保津川下りの船頭さん

うわさの船頭「はっちん」が保津川下りの最新情報や、京都・亀岡の観光案内など、とっておきの情報をお届けします。

保津川下りの魅力は・・・世代を越えて。

2005-06-01 23:36:15 | 船頭
日頃、生活していると、当たり前になって
気がつかない事って結構あるものですね。

私達、船頭の仕事も意外に同じかもしれません。

切り立った山々、岩を噛む激流などの雄大な自然
も毎日見ていると当たり前になり、その良さを
感じる感性が鈍り、本当の保津川下りの魅力に
気が付かないことがあります。

先日、この様な体験をしました。

その日は、初夏を思わせる日差しに涼やかな
谷風が吹き、気持ちいい川下り日和。

最前列にはシニアの方々のグループが座られました。

最初、最前列に座られたら川のしぶきが掛かったり
急流を落ちていく時にビックリされないか、
私達は心配しましたが、本人さん方は全く気に
止めないご様子。

急流で川水が顔に飛んできても「おお~凄いな~」
「涼しくて気持ちいいわ~」とご満悦です。

船が急流の難所を抜けて、緩やかな渕に入った時です。
最前列の老人が「わしらの歳になると、この様に
動く渓谷の景色を、ゆっくり見て眺める事は
なくなったな~」とぽっんと仰ったのです。

その言葉を聞き逃さなかったはっちんは、
櫂を引きながら、その老人に問いました。

「景色を眺めることがないってどうしてですか?」

すると老人は諭すようにゆっくりした口調で
「歳をとるとな~足が弱るんや、山深い所や
雄大な景色の所は歩いてはもう無理や、
遠くなったわ~行動範囲は少なくなるの~」
と仰るのです。

「けど、ドライブするとかあるじゃないですか?」と
とんちんかんな質問をするはっちん。

老人は小さく微笑みながら
「車は箱の中やろ、スピードも速いし、
直に自然には触れてるって感じやないし、
それにカーブとかあって長時間はしんどいわ!」
と答えられました。

続けて「その点、保津川下りはいい!こっちは座っている
だけで、雄大な自然の景色が次から次へと見られるのやから」
と嬉しい感想もまで。

「そうか、保津川下りにはそういう楽しみ方があったのか?」
と改めてそのお客さんに教えて頂いた様な気がしました。

私達の年代では、気が付き難い事ですが、
シニア世代にとって、山深い渓谷の景色を
のんびり腰掛けながら眺めて進む川下りは
自然を体感できる格好のレクリエーション
といえるでしょう。

日々の仕事に慣れてしまい、ややもすると忘れて
しまいがちな、保津川下りのかけがえのない魅力。

私はっちんも、常に「お客さんの目線にたったサービス」
を心がけ日々精進しているつもりですが、まだまだ甘いです。

これからも多くの人々のふれあいの中で、
本当に求められる保津川下りの魅力とは何か?
を真剣に追い求めたいと決意した出来事でした。