事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

日本の警察 その122「隠蔽捜査8 清明」 今野敏著 新潮社

2021-03-04 | 日本の警察

その121「雪に撃つ」はこちら

隠蔽捜査シリーズ最新作。竜崎がついに大森署から神奈川県警刑事部長として異動。懲罰人事が終わったということ。

警視庁(とはくどいようだけれども東京都警察本部のこと)と神奈川県警は仲が悪いというのが通説。この作品もそのあたりを強調している。その原因は、警視庁の側がスケールの違いもあって神奈川県警を軽侮しているのと、神奈川がそれに過剰に反応している的な。

となれば、連携が悪いことを利用して狛江あたりで事件を起こし、すぐに川崎に向かえば逃げ切れる可能性は高まるのではないか。

この小説では、東京都町田市の川崎側に(失礼ながら)盲腸のように突起したエリアでの殺人事件。確かに、地図で見ると盲腸っぽい。ほんとに失礼。

町田だから警視庁の管轄だが、警視庁刑事部長は竜崎と因縁浅からぬ伊丹なので、共同で捜査に当たることになる。警視庁には警視庁の、神奈川県警には神奈川県警の強み(まず、事件の関係者が日本人か外国人かと瞬時に思い至る)と弱みがあるあたり、日本の警察を考えるうえで参考になります。

加えて、警察OBという存在がなかなか剣呑で面白い。退官すれば、現役のときの職位は関係ない……わけではないが、微妙に違った上下関係が新たに構築されるあたり、これまた警察という組織の面白さだ。

華僑にも世代間の断絶があるとされるあたり、今野敏には、なかなか優秀なディープスロートがいるようです。例によって時代劇の要素を大量にぶちこんで、このシリーズはもっと続くでしょう。にしても今野敏は多作ですねえ……。

その123「ルパンの消息」につづく

コメント
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