストラン(三谷幸喜)

木更津キャッツアイ」(宮藤官九郎)

……そして2010年代を代表する作品がここに現れた。坂元裕二「大豆田とわ子と三人の元夫」だ。何を今さらと言われそうだけど、リアルタイムでオンエアを見る習慣を失ってしまったので(大河ドラマを除く)、ご容赦願います。

まず、ナレーションが最高なのだ。“その回”に大豆田とわ子に起きることがいきなり明かされる。声も実に味わい深い。

「これ、誰?」

「ほら、伊藤沙莉(いとうさいり)よ」オンエアを見ていた妻はこともなげに。

「それ、誰?」

「……」

ストーリーは周到。最初の夫(松田龍平)二番目の夫(東京03の角田晃広)三番目の夫(岡田将生)と離婚した大豆田とわ子は松たか子。有能な建築家だったとわ子は、心ならずも社長にまつりあげられてしまう。次々に訪れる会社の危機に振り回され、元夫たちの干渉をふりはらい、そして四人目の男(オダギリジョー)が登場し……

ヒロインの名字が大豆田という変わったものなのに対し、元夫たちは田中、佐藤、中村という平凡さ。そして三人ともメガネをかけているという設定が最終回で炸裂。堪能いたしました。コメディエンヌとしての松たか子のすごさ。

「こりゃ、傑作だなあ。十年に一度じゃない?」

「もっとじゃない?!」

妻は再見してなお感銘を受けたようだ。

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「池袋ウエストゲートパーク」(2000 TBS)

2022-06-16 | テレビ番組

そうかオンエアは2000年だったか。ギリギリ前世紀の作品。もうそんなになるのか。

近ごろ「俺の家の話」「監獄のお姫さま」「ゆとりですがなにか 純米吟醸純情編」と宮藤官九郎作品を追いかけてきて、出世作であるこれを再び見ることにする。

初めて観たときの衝撃は小雪だったが(笑)、今度はどれだけ豪華キャストなのかと驚く。

正確に言うと、でた若手が次々にブレイクしたのである。

当時、売れていたのは主役の長瀬智也と渡辺謙ぐらいだったのに、窪塚洋介(となりに侍らせる愛人が池津祥子と峯村リエなのがすごい)、佐藤隆太、妻夫木聡、加藤あい、酒井若菜、山下智久、高橋一生、西島数博(真矢みきの旦那)、坂口憲二、そして阿部サダヲが出ていたのである。チョイ役でなんと小栗旬まで。これで面白くないわけがない。

しかし、もっともブレイクしたのは宮藤官九郎自身だろう。オープニングに小芝居があり、SADSのテーマ曲「忘却の空」のアコギのイントロが絶妙のタイミングでかぶったところで

「脚本 宮藤官九郎」

と出る。ゾッとするくらいうれしくなる。企画はもちろん磯山晶だが、よくもまあゴールデンタイムのドラマにこんな新人脚本家と無名のキャストで勝負に出たなあ。

うれしくなるだけではない。窪塚洋介は例の事件以来さえないし、長瀬智也と坂口憲二は表舞台から去った。このころからは想像もできない宮藤脚本&阿部サダヲ主演という驚天動地の大河「いだてん」は低視聴率に沈んだし(笑)、小雪は三人の子持ちのお母さんだ。

ま、いろいろあるけどこの池袋ウエストゲートパークがテレビ史に残る傑作であることは間違いない。見返してよかった。

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「貴族探偵」(2017 フジテレビ)

2022-06-08 | テレビ番組

あの麻耶雄嵩(まやゆたか)の原作を、あの月9の枠でドラマ化しようとはフジテレビもたいした度胸ではないですか。

推理などという雑事は使用人に任せておけばいい、がポリシーの、尊大で傲岸不遜な探偵が主人公。推理をしない人間を探偵と呼んでいいのか、と読者たちは考え込みながら原作を楽しんできたわけだが、さてこのドラマはどうだったか。

これを言ったら怒られそう……言っちゃおう。主役が嵐の相葉くんなのがネックではないかと予想。だって見えないでしょう相葉くんは貴族にも探偵にも。なんか人がよさそうだし。

だからわたしがこのドラマを見ようと思ったのは使用人が目当て。松重豊中山美穂滝藤賢一……よくそろえたなあ。ないしょだけど後半にはあの人まで加わる(最初からクレジットされているのだけれど)。

ライバルである女探偵役に武井咲。その師匠に井川遥と豪華なことだ。さすが月9。実際にストーリーを進めるのは生瀬勝久なのだが(笑)。

ゲストも豪華。加藤あい、橋本環奈、横山めぐみ、釈由美子、広末涼子、森口瑤子、上原多香子(顔がすっかり変わっていてびっくり)、ブレイク前の三浦透子、高岡早紀、南沢奈央(わたし、好きなんです)……あ、女優ばかり並べてしまった。

わたしもこういう名探偵ものは大好きなのでDVDで一気に見る。そうしているうちに、相葉くん悪くないじゃないの、と思うようになったのでした。簡単な客。

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「ゆとりですがなにか 純米吟醸純情編」(2017 日本テレビ)

2022-05-28 | テレビ番組

正和(岡田将生)と茜(安藤サクラ)の結婚式から1年。経営難に陥った坂間酒造に、オリンピックに向けた再開発のための立ち退き話が。複雑な思いを抱く正和に、妻の茜はある秘密が…。学年主任になった山路(松坂桃李)は仕事に虚しさを感じていた。山岸(太賀)にOB訪問する学生たちの中にはなんとまりぶ(柳楽優弥)が…。そんなある日、居酒屋・鳥の民で1年ぶりに再会した3人だったがお互いギクシャクして……。

【日本テレビ公式サイトから】

あの3人が還ってくる。オリジナルをみたときにスペシャルもちゃんと見ようと心に決めたのに、こんなに間が空いてしまいました。宮藤官九郎作品を追いかけていて、ようやく見つけました。

もののみごとに着地したあの最終回から1年。正和(岡田将生)は実家の酒蔵を盛り立てようと張り切るが、家族は立退料3億5千万に色めきたつ。学年主任となった山路(松坂桃李)は正和に「一度も社会に出たこともない人間」(その意味ではわたしもいっしょだ)と言われて激高。大学に入ったまりぶ(柳楽優弥)は就活の真っ最中だが……

このドラマでもっとも冷静なのは正和の妻の茜(安藤サクラ)だが、彼女の妊娠に坂間家の誰も気づかないあたりの描写がおかしい。

そして彼女に対抗するかのように登場するのが山路の幼なじみ。あらゆる不幸を体現するような彼女を演じているのが蒼井優で、彼女の福島弁は強烈。よく考えたら「フラガール」だったんだもんね。彼女と茜のやりとり(都会人と田舎者の対比)がすばらしい。

本編につづいてまた正和が足を骨折したり、あくまでマニュアルどおりの表情しか見せない人材派遣会社の社員をやる清野菜名が笑わせる。

山路の書いた辞表が「村上春樹ばりに長」かったり、今回もまた山路は童貞切れなかったんだなあとしみじみ。またスペシャルをつくってこの3人がどうなったかを知りたいなあ。新人類世代からのお願いでした。

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「監獄のお姫さま」(2017 TBS)

2022-05-16 | テレビ番組

同じ磯山晶企画&宮藤官九郎脚本の「俺の家の話」のあまりの展開に、やっぱりクドカンはすごい、と再認識。勢いでこのドラマのDVDも借りまくり。

さて、大ファンの宮藤官九郎作品なのになぜオンエア時に見ていなかったかというと……はて、どうしてだったろう。 

見始めて思い出した。これ、女囚ものなんだよね。だから登場人物のほとんどが犯罪者。それはかまわないにしても、展開として暗そうじゃない?

まあ、それは老人介護をあつかった「俺の家の話」も、校舎を燃やしてしまった(と思い込んでいる)教師が主人公の「ごめんね青春!」も、ゆとり世代のあせりを描いた「ゆとりですがなにか」も同様のことだった。

基本的にクドカンの作品は暗いので(その究極が敗者の物語だった「いだてん」だ)、よほどコメディタッチでパッケージングされていないときついのである。

あれま、よほどのコメディタッチでパッケージングされてました。

小泉今日子坂井真紀森下愛子菅野美穂が女囚。そこへ社長令嬢である夏帆が殺人教唆の罪で入所してくる。きびしい看守は満島ひかり

悪役の伊勢谷友介がいい。出所したおばさんたちに拉致され、突き出されたカンペを読まされるが「わたしは誘拐犯に誘拐され」を

「わたしはおばさんたちに誘拐され」

と読む。激高するおばさんたち。

「なんで誘拐犯をおばさんって読むのよ。あんた運命をさだめ、って読むタイプ?」

「だって誘拐犯に誘拐され、じゃかぶってるだろ!」

あははは。笑ったなあ。

クドカンの特徴である時制のコントロールと、猛然とした伏線の刈り込みが遺憾なく発揮された傑作。女性刑務所のルールもきっちり描かれて役に立った。いや別に入るつもりはないんですけどね。だいたいわたし男だし。

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「コウノドリ」(第1シーズン 2015 第2シーズン 2017 TBS)

2022-05-14 | テレビ番組

産科医たちのお話。漫画原作で医療ものとくれば思い出すのは「JIN 仁」。とにかくひたすら泣かせてくれたっけ。どうも医療漫画とドラマは相性がいいらしく、他にも「医龍」「Dr.コトー」「ブラックジャックによろしく」など、数多くドラマ化されている。で、どうやらどれも盛大に泣かせられそうなので敬遠しております。

しかも、わたしは妊娠や出産に関していい思い出があまりないので(いろいろあったんですよ)、およそ見たいと思わせる要素はなかったはずなのに……

「MIU404」のせいです。あの刑事ドラマが面白かったものだから、同じ綾野剛と星野源が組んだドラマなら何かしらあるんじゃないかと。

ありすぎです。

「不妊治療」

「高齢出産」

「切迫早産」

「死産」

……うわあ思い出したくないっ!

しかしこのドラマは、主人公が気鋭のピアニストでもあり(BABYという名がふるっている)、家族に恵まれなかったがゆえに産科医を志したという、それってどうなのという設定のおかげでドラマとしてグイグイすすむ。BABYがコウノトリ先生と同一人物であることを最初に見抜くのが、全盲の少女であるあたりも周到だ。

実は労多くして報われることの少ない産科医の志望者は減少傾向にあるという。子どもを産むときにまず苦労するのが産院捜しだという日本の現状がこのままでいいはずがない。予想どおりボロ泣きしながら見終えたわたしは、がんばれ産科医、とつくづく思ったのでした。いやー泣いた泣いた。

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「俺の家の話」(2021 TBS)

2022-04-25 | テレビ番組

製作が磯山晶で脚本が宮藤官九郎、そして主演が長瀬智也と西田敏行とくれば、こりゃどうしたって「タイガー&ドラゴン」を想起させる。ま、わたし的にはいまひとつだった「うぬぼれ刑事」はなかったことにして。

落語とやくざを融合させるというアクロバティックな世界を構築した「タイガー&ドラゴン」以上に、今度は能+プロレス+介護という、どんな三題噺かと絶句。

基本的に暗い話なのだが(クドカンの脚本は、よく考えるとみんな暗い)、切れ味の鋭いギャグが連発されるので印象としてずいぶんと明るく思える。

能楽の人間国宝である観山寿三郎(西田敏行)の長男である寿一(長瀬智也)は、家を出てプロレスラーになり(リングネームがブリザード寿……んで、ユーミンの「ブリザード」で入場するのが笑える)、しかし父親が危篤となったため、引退して宗家を継ぐ覚悟をするが……

長女が江口のりこで次男が永山絢斗。養子に迎えられたのが桐谷健太。長州力や蝶野正洋、武藤敬司らプロレスラーがドラマにからんでくるのがおかしい。

強力だったのは家族旅行の回で、スパリゾートハワイアンズに向かった一行が、純烈のバッタもんのような歌謡グループのボーカル(阿部サダヲ)といっしょに観山家がステージに立つ展開。長瀬智也、西田敏行、桐谷健太、阿部サダヲと、“歌えるメンツ”をそろえていたおかげで最高のステージに。

彼らにからむのが、ほとんど後妻業の女である戸田恵梨香。とんでもない悪女ではないかと思わせて……長瀬智也に山賊抱っこをされて愛にめざめるあたりのセクシーさがすばらしい。

そして、くわしくは言えないけれども最終回!そうきたかあ。あ然。まさかあの映画を引用するとは。すばらしいドラマ。見逃していた人はぜひぜひ。

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「プライド」(2004 フジテレビ)

2022-04-15 | テレビ番組

社会人アイスホッケーの選手と、チームが所属する会社のOLの恋……設定だけだといかにも月9

なにしろメンツがすごい。企画が大多亮で脚本が野島伸司。演出にはエース級が投入され、主役がキムタク。フジテレビの気合いがびんびん伝わってくる。が、逆に言えば絶対に失敗できない状況にあったとも。

えらそうなことを言っているけれど、わたし、野島伸司のドラマを初めて見ました。「101回目のプロポーズ」も「ひとつ屋根の下」も「高校教師」も見たことがない。それはもちろん大ヒットドラマだからこそ背を向けたというひねくれ具合も影響したのだが、それ以上に、なんかこう……あざとい感じがしないですか雰囲気から言って。

で、拝見してどうだったか。あざといですやっぱり。それはしかしいい意味でもある。縁取りをはっきりさせて、視聴者の深読みを拒否しているかのように。いい意味に聞こえないですか。

ある過去のために人を本当に愛することができない男(木村拓哉)と、連絡をよこさない恋人をいつまでも待ち続ける女(竹内結子)が、期間限定でつきあうことになる。こりゃ、石川達三の「僕たちの失敗」の引用か。

ベタベタなラブストーリーで、アイスホッケーをかなりやりこんだに違いないキムタクはもちろん魅力的。意外にもの悲しいムードが漂うのは、竹内結子の最期をこちらが知っているからだろうか。

まだブレイク前の水川あさみ波岡一喜が出ていたり、のちのROOKIESを彷彿とさせる(これも観てないけど)役で佐藤隆太が登場するのもうれしい。

テーマ曲はクイーンの「Born to Love You」。ほかにもFat Bottomed Girlsなどが全編に流れる。使用料高かったろうなあ。

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「BG~身辺警護人~ 第2章」(2020 テレビ朝日)

2022-03-15 | テレビ番組

シーズン1の後半の好調さを維持しつつ、もっともっと面白くなっている。

それは設定の妙のおかげ。キムタク演じる島崎は、ボディガードとして身体を張るが、しかし組織の人間としての枷は明確にあった。ところが、あることのせいで退職してしまい、個人で事務所を開設する。

うらさびしい事務所の光景は、明らかに私立探偵事務所をイメージさせてくれる。で、だれも小さな警護会社に仕事を依頼することはないだろうと思ったら……な展開がなんともいい。引きこもりの岡田義徳が、同窓会に出るまでの警護を頼むエピソードは泣かせたし。

ラスボスである仲村トオルが、島崎に警護を依頼するストーリーも考えてある。木村拓哉と仲村トオルのツーショットなど、ありがた感でいっぱい。井上由美子さん、どうか第3章もお願いします。テレ朝のことだから確実にシリーズ化するでしょうし。

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「あなたの番です」(2019 日本テレビ)

2022-03-02 | テレビ番組

給食が雪若丸ご飯だったので“勝手に給食だより”に登場させたのは雪若丸のCMに出演していた田中圭。

“雪若丸とくれば田中圭。となれば「あなたの番です」(日本テレビ)。あの犯人は意外だったなあ。もっとも、誰が犯人であっても意外だったでしょうが”

評判は聞いていました。毎回、人が死に、途中でとんでもないことが起こると。原案は秋元康。自分の住むマンションの住民会に出て、年齢も職業もバラバラな人間たちがいっしょになっているので思いついたとか。なんでも商売にするなあ。

あるマンションの住人たちが、ひょんなことから交換殺人ゲームを始めてしまう。殺人者は、自分が責任を果たしたのだからと今度はそっちだと宣言する。「あなたの番です」と。しかし次第に展開はねじれてゆき……

まず、初回で度肝を抜かれる。とにかく登場人物が多くて。まあ、次から次へと死んでいくので(笑)。

今ごろこのドラマを見ているのは、原田知世が主演だったからです。

いつまでも老けない化け物のような女優だけれど、田中圭の15才年上の妻、という設定もあって熟れた感じがむしろ新鮮。木村多江や奈緒の怪演もいいし、途中から参戦する横浜流星のアクションもキレッキレですばらしい。

「でしょう?いいのよ流星。ただねえ、あのラストにはあたしは納得してないの」

同僚は給食だよりを見てしみじみ。

このドラマって、リアルタイムでオンエアを見ながら、翌日に同僚たちとこうやってあーでもないこーでもないと言いあうのが楽しかったんだろうな。わたしはDVDで一気に見るタイプなので、あーでもないこーでもないと言うのはわたしの番です。

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