Daryl Hall - Dreamtime
PART1「ばか負け」はこちら。
「ま、ここまで一挙手一投足、生中継で伝える必要があるのかという皆さんの懐疑的な声もこちらに届いてきそうではありますが」
27日放送の「Nスタ」(TBS)における井上貴博キャスターのコメント。まったくである。よそんちの結婚話に一喜一憂(というより一憂一憂だが)してどうしようというのだろう。
にしてもNスタはすばらしい。井上貴博とホラン千秋に山内あゆ(ハーフだったとは知りませんでした。回文づくりが趣味なのは知ってたけど)がからむと独特の雰囲気が生まれる。星浩や今村翔吾などのコメンテイターも充実。意味がよくわからない泉ピン子のエネワンや、どこの訛りかよくわからない(福島らしい)夢グループの社長のCMまでが愛おしい。本気ですよ。
ま、それでもご愛敬なミスはしょっちゅうで、嵐のW結婚報告の第一報の字幕が「嵐の櫻井翔と相葉雅紀が結婚!」……日本でも同性婚が認められたかと思いました。
本日の1曲はダリル・ホールの「ドリームタイム」。
ソングライターとして絶対の自信がある人物が、別の人間にプロデュースを依頼する……デイブ・スチュワートはその期待に応えています。
PART3「クールな声」につづく。
「絶妙にむかつくな」
日曜劇場「グランメゾン東京」において、こう吐き捨てる木村拓哉は、いつものように木村拓哉だ。過剰にナチュラルというか。
そしてこのすねた演技は、みんなに嫌われているが料理だけは天才的という主人公に“絶妙に”フィットしている。
ミシュランの三ツ星レストランで修業し、パリの自分の店が二つ星を獲得している尾花夏樹(木村)は、アレルギー体質の政治家にナッツを混入した料理を供したことで名声を失う。おちぶれた彼と、料理の腕に自信を失い、パリで修業しようとする早見倫子(鈴木京香)が出会い、彼らは東京で新しいレストランを開くことになる。しかし尾花の汚名のために店の船出は悲惨なものだった……
かつてパリでいっしょに働いていたギャルソンの京野(沢村一樹……立ち姿がすばらしい!)、シェフの相沢(及川光博)、見習の平子祥平(玉森裕太)が再び集結し、あらたにパティシエに松井(吉谷彩子)、ソムリエールに久住(中村アン)、下働きに芹田(寛一郎)が加わるあたりの展開は、もちろん「七人の侍」の前半部分のよう。ワクワクします。しかもみんなそれぞれにドラマを抱えており、彼らがいかによみがえるかがドラマの核となっている。
これは、SMAPの解散騒ぎで批判の的となった木村拓哉がいかに復活するかともシンクロしている。思えばあの騒動のために、むしろ木村には陰影のようなものが加わり、その影が「教場」に結実したともいえるだろう。
日曜劇場らしく手塚とおるが憎々しげにライバルレストランのオーナーを演じ、「半沢直樹」的になるのもおかしい。後半になるにつれてコメディ色を強め、ドラマとして有機的になっていくのは「BG」と共通している。
おじさん(木村)とおばさん(鈴木京香)のラブストーリーに見せて、実は尾花をいちばん認めていたのが敵役のリンダ(冨永愛)だったという展開もにくい。ああキムタクドラマはやめられない。
次は「南極大陸」だ。っていうかこんなに好きなのにおれはなんにも見てなかったんだな。すまんキムタク。
古館寛治と滝藤賢一の主演……この時点でうれしいじゃないですか。さすがテレビ東京。
オープニングでテーマソングのヒップホップにのせて彼らがサングラスをかけて踊りまくる。どう考えてもブルース・ブラザース。いいぞいいぞ。さすがドラマ24の枠だ。
全12話、すべて野木亜紀子脚本、山下敦弘監督。泣けてくるくらいにわたしのツボだ。
正論ばかり言う融通のきかない長男(古館寛治)と、いい加減で調子のいい嘘ばかりつく次男(滝藤賢一)。共通点は無職であること。そんな彼らが通う喫茶店には五月(芳根京子)というウェイトレスがいて、兄弟は彼女を見守っている。ひょんなことからレンタルおやじを稼業にすることになった兄弟に、さまざまな依頼人がやってくる。
この、レンタルおやじの経営者を演じるのが宮藤官九郎。「いだてん」に山下敦弘がゲスト出演してくれたお返しだろうか。
野木亜紀子脚本の特徴は、徹底して考え抜かれたセリフと、キャラクターのネーミングのみごとさだろう。長男の名が一路(いちろう)で、次男が二路(じろう)。これ、最終回で効いてきます。
加えて、ドラマの進行のうえでたいして重要ではない回がいいんですよ。このシリーズでも、披露宴に新郎側(新婦は岸井ゆきの)の親戚としてエキストラでかりだされた兄弟が知る驚愕の真実とか、セルフネグレクトに陥ってしまった元看護師(門脇麦)に兄弟が影響されるとか、じーんとくる。
さて、野木亜紀子脚本作品も山下敦弘監督作品ももっともっと存在する。しばらく、楽しめそうだな。
もちろん、野木亜紀子脚本作品なのでレンタル。日本の恋愛ドラマってすごいことになってたんですね。
主演は新垣結衣と松田龍平。それぞれ、深海晶(しんかいあきら)と根元恒星(ねもとこうせい)という印象深い役名が与えられている。ここに花井京谷(はないきょうや)というこれまた忘れられない名で田中圭、橘呉羽(たちばなくれは)で菊地凛子がからんでくる。
晶は“仕事ができるがゆえに落ち込む営業”、恒星は“仕事ができるけれどもある事情で不正に手を染めている税理士”というひねくれた設定。
彼らは、それぞれに屈託をかかえて5tap(ファイブタップ)というビールバーでクラフトビールを飲む。マスターは松尾貴史。客の生活にあまり立ち入らないあたりの節度がいい。さすがキッチュ。
問題は京谷だ。
晶との結婚を視野に入れながらも、自分の部屋に前の彼女(黒木華)が“同居”しているのだ。これは彼がだらしないのではなくて、メンヘラな彼女を追いだすことができない暴力的なまでのやさしさのため。
結果的にどちらの女性も傷つくことがわかっていながら決断できない……そう、彼こそ獣になれない代表のような男だ。とか言いながら登場人物で唯一肉食系に見える呉羽に誘われ、関係をもってしまう優柔不断さ。こういう役は田中圭ほど似合う俳優はいない。
晶がつとめる会社の社長役の山内圭哉の弾けっぷり、徹底的に仕事から逃げる伊藤沙莉のずぶとさなど、恋愛ドラマの定型のようでいて微妙にひねっている。完全なハッピーエンドにもしないあたりもすばらしい。これもまた見てよかったとつくづく。野木さんが向田邦子賞をゲットした作品でもある。
米津玄師 MV「Lemon」
「掟上今日子の備忘録」はこちら。
帰省していた娘が
「アンナチュラル見てるの?」
「なんでわかったんだ」
「部屋から米津玄師のLemonが聞こえてたから」
あの有名な曲はこのドラマのテーマソングだということすら知りませんでした。
日本における遺体の解剖率の低さのために設立された不自然死究明研究所、通称UDIラボに勤務する法医学者たち。これがもう壮絶な過去をかかえていて、そのことが彼らのモチベーションにもなっている。
大きなお話はその過去との関わりの部分だけれど、通常の、小さなエピソードがかなり見せる。
火災の現場で不出来な息子が何をやっていたかなんて、泣かせたなあ。ミステリとしてもかなり高度なドラマ。石原さとみ、井浦新、窪田正孝、市川実日子、松重豊のアンサンブルもいい。いやー見逃さなくてよかった。
寝てしまうと記憶がリセットされてしまう忘却探偵。原作は西尾維新。Death Noteの原作者ではないかと噂されただけあって、ひねりの効いた推理が次々と。トリッキーな設定なので、キャストがむずかしいところ。それを日本テレビは新垣結衣と岡田将生という夢のような美男美女を用意してしのいだ。
なぜこのドラマをレンタルしようと思ったかといえば、脚本が「重版出来!」「逃げるは恥だが役に立つ」の野木亜紀子さんだったからです。期待にたがわぬ面白さ。記憶が失われることの不幸と幸福を、これだけバリュエーション豊かに描けるなんて。さて、次は噂の「アンナチュラル」を。
その1はこちら。
まったくツッパってなどいなかった少年、三橋(みつはし)が、転校を機に金髪に変身(美容師が小栗旬)。今日から俺は!というわけ。
同じことを考えていたもうひとりの転校生、伊藤はツンツン頭に変貌。このドラマのもっともバカバカしくて、そしてすばらしいところは、ケンカなどしたこともなかったこの二人が、なぜだかメチャメチャに強かったことだ。三橋は賀来賢人、伊藤は伊藤健太郎。千葉最強コンビとなっていく過程はとにかく魅力的。
そして三橋にぞっこん(ツッパリ以上に死語)な理子ちゃんを演じるのが清野菜名。いやこの子がほんとにかわいくてかわいくて……え、この人って生田斗真の奥さんなの?!っていうか生田斗真って結婚してたのか。うーん「俺の話は長い」のときにあんなに応援して損した。
思いっきりのスケバン(ひきつづき死語)なのに伊藤の前でだけは子猫ちゃんになってしまう京子は橋本環奈。あの小さな身体にながーいスカートをズルズルいわせているルックスだけでひたすら笑える。
宿敵の開久(あけひさ)高校のトップは鈴木伸之。とにかくガタイがいい。知らない役者だなあと思ったらこの人もEXILE関係の人でした。そして卑怯極まりない相良を演じたのが磯村勇斗。「ひよっこ」で有村架純と結婚した気のいいお兄ちゃん役との落差が大きすぎる。そして今度は大河ドラマで将軍家茂役。なんでもありだなこの人は。
かつて「ビー・バップ・ハイスクール」が一世を風靡したように、どんな世代にも自己犠牲ありの、意地っ張りで野放図なヤンキー的なるものに熱狂する素地はある。それはかつて仁侠映画に陶酔した世代にも共通。
そのことにいち早く気づいた福田雄一の勝利。おそらくまたしばらくすると新しいツッパリ作品が登場することと思います。ああまだ頭の中で「夢の中へ」が鳴り響いている。
休日に庭木の剪定をしているとき、頭のなかで延々と井上陽水の「夢の中へ」が鳴り響く。なんで今ごろ?
わかった。近ごろ延々とドラマ「今日から俺は!」をDVDで見ていたせいだ。だってテーマソングは嶋大輔の「男の勲章」だし、この曲ってほとんど「夢の中へ」といっしょです(笑)。
そのオリジナルの「男の勲章」を歌っていた嶋大輔のナレーションで毎回始まるこのツッパリたちのドラマの主要登場人物は、その「男の勲章」を歌う“今日俺バンド”でさっそく登場。リードボーカルが賀来賢人と伊藤健太郎、バックボーカルが清野菜名と橋本環奈、リードギターが矢本悠馬でドラムスが仲野太賀、そしてベースが乃木坂46の若月佑美という布陣。最終回では客席に宿敵の開久(あけひさ)高校の面々がうれしそうに。
原作は80年代末から90年代にかけて少年サンデーに連載された漫画。ネタがツッパリでキャストはほぼ若手……この企画、なぜ通ったのだろう。まあ、おそらくはマイルドヤンキー全盛の現代と相通ずるのでは、的な発想だろうか。
理屈はともかく、このドラマは大成功した。ツッパリなどまったく知らない世代や、まさしくど真ん中の世代のどちらもオンエア時に熱狂していたらしい。
脚本、演出は福田雄一。ゆるいつくりのコメディはもう彼の独壇場だ。特に佐藤二朗(清野菜名の父親役)とムロツヨシ(金八ルックスの国語教師)と組んだ時の破壊力たるや……例によって本来であればNGとなるような、出演者たちが笑いをこらえられなくなっているシーンもそのままオンエア。無法地帯だ。
あ、ドラマの内容にまったくふれていない。以下次号。
「聖女の救済」後篇の放映2日前に土曜プレミアム枠でオンエアされたスピンオフ。
主役はタイトルでおわかりのように内海刑事役の柴咲コウ。なぜ彼女がシーズン2にほとんど出演せず、アメリカに研修に行くことになったかの物語。
メインライターの福田靖さんの講演会に行ったとき、もうひとつの代表作である「HERO」についてこう愚痴っていたのが印象的だった。
「HEROの続篇に、松たか子さんが出ないってありえないでしょ。だけどスケジュール的に絶対に無理だったし、フジテレビの何十周年記念だからって撮ることは決まってたし」
脚本家はたいへんです。相手役は北川景子に変更され、ガリレオの場合は吉高由里子が起用されている。こっちはどんな事情があったんでしょう。
ただ、柴咲コウと吉高由里子は実生活でも仲がいいそうだし、スピンオフで主役までまかせているのだから黒い事情があったわけではなさそうだ。しかも、このドラマのキャストがやけに豪華なのである。ユースケ・サンタマリア、余貴美子、伊武雅刀、柳楽優弥、永島敏行……もっとも、うれしかったのは福山雅治や北村一輝が顔を出してくれたことでしたが。
このドラマにはしかしガリレオの匂いがほとんどしない。ストレートな刑事ドラマと言っていい。男社会である警察で女性が生きぬくにはどうすればいいか、長野県警と警視庁の険悪な関係……介護されている老婆の仏壇に「ローソクは消す」「線香はつけない」とメモが貼ってあるなど、細かい演出もガリレオっぽくない(笑)。
ラストに柴咲コウが泣き崩れるのが男子トイレだったという描き方もうまい。さて、ガリレオを全部観るシリーズは、シーズン3と劇場版の新作まで一休み。また、お会いしましょう。