事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

史劇を愉しむ 第25章 「日蓮」(1979 松竹)

2019-01-24 | 邦画

第24章「エクソダスよたび」はこちら

熱心な日蓮宗信者だった永田雅一は、大映社長だったときに長谷川一夫主演で「日蓮と蒙古大襲来」をばかげた予算で製作。

大映がつぶれて今度は松竹でつくったのがこの映画。信仰のためでもあり、組織動員が見込めたからかもしれない(日蓮の700年大遠忌記念映画でもある)。

帚木蓬生の「襲来」を読んだときもそうだったが、日蓮の最大の特徴は他の宗派を徹底的に攻撃する点にあるのではないか。法華経以外は認めない!邪教が国を滅ぼす!元は必ず攻めてくる!と断定の連続。かなりきつい人だったのかなあと。

そんな彼が信者をどんどん増やしていったということは、それだけ世が乱れていたのだろうか。執権の北條家は禅宗の信者だったらしいので、曹洞宗の檀徒としては肩身が狭いです(笑)

日蓮を演じたのは萬屋錦之介。んもうまわりを煽る煽る。父親に田村高広、母に岸田今日子。他に、観世栄夫松坂慶子田中邦衛大滝秀治丹波哲郎市川染五郎(六代目)松方弘樹と豪華キャスト。名匠中村登の遺作でもある。

第26章「大日本帝国」につづく

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「夜の大捜査線」In the Heat of the Night (1967 ユナイト)

2019-01-23 | 洋画

映画と列車は親和性が高い。サイレントの「大列車強盗」の時代から、力強い被写体が映画を文字どおり牽引してきた。

この、誰しもが名画と認める作品も列車の描写から始まる。そしてそこに

♪ In the Heat of the Night ♪

レイ・チャールズの絶唱が!(作曲はクインシー・ジョーンズ)。んもう、一気に持ってかれてしまいました。

まず、わたしの世代にとって、この映画のスタッフは驚異的だ。

・監督は「ジーザス・クライスト・スーパースター」「シンシナティ・キッド」「屋根の上のバイオリン弾き」「月の輝く夜に」のノーマン・ジュイソン。まあ、「ローラーボール」なんて珍品も撮ってますけど。

・脚本はパニック映画の大作「ポセイドン・アドベンチャー」「タワーリング・インフェルノ」でおなじみのスターリング・シリファント。この人も「キラーエリート」「スウォーム」ってとんでもないのも書いてますけど。

・撮影は「アメリカン・グラフィティ」「カッコーの巣の上で」「天国の日々」のハスケル・ウェクスラー

・なんと編集はまだ監督になる前のハル・アシュビー。「ハロルドとモード 少年は虹を渡る」のあの人ね。

このそうそうたる面々にクインシー・ジョーンズとレイ・チャールズが加わるのである。アカデミーの作品賞をとったくらいだからレベルが高いのは当然。エリート黒人刑事(シドニー・ポワチエ……くっそー、「冒険者たち」のレティシア役ジョアンナ・シムカスをかっさらった男)と、差別意識を隠せない署長(ロッド・スタイガーがいい味)の相克と和解の物語はもちろんすばらしい。

でもそれ以上に、ミステリ映画としてとても周到に出来ているのが今なら理解できる。夜の熱気の中で、狂気をはらむ犯人の描写が……あ、ちょっとネタバレ。

ごひいき、ウォーレン・オーツリー・グラントの登場もうれしい。

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日本の警察 その100 「その鏡は嘘をつく」「刑事の怒り」薬丸岳著 講談社

2019-01-23 | 日本の警察

その99「MOZU」はこちら

法務技官として少年たちの更生に尽くしていた夏目が、娘を通り魔によって植物状態にされたこともあって刑事に転職。その顛末は「刑事のまなざし」によって描かれ、TBSで椎名桔平主演でドラマ化された。冒頭の「オムライス」のオチは怖かったなあ。

以降、夏目は穏やかで家族思いの名刑事としてシリーズ化。普通の刑事とは経歴の違いもあって別の観点から事件を(マイペースで)捜査する。つまりは名探偵である。つまりはわたし好み。早く新刊が出ないかな。

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「錆びた滑車」 若竹七海著 文春文庫

2019-01-22 | ミステリ

「さよならの手口」「静かな炎天」と絶好調の

“仕事はできるが不運すぎる”

(編集者の名コピー)女探偵、葉村晶シリーズの最新刊。タイトルが示すものがラストで象徴的に登場して納得。

探偵の推理が常に読者の半歩先を行っているという意味できわめてまっとうなハードボイルド。ラストに「あれ?それは成立しないんじゃないか?」という点もあったけれど、最高作だと思います。

おかげで昔の「依頼人は死んだ」「悪いうさぎ」も一気に読破。

ただねえ、このシリーズ、あまりにも邪悪なキャラが多すぎないだろうか。特に「悪いうさぎ」は構成が複雑すぎることもあってちょっと落ちる感じ。

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いだてん 第3回 冒険世界

2019-01-20 | 大河ドラマ

第2回「坊っちゃん」はこちら

あんだよ、1回目はご祝儀相場で2回目は下落して12%って視聴率はどうなの。

ネットではいろんな理屈が飛び交っているけど、いつもの高齢の大河の視聴者が逃げていったということに終始している。わたしは逃げていった視聴者以上に宮藤官九郎のファンが集まると思ったのに。まあ、それは時間かかるってことか。今日も面白いんだからいいけどね。

さあ第3話。「冒険世界」という、後に主要な人物になる(でしょう?)押川春浪がらみのタイトルにしながら(のちの「新青年」ですよ。横溝正史ですよ江戸川乱歩ですよ夢野久作ですよっ!)、内容はすっかり「三四郎」です。

「貴方はよっぽど度胸のない方ですね」

と突き放す系の女性もちゃんと出てきます。

そんなStray Sheepな迷える金栗四三にも、思いを寄せる女性はいる。幼なじみのすや(綾瀬はるか)。彼女が見合いをするということを知らされて四三は動揺する……大河において王道ですねこのラブコメ噺は。

父親が、嘉納治五郎に四三を抱いてもらったという話を、長兄(中村獅童)が微塵も信じていなかったと翌週に明かす展開がすばらしい。

さて落語。古今亭志ん生の奥さん、おりんさんの役が池波志乃。もうこの時点でありがたくて涙が出る。

彼女は志ん生の長男である金原亭馬生の娘、つまりは志ん生の孫。というかね、わたしは馬生の大ファンなので、うれしくてうれしくて。

おとっつぁんが甲斐性なしで、いちばん苦しいときに圓生と満州に行ってしまい、でも……ああ、ほんとうにありがたい配役です。彼女もうれしかったろう。あ、そうか。このまま推移すればひょっとして馬生や志ん朝もドラマに登場するってこと?期待しよう。それだって大河じゃないか。

視聴率は意地になって語りますよ。残念だけど12%台維持と読みました。この面白さがなんで高齢層にはわかんねえんだ。志乃に文句を言ってやろう

第4回「小便小僧」はこちら

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うまい店ピンポイント2019年冬 函太郎

2019-01-20 | 食・レシピ

鳳花園冬のラーメン篇はこちら

お昼から生ビール。あろうことか熱燗まで。人間として壊れ始めています。

しかしそんなわたしは、これをいただいているその日に酒田唯一のデパートの屋上から鉄製のカバーが吹き飛び、道に落下したことも知らず(近所の連中は音が聞こえたそうだ)、シベールがきついことになっていることも知らず、前から酒田の回転寿司の代表だった栄助寿司がいよいよいけなくなっていたことも知らずにいた。

なんかもう不景気な話ばかり。デパート前には人がいない、ラスク以外のヒット商品をつくることができない、かっぱ寿司や函太郎という外圧にも耐えることができない……(もっとも、栄助寿司は新潟の会社だったようだ)。

でもとりあえず函太郎はおいしい。従業員も楽しそうに働いているので食べていて気持ちがいい。お昼時に行ったけれどもさほど待つこともなく、向かいのヤマダ電機の壁面に映る鳥海山を眺めながらお酒を消費。いい町なんだけどなあ。

 馬場篇につづく

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「氷菓」(2017 KADOKAWA)

2019-01-19 | 邦画

米澤穂信の古典部シリーズの映画化。評判最悪。でもわたしはきっと楽しめるとふんでレンタル。

ん?そんなに悪くないじゃないですか。横着な名探偵、折木奉太郎に山﨑賢人、才色兼備だけれども空気が読めない千反田えるに広瀬アリス

「わたし、気になります」

という千反田の要求に、常に渋々したがうホータローとのラブコメぶりはおなじみのもの。わたし、好きです。

もっとも、成績はたいしてよくないけれども推理力だけはずば抜けているという折木の名探偵っぷりをもっと強く押し出していれば、角川がもくろんだ(でしょう?)シリーズ化も実現したかもしれないのに。

それにね、広瀬アリスが妙に艶めかしいので、なんか原作とは違った意味で興味深い展開に。わたし、気になりました。

コメント (2)
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明細書を見ろ! 2019年1月号PART2 定期昇給

2019-01-18 | 明細書を見ろ!(事務だより)

Little River Band - The Night Owl (1981)

PART1「職員室の彼女。」はこちら

期末勤勉手当、年末調整が影響した12月の給料、そして差額と続いたので、自分がいつもどの程度もらっているのか忘れそうになる。さあ今月からはほぼおなじみの手取りに。それがうれしいかどうかはともかく。

しかし多くの方々が、昇給の恩恵で手取りがアップしているはず。物持ちのいい人なら先月の明細書とくらべてみると一目瞭然。号給が上昇しているのです。

めんどくさい理屈はともかく、普通の昇給は1年で4号給。でも、なかには6号給や8号給の特別昇給該当者もいる。いったいどうして?めんどくさいって言ったじゃないですか。素直によろこんでいればよろしい。発令書はまだ届いていないので、来月の給料袋に入れておきます。

その代わりと言ってはなんですが、源泉徴収票を入れておきました。これは去年の1月1日から12月31日まで、山形県知事からあなたがいくらもらったか、いくら税金を払ったか、そして社会保険料をいくら支払ったかなど、給与所得者としてのあなたをほぼ完全に表現した書類です。

だからローンを組んだりするときに提出を求められるわけ。1年間は絶対になくさないこと。で、かならず職場でひとりはなくすという書類でもあります。

本日の1曲は小川楽団の「夜のフクロウ」みんな、早く寝ようよ。

2019年2月号「退職。」につづく

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明細書を見ろ!2019年1月号PART1 職員室の彼女。

2019-01-17 | 明細書を見ろ!(事務だより)

 

2018年12月差額号「忘年会の翌朝。」はこちら

印刷室に新しいコピー機がやってきたのは2017年の夏。CANONの

Image RUNNER ADVANCE 6565

そうです。例の280万円(税別)の彼女です。モノクロでプリントアウトするときはそっちを選択してね、とリクエストしたのをみんな守ってますよね。守れよ。

そして今年、新人が職員室に。EPSONのインクジェット複合機

LX-10000F

こちらの彼女は定価260万円(税別)。期せずして印刷室と職員室でプリンタ業界の1位と2位が激突することになりました。

参考までに、2017年の国内インクジェット製品の出荷台数のトップはEPSONでシェアは43.8%。2位がCANONで43.7%とデッドヒートをくり広げています。3位のブラザーのシェアは10%で、ほぼこの3社の寡占状態。レーザープリンタはCANONがトップでリコー、ゼロックス、京セラなどの戦国状態です(IDC Japan調べ)。

今週、山形にやってくるという噂のEPSONの社長は、まさにこのインクジェット複合機でレーザーの市場をぶんどろうと考えているらしい。

さて、10000Fの特徴は

・消費電力が小さい

・実はコピー機(65枚/分)を凌駕するスピード(100枚/分)

・高画質(去年配布されたブラタモリのチラシは、この製品でカラーコピーされたものです)

・ランニングコストが安い(スマートチャージの契約よりも安価)

……いいことだらけのようです。ま、これは業者のセールストークですけどね。市内の小中学校でこの機種が入っているのはうちだけ。要するに実験台。

「他の学校にも宣伝してよ」

とリクエストされているけれども、それは請求書を見てからだな。

画像は「アリー/スター誕生」A Star Is Born

あの哀しいお話をなんとレディー・ガガで再映画化。前から脱ぎたがる人ではありましたが、まさかこんなに……。オリジナルの名セリフ

Hello, everybody. This is Mrs. Norman Maine.

を現代に甦らせるために、登場人物にはブラッドリー・クーパー以外にラストネームが与えられていません。うまく考えたなあ。

PART2「定期昇給」につづく

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「泥濘(ぬかるみ)」黒川博行著 文藝春秋

2019-01-16 | ミステリ

「喧嘩(すてごろ)」はこちら

疫病神シリーズの最新作。組に復帰した桑原は、前にもまして暴走する。それに例によって引きずられる二宮。

桑原の車はBMWの7シリーズで、二宮はフィアット500。桑原がブランドもののスーツで決めれば二宮はポロシャツにコッパン。性格と生活をうまく象徴している。

気になるのは、ふたりの来し方を今回は盛大に明かしていることで、ひょっとして黒川さんはそろそろ幕引きを考えているのではないかと……

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