保津川下りの船頭さん

うわさの船頭「はっちん」が保津川下りの最新情報や、京都・亀岡の観光案内など、とっておきの情報をお届けします。

「雨中嵐山」、雨の日の嵐山に思う・・・

2006-11-19 19:28:31 | 船頭の目・・・雑感・雑記
今日は一日、秋雨が降る寒い日でしたね。

秋の観光シーズン本番を迎えた京都にとっては、
まさに水を注す冷たい雨となりました。

保津川下りに乗られたお客さんも寒い船旅になったことと思います。
こんな天候の日にもかかわらずお越しくださったお客さんには
本当に‘感謝’の言葉以外見つかりません。ありがとうございました。

山々の紅葉が赤く色づいてきた雨の嵐山は
霞みの中にしっとりとした葉が浮き上がり
秋の情緒を一段と醸し出します。

こんな日は「雨にけぶる嵐山」の美しさに魅せられた
一人の人物のことを思い出します。


その人物とは中華人民共和国の元首相・周恩来氏(1898~1976年)。

彼の詠んだ詩碑が嵐山の亀山公園に建てられています。
1972年に当時の日本国首相・田中角栄氏と日中平和友好条約を
締結したことであまりにも有名な周総理

この周恩来氏は、1917年に官費留学生として来日、約2年間、早稲田大学や
京都大学などで聴講生をしながら受験勉強をされていましたが、
受験した2校(東京高等師範と東京第一高等学校)はいずれも不合格と
なり、失意のなかで帰国を余儀なくされます。

この詩は彼が「日本で学ぶ」という夢が破れ、
帰国する前に訪れた嵐山で詠まれたもので、
夢破れた失意の中に「一すじの光を見出した喜び」を
詠った前向きな内容の詩とのこと。

当時、聴講生として通っていた京都大学で、マルクス主義研究の第一人者
河上肇教授の思想に強く影響を受けたといわれる周恩来青年。
その新しい思想を知ったことが、暗い世界の現実の中で
「一点の光が差し込めたような感動」を詠んだ詩なのです。

1978年8月、日中平和友好条約が調印されたことを記念して
未来永劫に渡って友好を願う気持ちから、ゆかりの深い嵐山に
日中両国友好のために尽された周恩来総理の詩碑を建立しました。

日本ではあまり有名なスポットではないようですが、
中国や台湾、香港などから来られる観光客の間では
必ず訪れる日本の観光スポットなのです。

周総理が失意の心で見た嵐山の美しい自然の中に、一すじの光を見出した様に
私もこの風景の中に、希望という光を見出したい!
そう願わずにはおれない「雨の中の嵐山」でした。

*「雨中の嵐山」
 
 雨の中を再び 嵐山を散策
 川の両岸には松や桜花もまじえ
 見あげると 高き山を見る
 水は緑に映え 川の石は人を照らす
 雨や霧に溢れているが
 一すじの日の光 雲間よりさして
 いよいよなまめかし
 人の世のもろもろの真理は糢糊たるも
 糢糊たる中に 一すじの光を見るは
 いよいよもって なまめかし