事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

クローズZERO (’07 東宝)

2007-11-06 | 邦画

Crows  予想どおり、というか怖れていたとおり観客の中ではわたしが最高齢。でもいっしょに見ていた現役高校生の息子と感想はいっしょだった。

小栗旬……かっこいいなあ」

長身をもてあまし、腰ばき学ランとハンパ履きスニーカーがこれほど似合う役者もめずらしい。いまひとつキャラが固まっていなかった小栗だけれど、新しいスターがこの作品で誕生したと確言できる。

 同じような展開が、実は二十年ほど前にもあった。’86年の東映正月映画は、薬師丸ひろ子と柴田恭兵主演の「野蛮人のように」。人気が絶頂期にあった薬師丸を起用したのだから興行は盤石、のはずだった。ところが、意外なことに観客は添え物併映作の方に熱中したのだった。「ビー・バップ・ハイスクール」の第一作。清水宏次朗、中山美穂、宮崎ますみ……特にトオルを演じた仲村トオルの人気は爆発した。わたしも気の抜けたサスペンスの「野蛮人~」よりも、ひたすらケンカに明け暮れる不良映画の方がまだしも面白かった。薬師丸の人気凋落を印象づけたアイドル交代劇。映画界では、一種の事件だった。

Bebop 「クローズZERO」からも、未来のスターが小栗だけでなく飛び出すかもしれない。もっとも、三池崇史監督お気に入りの地味なメンバーが脇をかためているので(北村一輝が出ていないのが不思議なくらい)そううまくはいかないか。

 それにしても大ヒット。三池の映画が興行成績のトップをとるなんて初めてじゃないだろうか(「着信アリ」はどうだったかなあ)。かつて「新宿黒社会」「極道黒社会」「日本黒社会」の三部作で“明らかに他の監督と文体が違う”と思わせた三池は、とにかく「量が質を保証する」とばかりに作品を大量生産してきた。その頂点が「DEAD OR ALIVE」のラストシーン。哀川翔と竹内力の一騎討ちというVシネファンが泣いて喜ぶ設定で、まさかあんな展開にもっていくとは!ぜひ一度観てね。

 今回、三池が徹底して意識したのは東映任侠映画だろう(不良映画はみんなそうだといえばそうなんだけど)。土砂降りの雨のなか、ラストの総力戦に黒い傘をさして向かう(カラス=クロウにみえる)小栗旬に、同じく傘をさして同行する高岡蒼甫。これ、どう見ても高倉健と池部良です。ついでに言うと、黒カラスの軍団の中で、貧乏人という設定だからひとりだけ透明傘をもっている山田孝之は、おかげで孤高が際立つといううまさも見せる。思っていたよりもシリアスなタッチで、ヤンキーな観客たちも固唾を呑んで見つめていた。渋いぞ。

Lay_lines  問題は、これが東宝製作だということだ。どう考えても東映の三角マークが入っていなければならないはずなのに、いま東映番線でやっているのは「オリヲン座からの招待状」。宮沢りえと加瀬亮だから応援したいけれど、これを「ALWAYS 続・三丁目の夕日」と同じ日に封切るという戦術の拙劣さ。東映の末期症状は、ここにきてますます進んでいる。

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