魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

アミアイゴ

2022年06月30日 21時21分53秒 | 魚紹介

アイゴの仲間も色々種類がいる。今日ご紹介するのはアイゴ科・アイゴ属(もっとも、アイゴ科はアイゴ属しかいないのだが)のアミアイゴ。

アミアイゴの背鰭。毒棘に注意

アミアイゴは体中に細かい網目模様が入っているのが特徴。時としてこの網目模様は迷路のようになる。同じように網目模様が入っているアイゴにはムシクイアイゴというのがいるのだが、ムシクイアイゴは本種よりも背鰭や臀鰭の軟条部が大きく、シルエットはゴマアイゴなどの種類に似ている。ちなみにこのアミアイゴのシルエットはアイゴによく似ている。背鰭の棘条部と軟条部の間に小さな欠刻があるのが特徴である。もちろん本種もアイゴ科なので、背鰭・臀鰭・腹鰭にある強毒の棘に注意する必要がある。

英語名Little spinefootというのは小さなアイゴを意味する。たしかにゴマアイゴなどと比べて小型であるが、それでも20cmを超える。

日本では和歌山県以南の暖かい海に見られる。高知県の内湾でも見たことはあるが、採集できていない。写真の個体は石垣島での小物釣りで釣れた個体。内湾で群れているので、ときに入れ食いになる。このほか喜界島の浅い潮だまりにも見られた。また夜間になると浅い場所でもよく見られるようになり、20cm近くあるような個体も干潮時のイノーで掬っている(その後リリースしている)。藻類などを食うが、動物質の餌も食っているようで、この個体はオキアミを餌に釣れた。

世界ではインド以東のインド洋~中央太平洋に広く分布しているが、ハワイ諸島にはいない。というか、ハワイ諸島にはアイゴ科自体が分布していないようである。分布域は南アフリカ~中央太平洋までで、大西洋や東太平洋には生息していない。地中海にも生息していなかったが、Siganus luridusと、S.rivulatusの2種が知られている。これらの種類は西インド洋~紅海のサンゴ礁域に生息しており、地中海においてはスエズ運河経由で分布域を広げたものとみられている。熱帯域では食用になっている。沖縄ではゴマアイゴなどが人気だが、本種はどうだろうか。沖縄名産「すくがらす」はアイゴ類の稚魚で作っており、本種もその中に含まれるというのだが。

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サザナミヤッコ

2022年06月29日 22時11分54秒 | 魚紹介

最近は沖縄の魚をご紹介してきたが、今日は沖縄を離れ、鹿児島県の魚をご紹介。スズキ目・キンチャクダイ科・サザナミヤッコ属のサザナミヤッコ。もっとも、サザナミヤッコは鹿児島だけでなく沖縄にも多く分布している熱帯性海水魚である。

サザナミヤッコといえば、2007年に幼魚を採集したときにこのぶろぐでもご紹介したが、その時以来の登場となる。幼魚は青い体で白い細横帯が入るのだが、成魚になると全く異なる色彩になる、というのもよく知られている。成魚はオリーブ色の体に、青い斑点と青い鰓蓋がある。そして背鰭と臀鰭が後方によくのびているのも特徴だ。

なお、今回は背鰭のところが少しくぼんでいる。おそらく幼魚の時にイカか何かに襲われたのだろう。それが完治し、我が家の食卓にのぼることになったのだ。感慨深い。

サザナミヤッコのお刺身。色からも美味しそうな雰囲気が漂う。また脂も程よく乗っているように見えるかもしれない。実際には、味はかなりうまい。一方脂はノリがかなり強い。しかし養殖魚のような脂の感じではなく、美味しい。購入してよかったと思う。

なお私がサザナミヤッコを食するのはこれが初めて、ではない。2019年にも鹿児島産のサザナミヤッコを刺身で食している。この個体もかなり美味しかった。

キンチャクダイ科の大型個体は様々な方法で食される。タテジマキンチャクダイやロクセンヤッコも食したが、やはりサザナミヤッコは美味しい。臭みというのも全く感じられない(ニシキヤッコは若干臭みがあった)。沖縄では食用魚になっているが、「沖縄さかな図鑑」によれば「食用にはなるが、市場には出ない」との記述がある。そして同ページ「タテジマキンチャクダイ」の項目では「内臓の臭いは強いものの、身はおいしかった」との記述あり。この本の中で「市場価値がない」などと激しく貶されたベラ科魚類と比較すると破格の好待遇である。ただしやはり八重山の市場ではあまりあがらないのだろう。確かに、沖縄の市場と八重山の市場を比較すると、後者のほうが種類が少なかったような気がする。サザナミヤッコはインドー太平洋のサンゴ礁域に広く分布しているが海域ごとに色彩や模様に変異が見られる。オーストラリアやセイシェルのものを比較すると、少しずつ違っている。幼魚は九州以北の太平洋岸でよく見られ、関東にも出現するが、越冬することはできていないようだ。

英語名はKoran angelfish、もしくはSemicircular angelfishと呼ばれることが多い。前者はインド洋にも多く生息し、若魚の尾の模様がアラビア文字に見えたからともいわれる。一方後者もやはり幼魚~若魚の模様だろう。標準和名もおそらく幼魚の模様。Blue angelfishはその青みを帯びた色彩からきていると思われるが、一般的にBlue angelfishという名前で呼ばれるのは、カリブ海に生息するHolacanthus bermudensisという種のことをさすので、混同しないように注意が必要。

なお、今回の個体も、2019年のときの個体も、鹿児島市「田中水産」社長 田中積さんより。いつもありがとうございます!

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ヤマブキハタ

2022年06月28日 22時03分54秒 | 魚紹介

今日でたぶん沖縄の魚シリーズは最後。スズキ目・ハタ科・ヤマブキハタ属のヤマブキハタ。

ヤマブキハタは全身が真っ黄色なのが特徴。背鰭棘数は8でユカタハタ属よりも少なく、スジアラ属に近い。実際にヤマブキハタ属は1属1種とされるが、見た目はスジアラに似ていてスジアラ属に含める文献もあるようである。

スジアラ属との違いは、臀鰭棘の様子である。臀鰭の第1棘が顕著であり、第1棘が短く不顕著なスジアラ属と見分けることができる。なお、体は桃色で背中が黄色であり、同じように深場に見られるハナフエダイと似たような色彩をしているところが興味深い。コクハンアラやスジアラなどに見られる斑点や鞍状斑などは見られない。尾鰭は直線的であるが、スジアラなどのようにわずかに湾入するような個体もいる。食性は甲殻類やイカ・タコなどの無脊椎動物、小魚を食する動物食性である。また同じハタ科の小型種であるイズハナダイ属のフジナハナダイはこのヤマブキハタの胃の中から得られ、日本初記録種として報告された。

生息水深は深く、水深200~300mほどの岩礁域に生息し、主に釣りなど、まち類を狙う漁法で漁獲されている。全長40cmほどでハタとしては普通のサイズ。あまり大きすぎると岩礁域での生活に支障がでる可能性もあるようだ。枝状サンゴが密集した浅いサンゴ礁域では小型のカンモンハタやユカタハタなどが行動し、サンゴが少ない岩礁域では大きなハタが多くみられるように思える。

今回のヤマブキハタは那覇市の泊いゆまちの鮮魚店で購入したものだが、イチモンジブダイやヒレグロコショウダイなどを購入したお店とは別のお店で購入したものである。なかなか見られず、ついに見られたので迷わずに購入した。やや鮮度が落ちていた感じだったが、刺身などでかなり美味であった。このような微妙な色彩の魚は、鮮度が落ちるとどうしても残念な色彩になってしまうようだ。分布域はインド洋東部~仏領ポリネシアに及ぶ。日本では琉球列島以南に分布している。「沖縄さかな図鑑」によれば、沖縄島ではほかのハタとともに「じせいみーばい」と呼ばれるようである。英語名はGolden grouperと呼ばれる。その体色からだろう。先述のようにこの個体の写真はちょっと残念なことになっているが、釣りあげたばかりのものはまさしく黄金のハタと呼ぶにふさわしいものである。

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イチモンジブダイ

2022年06月27日 15時59分25秒 | 魚紹介

今回も沖縄の魚。以前ご紹介した、ヒトスジモチノウオと同じハコに入っていたブダイ科魚類の一種。イチモンジブダイという魚である。

イチモンジブダイの若い雄

イチモンジブダイはアオブダイ属のもので、雄は眼の下に、口から伸びる青い線を有しているのが特徴である。また尾鰭はピンク色の線があり、成長するとこのピンク色の周辺が長くのびていくが、この個体は標準体長202mmと小型であるためか尾鰭は伸びていない。もう少しすると体がもっと青くなり、頭部に大きな暗色域が入るが、この個体はまだ小さく性転換してすぐのようで、まだそのような頭部の色彩にはなっていない。成魚では全長40cmを超える。

イチモンジブダイの雌

イチモンジブダイの雌。雌は赤みを帯びた色彩で、体側に広い暗色域がある。また生きているときなどは暗色域が薄く、青っぽい模様が入ることがある。このため、雌の同定が難しいものが多いアオブダイ属の中にあって、本種は比較的雌でもほかのブダイ類との同定はしやすい。同様にヒブダイ、カワリブダイ、ヒメブダイ、アミメブダイ、オグロブダイ、ナガブダイなどは比較的雌雄の区別は容易である。また幼魚は体側の横帯が薄いことや尾鰭が黄色っぽいことなどにより、ほかの同属魚類の幼魚と識別可能とされる。

分布域は西-中央太平洋域で、インド洋ではクリスマス島(オーストラリア)など東部に限られ、西インド洋には産しない。またハワイ諸島にも生息していない。

近縁種にはトリカラーパロットフィッシュというのがいる。この種の雌は全身が黒っぽく尾鰭と臀鰭が赤~橙色、眼が黄色という色彩で鱗が黒く縁どられるなどスゴイ色をしていてほかのブダイとの見分けができるが、雄はイチモンジブダイに似る。しかしトリカラーパロットフィッシュの場合眼の上にも線が入るので見分けることができる。トリカラーパロットフィッシュは南アフリカ~ポリネシアにまで広く分布しているが、日本からの報告はないよう。しかしフィリピンにはいるので日本に出現するかもである。もしかしたらイチモンジブダイと混獲されて気が付いていないだけかもしれない。

石垣島で水揚げされたイチモンジブダイの雄

こちらは石垣島の魚市場でみられた個体。海の中では青い美しい色彩であるが陸にあげると黄色が目立つようになる。本種は全長40cmを超えるため食用としてよく漁獲されており、刺身などで美味である。藻類を食するほか甲殻類も食べるようである。

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ホホスジモチノウオ

2022年06月26日 21時58分29秒 | 魚紹介

昨日はヒトスジモチノウオをこのぶろぐで紹介してきたので、今日はこちら。同じベラ科・モチノウオ亜科・ホホスジモチノウオ属のホホスジモチノウオ。

ホホスジモチノウオはヒトスジモチノウオに似ているが、眼後方に模様がないか、あっても鰓蓋後縁に達しないのが特徴。ヒトスジモチノウオの尾部にある白い横帯はない(ただし、ヒトスジモチノウオでも小型個体や状態によって消失することもある)が、ホホスジモチノウオでも個体によっては尾柄が広く白っぽくなっていることがある。そのため尾の模様での同定は確実とはいえないだろう。水中では鮮明な写真ではないものも多くより分かりにくいかもしれない。なお、ホホスジモチノウオの標準和名はおそらく、頬部の細い線からきているのだと思われるが、これはヒトスジモチノウオにも見られるので注意が必要。

ホホスジモチノウオ

ちなみに私にとってこの種は私が初めて出会うホホスジモチノウオ属の魚となった。この個体は2011年5月に鹿児島県奄美大島で釣りによって獲れたもので、それを冷凍便で送っていただいたもの。釣り人の星 剛彦さん、ありがとうございます。

ホホスジモチノウオも全長30cmほどになり、釣りなどで漁獲されて食用にされていると思われる。しかし残念ながらこの種はいまだに市場に並んでいるのを見たことがない。なお「沖縄さかな図鑑」では「小型のため市場価値はない」と、悲しい書かれ方をしている。一方ミツバモチノウオも「八重山では市場価値がない」とか書かれていたりして、この本のベラの仲間は全般にちょっとかわいそうである。ちなみにそのような理由かはわからないのだが、このホホスジモチノウオとはこの個体以外に一度も見ていない。

分布域は和歌山県、屋久島、琉球列島、インド—太平洋だが、中央太平洋はサモア諸島くらいまでで、ヒトスジモチノウオと異なりハワイ諸島には生息していないらしい。逆にヒトスジモチノウオが生息していないインド洋ではホホスジモチノウオはよく見られ、東アフリカにまで生息している。紅海にはメンタルラスOxycheilinus mentalis (Rüppell, 1828)と呼ばれる、本種によく似た種が生息している。

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