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事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「都立水商(おみずしょう)!」室積光著 小学館文庫

2008-03-29 | 情宣「さかた」裏版

Toritsumizusho 酒のいきおいで、文科省の役人が暴走する。
「世の中には水商売ってものがあるんだから、そういう道に進む子のことも考えにゃならんだろ?」
「そりゃそうかもしれん」
「だから『水商業高校』があってもおかしくないだろ?」
「……よせよ」
「なんで?なんでだよ?てめえ水商売だけ差別するのかよ!」

かくして予算は通り、新宿歌舞伎町に『東京都立水商業高等学校』が開校する。専攻科目は「ホステス科」「マネージャー科」「バーテン科」「ソープ科」「ヘルス科」「ゲイバー科」など。

 始業前には担任が教室の前で待ち受けていて、厳しい服装チェックが入る。
「何だこの髪は?染めてこんかア!」
授業も実践的。
「それでは今日は『送り』について説明するぞ。『送り』とは、終電後、ホステスやスタッフを車で送ること、およびそのための人材の……」

……面白そうでしょ。でも全編にとびかう説教の嵐の方が印象深い。この作品が処女作である元役者の室積が、高野連的なものに代表される今の教育への批判を優先させたからだ。「あの武田鉄矢氏も推薦!!」(笑)という帯が、良くも悪しくもこの作品をあらわしている。

 ちなみにわたしがいちばん笑ったフレーズはこれ。
「いつまで野球を教育の一環とか言ってんですかね。だいたいスポーツで、スポーツ以外のことまでついでに教育しようなんて、教育する側が横着だっていうんですよ」

 なぜ笑ったかというと、後半はこの高校の甲子園出場をめぐっての大騒ぎなのだが、甲子園球児という存在が汗と涙の青春だけではないことをわたしは十分に知ってしまっているので。

 二十数年前、大火復興のシンボルとして春の選抜に出場した同級生たちは、教室ではこんな低レベルなことで悩んだりしていたのだ。
「○○にはファンレター何百通も来てて、△△にまで来てるのに、なんでオレには一通もこないんだよーっ!」
わかんねーのか鏡をみろ鏡をっ!

……2003年3月13日付「情宣さかた」裏版。さりげなく、近づく市長選への伏線をしのびこませたのだった。

コメント (2)
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大俳優 丹波哲郎 ~ ハワイの海に

2008-03-29 | 芸能ネタ

鶴田浩二総すかん篇はこちら。

 とりあえずおさえておきたいのは、これらはあくまで丹波の言い分だということだ。言われた方にもそれなりの反論はあるだろうが、まあ大目に見てあげよう。何しろ話半分、どころか【話十分の一】な丹波さんだし。

Tannba03  ただ、意外なほど家庭への言及がないこの大冊で、終盤に奥さんのことが語られている。若いころから難病に侵され、車椅子生活を余儀なくされた奥さんは“車椅子に親切だから”と二十年間ハワイに行き続けた。

丹波:で、ある日、ある海岸で俺に対して「末期癌だから」と。車椅子で海岸に降りて「ここで死にたい」って言うんで、「よし、じゃあ今度はここに骨を撒いてやるからなあ」というのが、僕の勝手な想いだったんだ。

-でも、向こうはそういう散骨は禁止なんでしょう。

丹波:うん。ところが「HOTEL」の撮影の初日に、知事をはじめ、ハワイの政府の関係者を招待してパーティを開いたとき、その席上で英語をしゃべれるのは俺だけだというんで代表してスピーチしたんだ。それが向こうに気に入られちゃって、「あとで相談して出来るなら出来るという許可証を送りますから」ということになったの。

-特別処置で。

丹波:だから、言ってみるもんだなぁと。

Et0609301ns  文句なく国際スターである丹波だが、欲がないことおびただしい。セリフを覚えないために「ザ・ヤクザ」(ロバート・ミッチャム主演)を降ろされ、気乗りしない態度のために「北京の55日」はキャンセル(代役が伊丹十三)。マーロン・ブランドとの共演「侵略」を扮装が嫌だからと蹴り(代役は岡田英次)……そのくせ喜々として「クレヨンしんちゃん」では吹き替えを。まことに、愛すべき人物ではあった。合掌。まあ今も、霊界でふかしまくっていることであろうが。

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大俳優 丹波哲郎 ~ 敵だらけの人生

2008-03-28 | 芸能ネタ

伊丹十三篇からのつづき。

Tabiji03 今回は丹波哲郎が語る芸能界相関図。

丹波:(滝沢修について)宇野重吉さんとライバルだったんだよな。新国劇の島田(正吾)と辰巳(柳太郎)のような関係じゃない。新国劇の二人は、結構仲いいように見えるんだね。でも、滝沢修と宇野重吉の場合は、明らかに仲悪いよね。外部から見た目では、役者としては滝沢修の方が上だったね。でも孤立してたね。ブレーンは宇野重吉の方がたくさんおったね。

……このあたりは、非常に納得できる話。滝沢の孤高はわかるなあ。

鶴田浩二さんなんかは、相性が悪いとダメらしいですけどね。

丹波:鶴田は利口な奴でね。セリフ覚えが良いのを自慢にしているぐらいで、そんなセリフ変えられたぐらいでどうってことないと思うんだけどね。俺なんかは、初めっから台本を見ていないから、セリフいくら変えられたって同じことなんだ(笑)。俺は鶴田とも高倉(健)とも三國(連太郎)とも、誰とでもうまくいくんだよね。ところが鶴田、高倉はダメだね。それから三國、鶴田もダメ。三人三様ダメだね。あと宇野重吉と鶴田が、これまた仲が悪いんだ。全く口もきかない。

-その二人と丹波さんはNHKの大河ドラマ「黄金の日日」(78)で共演してらっしゃいましたね。

丹波:大広間の一番離れたところで、お互い背を向けて座ってやんの。で、俺が通訳。

Tannba02 ……この相関図、よくよく考えるとみんなが鶴田浩二を嫌ってただけじゃないですか(笑)。しかし通訳をやっている丹波という絵ははまっている。この人の愛嬌は並ではない。

丹波:里見浩太朗と梅田コマ(劇場)に出てくれ、と言われたの。河内山宗俊だね。そのときにね、大チャンバラがあって、「あとは旦那、頼みますよ」と言われて、俺が何か言うんだ。そうすると客がワーッと笑うんだよ。何で笑うのか分からない。

-言い方がおかしかったんですか。

丹波:いや、俺がね「OK!」と言ったって言うんだ。時代劇で。

……そりゃ笑うってー(笑)。

【次回がやっと最終回

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大俳優 丹波哲郎 ~ キャプシーヌは男?

2008-03-27 | 芸能ネタ

人間革命篇はこちら。

Capucine02  神をもおそれぬ(実際、何も怖いものはもう無いんだろう)丹波の暴露話は続く。

-(「第七の暁」に)一緒に出ていたキャプシーヌは、プロデューサーと付きあっていたわけでしょう。

丹波:うん、そうそう。向こうはそういうのあまり気にしないね。で、ある監督から「キャプシーヌが最近死んで、解剖したら男だった、なんてこと、あなた知ってますか」なんて言われて、知るわけがない(笑)。

……こ、これはびっくり。キャプシーヌと言えば、画像のような美貌を誇っていたのだが、ネットでチェックしたら、確かに性転換の噂が存在する。うーん微妙。確かウィリアム・ホールデンの愛人でもあったはず。このネタは丹波がテレフォン・ショッキングにでたときも披露されたのだが、このときはなにしろ観客でキャプシーヌを知っている人がいたかすら微妙で。だいたい真偽のほどはかなり疑わしい。

伊丹十三さんの作品には唯一『マルサの女2』に出演されてますね。

丹波:監督としては感心したよ。監督に向いていると思った。もう亡くなったけれども、彼だったら資金を出す者もいたんだろうね。伊丹十三の作品だったら出たいという俳優もたくさんいたんだろう。ただ伊丹の場合、自分のイメージに無理やり合わせようとするから、現場がつまらねェんだ。遊び心がない。だから伊丹に言ったんだ。「君の映画には二度と出ない」って。

Juzoitami01 ……お気づきだろうか。伊丹十三に対する嫌悪感と、“役者としては”まったく評価していないことに。コンセプトをむき出しにするタイプはどうやら丹波は苦手のようで、大監督であっても、情が感じられない(加藤泰とか、工藤栄一とか)監督についてのコメントはそっけないかぎり。作品至上主義者よりも、文字通り“現場監督”がお好みの様子。わからないではない。

丹波:俺は現場に溶け込みやすいんですよ。香港映画(『水滸伝』)のときには、俺と仲代(達矢)と行くはずだったのが、仲代に代わって先に黒沢(年男)が現地に行ったんだ。俺がそれから二週間後に行ったら、黒沢が総スカン喰らってんだ。

……ね?丹波には天然の愛嬌という武器があるからなあ。おっとまだ続きます。次回は芸能界相関図篇。

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大俳優 丹波哲郎 ~人間革命と砂の器

2008-03-27 | 芸能ネタ

ふたりの熟女篇はこちら。

 そして、あの二つの大作との出会いになる。

Ninkaku_2 -舛田利雄さんと最初に組まれたのは「人間革命」(73)ですか。

丹波:そうだね。一年間、前後篇撮ったからね。小一年以上かかってると思うな。あれが『砂の器』に続くんだから。ホン(脚本)が橋本忍さんだから。『砂の器』というのは、松竹で十四、五年ものあいだ、話が出ちゃ潰れてた幻の企画よ。最後まで同じキャストだったのは加藤嘉だけだ。

-『砂の器』はシリアスな役どころで、セリフも多かったですね。

丹波:俺は人の名前だけは覚えるの嫌なんだ。そんなことで苦労するんだったら、他のことで集中していたい。

-クライマックスで、丹波さんの長ゼリフがあって、妙な間がありましたけど……

丹波:あれはね、忘れたんじゃない。俺は十遍くらいやり直したけどね、最初は野村(芳太郎)監督は、俺が忘れてんのかと思ってんだよ。でも、途中で呼吸できなくなるんだ。自分で感動し過ぎているんだね。

Ninkaku02  丹波哲郎が創価学会二代目会長戸田城聖を演じた『人間革命』は、レンタルビデオ屋でも見かけることがない。わたしのまわりの店だけかな。信者はほとんど購入済だからなのか。あるいは偏見かもしれないけれど、次第に池田教と化している創価学会にとって、戸田がほとんど殉教者扱いされているあの映画は、“無かったこと”にでもしたいのだろうか。映画として、なかなか面白い出来だったと思うんだけど。信者の報告待つ。

 『砂の器』には本当に泣かされた。確か中学生時代に酒田の古い大劇場で観たのだが、映画の持つ力ってすごいんだな、と思い知らされたのだ。でも若い刑事を演じた森田健作の下手くそさは中坊にもよくわかった。中坊だけに、今でも鮮烈に思い出すのが島田陽子の乳房なのは情けないけど(-_-)

次回は伊丹十三への罵倒が】

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大俳優 丹波哲郎 ~ ふたりの熟女篇

2008-03-26 | 芸能ネタ

エスパーのお父さん篇はこちら。

 今回は熟女二人のお話。丹波のテレビの代表作といえばフジ「三匹の侍」。その映画化にあたって、監督の五社英雄は……

Matuokayo 丹波:でも五社英雄は神経質だからね。あいつ二度も自殺未遂してんだから。一遍はバカバカしくて聞いてられない。タクシー乗って帰ろうとしたら、タクシーに乗れるだけの金がない。で、市電に乗って帰ってきたのが残念だってんで、自殺しちゃうんだ(笑)。バカみたいだ。もうひとつはピストル事件だ。

-本物の拳銃を所持していて逮捕された事件ですか。

丹波:五社はショックで、また自殺未遂よ(笑)。五社は猪突猛進型なんだ。で、五社が惚れたのは松尾嘉代なんだ。だから松尾嘉代のことを女優としてではなく、女として扱うんだな。松尾嘉代は「現場では私は女じゃない、女優だ。自分を女として見ないでくれ」とハッキリ言うんだよ。でも五社はまいっちゃったんだろうね。現場では追いかけ回してたね。

……後に「鬼龍院花子の生涯」などの傑作を連発する五社に、こんなみっともない過去があったなんて。まあ丹波も……

-『パレンバン奇襲作戦』(63)という戦争映画がありますよね。監督は『少年三四郎』の小林恒夫さん。これは『第七の暁』のロケから帰国して第一作でしたね。
丹波:ああ、覚えてる。特に印象に残ってるのは(フランソワーズ)モレシャン。彼女はこの頃結婚してたよ。言っとくけどね、俺の方が積極的じゃないのよ。モレシャンの方が強烈に迫ってきて、香港まで追いかけて来たんだから。香港でマスコミにばれちゃったんだから。俺は外国人女性にもてるんだ(笑)。

……正体不明の女(わたしにとって、ですが)フランソワーズ・モレシャンって、丹波哲郎とできてたのか!それ以上に、この人そんな昔から日本に来てたの? 

人間革命篇へ続きます】

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大俳優 丹波哲郎 ~ エスパーのお父さん篇

2008-03-26 | 芸能ネタ

初体験篇はこちら。いやはやしかし丹波さんってば。

Esp01  復員し、GHQの通訳、闇屋などをへて、彼は俳優になることを決意する。しかしこの理由というのが……

-でも本人としては俳優になりたかったわけですよね。

丹波:もう俳優しかないように思ってたね。「朝寝坊しても出来る仕事はないか」って尋ねたら「それは俳優しかないよ」っていうのが動機で学校(国際演劇研究所)に通い始めたんですよね。それはまあジョークではあるけれども。

……ジョークじゃないかも。しかし演劇を続けるうちに映画界に縁ができ、いきなり主役でデビューする幸運さ。その理由はいろいろとあるだろうが、この頃の丹波哲郎のスナップを見れば一目瞭然。華があるのだ。メリハリのありすぎる(笑)風貌と、その陰にあるオーラは、わたしがプロデューサーであっても見逃すことはないと思う。

 ここからいよいよ怒濤の出演ラッシュが始まるのだが、遠慮なしに交友関係のネタばらしまくり。まずは殿様の直系である(護熙は傍系)細川俊夫は……

丹波:細川さんとは非常に仲が良かったけどね。でも俳優としては硬い。ただ喧嘩は強い。おそらく俳優で一番強いのは、細川俊夫さんだと思うな。ロケーションに行って、土地の与太者が細川さんのところに行って、あっという間にやられちゃってさ。もういきなりやっちゃう。細川俊夫は喧嘩請負人だったんだ。

Esp02 ……えええっ!これは意外。わたしの世代にとっては、光速エスパーのお父さん役など、知的な科学者や温厚な人柄役が多かった細川俊夫が、まさかこんなにけんかっ早い人だったなんて。おまけに

丹波:もう、家庭なんていうのは“君臨”してるね。もう女なんか出来ようが何しようが、女房なんかにゃ全然遠慮ねェってね。

……うわーん、東ヒカルのお父さんがこんな人だったなんてー。

【次回、ふたりの熟女篇へ】

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大俳優 丹波哲郎 ~ 初体験篇

2008-03-26 | 芸能ネタ

丹波の出自のすごさはこちら。
さて今回は初体験篇。

Tanbatetsuro 俳優丹波哲郎というより、大金持ちのボンボンの日常。

-ちなみに初体験とかは覚えてます?

丹波:僕の初体験は、もうずーっとあとよ。十七歳くらいだから……

-それは同じ学校の……

丹波:いやいやいや。これはね、ミツという我が家の女中。僕が今でいうと満十六歳かな。中学四年だと思ったな。昔のことだから、パンティというのを穿いてないんだ。勿論ブラジャーなんかしてないんだ。

-ズロースみたいなのも穿いてないんですか。

丹波:いやいや、何も穿いていない。あの腰巻だもん。和服だから、洋服じゃないんだから。

-和服は昔だと一切そういう下着とかつけない。

丹波:下着はつけない。で、着物の裾を端折っているのよ。端折って洗濯したり、物をたたんだり、前掛けしてる場合には、思いっきり端折っちゃってる。そういう格好のまんまたらいを両足でもって挟むから、股が開くわけだよね。でも、もっと見えるのは着物をたたむときなんだよ。

-それをジーッと見てるんですか。

丹波:ジーッと見てるわけにはいかないんだね。チラチラと。だから、寝っ転がるんだよ。

Mh03 ……丹波節全開(笑)。聞き手のダーティ工藤も、さすがアダルトビデオ監督らしい突っ込みである。その後丹波は中央大に進学し(これも相当に怪しい入り方なのだが)、学徒動員で召集される。配属されたのは立川の航空隊。ここは落ちこぼれの吹きだまりだったとか。

-立川では巨人軍の川上哲治さんや芥川比呂志さんもご一緒だったそうですが。

丹波:川上哲治は見習士官。見習士官の二十人くらいのなかにいた。それが士官としてくだらないことをやってんだ。川上哲治は野球においてはスターだけど俺は野球をあんまり知らないから。でも、間もなく全員嫌いになったね。川上を好きだなんていう奴は我々の仲間では一人もいない。威張るのはいいんですよ、軍隊のなかだからね。まあ嫌われたね、徹底的に。情のない士官だったから。

……期せずしてすごい戦後史になっている。そして、いよいよ演劇の世界へ突入する。

エスパーのお父さん篇に続きます】

ここで豆知識。
「007は二度死ぬ」で、英語力などの関係からボンドガール浜美枝が一度キャンセルされそうになったのを、東宝が突っぱねたとか。ほぉ。やるなー東宝。

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「大俳優 丹波哲郎」ダーティ工藤 ワイズ出版

2008-03-26 | 芸能ネタ

深作欣二笠原和夫につづき、ワイズ出版のディープな芸談シリーズを。今回は丹波哲郎。

Tannba01  この俳優のことを知らない日本人っているだろうか。少なくとも四十代の映画ファンであるわたしにとって彼は“とにかく、どんな映画にも出ている”ほどの印象。東宝の大作はもちろん、新東宝、大映、東映のやくざ映画、日活、松竹……なんでもあり。

加えてTBSの長寿番組「キイハンター」「Gメン75」でお茶の間に浸透している。そして霊界の宣伝マンというわけのわからない存在でもある。

 代表作は、ミスキャストだった気もするが「砂の器」の刑事役と、ショーン・コネリーと共演した「007は二度死ぬ」、あるいは深作欣二の「軍旗はためく下に」あたりが新聞の死亡欄に載るのかな。しばらく死にそうにもないが(2006年9月病没)。

ただ、どんな作品を選んだとしても違和感はある。この人はあくまで“丹波哲郎”としてスクリーンの中にいたのであり、演じないことが丹波の演技術でもあったわけだから。

『大俳優 丹波哲郎』(ワイズ出版)は、アダルトビデオ監督であると同時に強烈な映画狂でもあるダーティ工藤が、圧倒的なフィルモグラフィを誇る丹波に、その来し方を聞き書きしたもの。いやはやこれが面白いのなんの。

 とにかくこの人はタモリが言うように自然人で、好きなように生き、好きなように演じてきたらたまたま大俳優になっていたという認識。だから発言に遠慮がない。芸談の醍醐味ここに爆発。いくつかご紹介しよう。いやーこれがすごいんだ。
 まずは生い立ちから。

丹波:俺のお祖父さんの丹波敬三というのは東大の名誉教授で、大久保一帯をポンと買ったんだ。そこに建てた学校が、今の東京薬科大学なわけ。

-じゃあ創立者ですか。

丹波:創立者。梅毒の薬“タンワルサン(丹波サルバルサン)”を開発した。だから世界を股にかけて儲けた上に薬事法まで作って、勲章(正三位勲一等瑞宝章)をもらい、男爵にまでなったわけよ。祖父の死後は祖母があらゆる財力と権力を引き継いでたわけ。で、息子、すなわち親父たちの兄弟は生涯祖母から金を貰って、誰一人働かない。だから子供の頃から何ていうかな、金というものについて、良いことなのか悪いことなのか分からないけど俺にとっては良いことのような気がするんだけど(金には)困ったことない。持つ習慣もない。

-金銭感覚がゼロですか。

丹波:どこかおかしい。どこかじゃないね。全くおかしい。 

初体験篇につづく】

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「パッチギ!」('04 シネカノン)井筒和幸監督

2008-03-25 | 邦画

Patchigi1  むかし「GO」を特集した号で、“いい映画を観ると腹のあたりが熱くなる”と書いた。その「GO」が、今思えばきれいごとですませていた部分を活写する「パッチギ!」(朝鮮語で『頭突き』の意)は、腹の中が沸騰する映画だ。まちがいなく04年のベストワン。

 ストーリーでわかるように「ロミオとジュリエット」在日版であり、同時に、なぜ在日が差別されなければならないのかを、激しく世間に問う政治映画でもある。しかし、それ以前にまず娯楽作品としてすばらしい。高校生たちのバトルの凄まじさはさすが「ガキ帝国」の監督だし、終盤、アンソンの最後の大喧嘩と、その彼女の出産、康介のラジオ局での「イムジン河」の熱唱が一気呵成に描かれ、涙なくしては観られない。“セリフが聞き取れない”ほど勢いだけで描写することが特徴だった井筒和幸が、ここまでみごとな映画を撮るとは。

 アルフィーの坂崎幸之助をモデルにした酒屋の息子を演ずるオダギリ・ジョーや、在日の長老を演ずる笹野高史もいいが、なにしろ高校生たちが抜群だ。特にキョンジャ役の沢尻エリカと、のちにハスッパな看護婦になるガンジャ役真木よう子

キョンジャの
「徳山にいるときはトイレもなかったもんねえ」というセリフや、
幼い弟妹を連れて歩くガンジャが「にぎやかでええねえ」と声をかけられ
「ほんまに?」
とぶっきらぼうに切り返す演出は、在日が背負う歴史を一瞬にして観客に納得させる凄みがある。しかも、あくまで明るく演じながら、だ。これは効く。

 わたしたちは今、北朝鮮がどんな状況にあるのかを知っている。反面、韓流ブームでわきたってもいる。でも、特に若い世代には背景にこんな歴史が流れていることをぜひ知ってほしいし、その意味で“押しつけがましくなく”(これが大事)感じとるための最高のテキストとしてこの映画は機能するだろう。

「もしもよ、もしも結婚するとして……あなた朝鮮人になれる?」
このキョンジャのつぶやきは現代においてもなお痛い。おまけに、在日たちは日本人だけでなく、彼らが心の故郷と慕う祖国からまで実は差別される対象でもある。

「北の故郷に なぜに帰れぬ」
と歌うイムジン河はその意味でも象徴的。京都の町で、鴨川をはさんで“向こう側”が朝鮮人、“こちら側”が日本人居住区と分かれ(このあたりは関西人にとって皮膚感覚なのだろう)、高校生たちの決戦が河原で行われる設定は、だからこそ観客にしみる。

 確かに若い連中は無力だ。でも、この川を渡ることができるのは、やはり若い世代か。そのことを、またしても泣かせまくるラストシーンが教えてくれる。合唱コンクールの定番、フォーク・クルセダーズの「あの素晴らしい愛をもう一度」がこんなに心にしみる曲だったなんて。腹に頭突きくらった気分。またしても責任をとりたくなる映画の登場だ。つまらなかったら入場料オレが払ったるわ!必見!

続編「LOVE&PEACE」はこちら。

画像は真木よう子。まさかこの人がこんな……以下略。アダルトサイトみたいだといわれようがかまうものか。

Makiyoko01

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