第27話「黒岩博士の恐怖」はこちら。
前回がスペシャルだったので、レギュラーとしてのサードシーズンはこの回から開始。犯人は市川染五郎。この天下の二枚目に“古典嫌いだが客にだけはうける落語家”を演じさせている。設定が事件に深く関わっているあたりはうまい。
ミステリの柱としては二本立て。ダイイング・メッセージとアリバイトリック。“陰気くさいがネタづくりは一流”の兄弟子は、なぜ殺されたときに煮干しを握っていたか。落語の素養がある人ならニヤリと笑ったことと思う。
しかしアリバイトリックの方はしんどい。師匠と1対1の稽古に身代わりをたて(しかも被害者が加害者の代わりになる)、それがばれないと期待するのは、いかに師匠が“目がいけなくなっている”とはいえいかがなものだろう。
おまけに、今度は加害者が被害者の代わりに老人ホームの慰問にでかけ、それもばれないと予測するあたり、若旦那というより与太郎の犯罪に近い。まあ、兄弟子と市川染五郎がそっくりだとしたらこんなツッコミも有効だが、演じているのがモロ師岡(役名がタカダワタルなのが笑える)なのでギャグとしては十分に機能しています(^o^)。
さて、ミステリとして弱いときはセリフでカバーなのはサードシーズンもいっしょ。梅野泰靖が演ずる師匠、気楽亭有楽が古畑に実に味のあるセリフを。
「噺家ってのは……どっかバカなとこがなきゃねぇ。」
「あせりのねぇ芸人なんて、いねえんですよ。あたしだってさあ、いつも寝汗かいてます。近ごらぁ、これに寝しょんべんまで……あ、これ笑いどころね。」
つまり、今回は三谷幸喜のお気に入りである梅野泰靖の魅力爆発の回だったのだ。落語家を演じた三人が、いずれも本職ではなかったあたり、配役も芸になっている。
第29話「その男、多忙につき」につづく。
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