日本の漫画が世界最高水準にあることはよく知られている。日本文化で誇れるのは、クロサワやオズよりも、今や大友克洋や鳥山明だ。そんな高いレベルに慣れた目で見ると、アメリカンコミックの良さっていまひとつわからない。だから前作のメガヒットも、本音のところ日本人には理解不能だったのではないか。しかも監督は「死霊のはらわた」のサム・ライミ(うわっ!オレと同学年だったのか)。そこはかとなく……どころではないB級タッチにとまどった人も多かったはず。
でも今回はかなりいい。超人になったことに悩む主人公、こんな定石が他のどんなヒーローよりも納得できる。考えてみれば、スパイダーマンって手首から粘着質の“糸”を出すぐらいしか能がないわけで、ニューヨーク市民(=観客)の応援がなければ立ちゆかない存在なのだ。活躍した後の消耗も激しいし(笑)、こんなに貧乏なヒーローも珍しい。だからこそこんなくさいセリフの連続にも素直に感動できる。
「大いなる力を持つ者には、大いなる責任がある」(聞いてるかブッシュ)
「誇り高く生きなさい。そうすれば毅然として死を迎えられる」
ヒロインMJを演ずるキルステン・ダンストについては、好き嫌いがはっきり分かれているようだ。フェイ(キングコング)レイに始まるスクリーミング・アクトレ ス(絶叫女優)の系譜のなかで、おそらくはいちばん不細工だけれど、おそろしいものでわたしは次第に心奪われた。ラストの不安げな顔もいい。
デートムービーとして、これ以上はちょっと望めないほどの出来映え。恋人といっしょに観たら、相手のことをもっと大事に思えるようになるかもしれない。まあ、その恋人が手首から変な糸が出せるようなら、ちょっと話は別だけど。
「スパイダーマン3」はこちら。