今日で3月も終わりです。
ちょっと前になるが、久々に珍しい魚をいただいた。スズキ目・ヤエギス科・ヤエギス属のヤエギスという魚。ヤエギスは「日本の海水魚」などに掲載されており、写真も掲載されているが、なかなか出会えない魚で、私も出会うのは初めてである。
ヤエギス科の魚はいくつかの属が知られ、そのうちサンリクヤエギス属の魚はヤエギス属の魚と大変によく似ている。しかしヤエギス属の魚の側線は目立たず、肥大した有孔鱗がないこと、尾鰭軟条の最下方に小鋸歯があるなどの違いがあるようだ。たしかに側線は目立っていないものの、サンリクヤエギス属の魚は一切見たことがないのでわからない。
世界ではヤエギス属の魚は4種が知られている。そのうち2種はStevenson and kenaley (2013)※により新種記載されたものである。そのうち日本に分布しているのはヤエギスのみで、この種は横浜産を基に記載されたようだ。日本近海に生息している、というわけではなく日本からベーリング海を経てアメリカの西岸にまで分布するようである。日本国内では北海道~土佐湾の水深200m以深の深海に生息しているようで、なかなか出会うことができない種である。この個体は北海道産。従来は南半球やグリーンランドにも分布するとされたがこれらは別種であり、ヤエギスの分布域は北太平洋に限定されるよう。
ヤエギスの口と眼は近い位置にある。これはサンリクヤエギス属とは別属のコクチヤエギス属と見分けるポイントになる。コクチヤエギス属は口と眼がやや離れている。またヤエギスはあまり明瞭ではないが側線を有するのに対し、コクチヤエギスでは側線を有していないようである。ヤエギスが何を食しているかは不明であるが、今回さばいたときには胃の中にはなにも入っていなかった。
二枚おろしにしてみると、外見とは全く異なる白い身がきれいである。鱗はまったくないわけではないのだが、この個体は底曳網漁業によって漁獲されたものらしく、網ですれてしまっていたためかほとんどなくなっていた。
お刺身は脂がよく乗っていて美味しかった。
塩焼きもまた美味であった。まだまだ未知ながらおいしい魚はいるものである。今回の個体は魚利水産からいただいたもの。いつもありがとうございます。
※Stevenson, D. E. and C. P. Kenaley. 2013. Revision of the manefish genera Caristius and Platyberyx (Teleostei: Percomorpha: Caristiidae), with descriptions of five new species. Copeia, 2013: 415–434.