ナレーションなしの予告編にもぶっ飛んだが、本篇のオープニングもすごい。ツェッペリンの「移民の歌」のカバーにのせて描かれる猥雑でクールな黒い筐体と裸体。魅力的で破壊的な調査員リスベットの悪夢を具現化したらしい。
いくらダニエル・クレイグ主演でも007だってここまで派手には……これから始まる物語は普通じゃないから覚悟してね、という監督デビッド・フィンチャーの宣言だろう。おなじ意味で、エンドロールが静かに静かに流れるのは、少し神経を休めてから映画館を出てね、というサービスか。それほどに、強力な158分。
思えばわたくし、この映画を観るために長いこと準備を重ねてまいりました。
・スウェーデンのミステリの代表作、マルティン・ベックシリーズは全作読破(角川書店の戦略にまんまとはまったわけ……すばらしい作品だったのでOKですけど)。
・スティーグ・ラーソンのベストセラー原作は読まずに我慢し(お金がなかったからだけど)
・本国で映画化され、去年まちなかキネマで公開された三部作はスルー(インフルエンザにかかっちゃったから)。
さあようやくご対面だ。まさか画面のなか以上に猛吹雪であろうとも国道7号線を突っ走りましたよ。
大満足。すばらしい作品だった。
罠にはまって名声と財産を失いつつある経済記者ミカエルと、まだ全容は明らかにされないが悲惨な過去によって痛めつけられたリスベット。彼らが四十年前に消えた少女の行方を追ううちに、次第にリカバーされていく過程が描かれる。
ミステリとして聖書が使われるあたり、フィンチャーの「セブン」「ゾディアック」を想起させ、残虐な連続殺人はスウェーデンらしく(?)性的で不道徳。納得。
観客の緊張感を途切れさせないために、ポリッシャーのノイズが効果的に使われるなど、小憎らしいほどの演出。
どうしてリスベットにこんな弱っちい女性をキャスティングしたのかと不思議だったけれど、ルーニー・マーラはそこを逆手にとって危ない女性をみごとに演じきっている。ラストの微妙な女心も泣かせます。必見!