読売新聞にいま連載されている仲代達矢の半生記がむやみに面白い。映画界でも舞台でも活躍する彼に、双方が提供する条件が好対照なのだ。映画会社は
「(うちの専属になれば)家を建ててやる」
とオファー。ロケでは一流ホテルに宿泊。
対して、所属する劇団の公演ではほとんど金にならず、夜は劇団員たちがみんなで雑魚寝。仲代さんはオトナだから
「どちらも経験できたのがよかった」
とコメントしているが、お察しのように舞台人の多くは、“映像で稼いで芝居ではき出す”のが通例。映画やテレビは、金のためだと。
特に新劇の人たちは、板の上(=舞台)に立ったことのない連中(=映画人)を見下している。そして、映画人の方も「くさい芝居をしやがって」とつぶやきながら、舞台に一種のコンプレックスを持っているのが常。すいません断定してしまいました。
「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」Birdman or (The Unexpected Virtue of Ignorance)は、かつてヒーロー映画で大人気だったのに続篇への出演を拒否し、今は落魄している役者が、自らのすべてをかけてブロードウェイで公演をうつお話。
その主人公リーガンを、かつて「バットマン」で人気を集めながら、しかし途中で主役を降りたマイケル・キートンにやらせるあたり、しゃれがきつい。
劇中にこんなやりとりがある。テレビにロバート・ダウニー・Jrが出ているのを見て
「おれの半分しか才能のないヤツが、ブリキのコスチュームを着てうけてやがる」
アメリカのバックステージものは、こんなきついシャレもうけいれる素地がある。
共演者の頭に照明が落ち(舞台人がいつも感じる不安の象徴)代役を立てることになる。
「マイケル・ファスベンダーはどうだ?」
「X-MENの新作に出てる」
「ジェレミーはどうだ?」
「ジェレミー?」
以下次号。
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