前回のオキイワシ同様にこれまで紹介していたと思ったら、実は紹介できていなかった魚のご紹介。ただし実はオキイワシも今日紹介する魚もデータ上では紹介していたのだが、実際には(消されて)紹介できていなかったもの。スズキ目・キンチャクダイ科・シテンヤッコ属のシテンヤッコ。
シテンヤッコの鱗
シテンヤッコは全身が黄色の魚である。しかしながら唇は青いし、鱗にはひとつひとつ点があり、よく見ると大変美しい。
シテンヤッコ頭部
おでこに一対の点があり、鰓蓋の上にも1対の薄茶色斑があるがこれが標準和名の由来であろう。しかし英語でThreespot angelfishといい、学名も「3つの点」という意味である。この4つある点のうち、どれを欠いて「3つ」となってしまったのだろうか。
この属は浅海~やや深い場所まで見られるが、概ね薄暗い、やや深場の磯で見られるようだ。もしかしたら水深だけでなく、低い水温を好むのかもしれない。グリフィスは30~60m、ブラックバンデッドエンゼルフィッシュは25~50mで183mから獲れたこともあるらしい。またキンチャクダイ科としては珍しく水中写真さえめったに撮影されていないことで有名なレユニオンエンゼルフィッシュも60~80mと、この属はおおむね深い場所をこのみ、採集できる数も少なく稀少で、流通されても数万~数十万円と高価である。シテンヤッコ自体はサンゴ礁域の浅場にも生息しているようだが、底曳網漁業で漁獲されたのを見せてもらって、驚いたことがある。ちなみにFishbaseでは3~60mほどの海底に生息するとあり、この属では比較的浅場にすむものといえるだろう。
腹部には傷があるが、これは突かれたときのものなのか、それとも水から上げるときに空気を吸い込んでしまい治療しようとした跡かは不明である。いずれにせよやや深いところにすむヤッコの仲間は減圧処理をしっかりしないと飼育するのは無理である。
シテンヤッコのお刺身。刺身は非常に美味であった。もしかすると、サザナミヤッコなどよりも美味しいのではなかろうか。今回は高知県で某氏が採集したものをいただいた。ありがとうございます。某氏によれば高知や和歌山では「いる」とのことだが、残念ながら私はいまだに本種を野外では見たことがない。観賞魚としては頻繁に輸入されており、水族館でもおなじみの魚である。分布域もこの属としては最も広く、関東地方でも幼魚がダイバーにより撮影されているほか、海外では南アフリカ東岸クアズールナタール~中央太平洋サモアにまで広く分布している。