その7「家庭裁判所調査官」篇はこちら。
旅行が好きじゃない。できれば家にこもって外に出ない生活をしていたい。いや旅行が楽しいのはわかってますよ。これまでのお出かけについては大事な思い出だ。
でもねえ、新婚旅行で中国に行ったときも、家族旅行で函館に行ったときも、そりゃあ楽しくはあったけれどもトラブル続き。
香港の空港では妻のスーツケースが(短い間ではあったけれども)行方不明になるし、函館旅行では台風のおかげで乗り換えに苦労したものだった。
最低だったのはハワイで、前にもお伝えしたと思うけど、行きたくもないのに海釣りに挑戦。ところがメルカトル図法の世界地図をつい思い出してしまい、
「おれはいま世界のまんなかを漂ってるんだ!」
と気づいて船酔いで4時間吐きっぱなし。あれはつらかったなあ。人生で一番長い4時間でした。おれはホノルルでフリーでいいだろ?と言ったのにリーダーが
「団体行動だ!」
ツアーってやっぱり嫌い。
そんなわたしにとって、ツアーコンダクターとはもっとも縁遠い職業だ。
主人公の遥(はるか)は、念願の海外旅行の添乗員となる。そんな彼女に襲いかかる数々の出来事。まあ、他の商売でももちろん起こり得るトラブルだが、どうしたって旅先だからきつい。
しかし親切な先輩にめぐまれ(そのかわりに客にはめぐまれない)次第に成長していく連作集。近藤史恵さんはさすがだ。
彼女のようなツアコンがケアしてくれるのなら、わたしも旅に……いやいやダメだろ。トラブルを引き寄せているのはきっとわたし。
にしたってこの小説に出てくるスロベニアは激しく魅力的。いつか……いやいや行かないだろわたしは。行かないよ。行かないと思います。
コロナのおかげで旅に出られなくて不満だらけのあなたならこの小説は楽しんでもらえるはず。にしたってあなた、そんなに旅行したいですか?
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