魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

キンギョの放流

2023年07月31日 11時03分32秒 | 環境問題

こんなニュースがあった。

子どもたちが魚のつかみ取りに挑戦 地域住民が金魚など放流 名古屋 (メーテレ)※リンク先はYahoo!ニュース

「4年ぶりの開催」ということで、4年前からこのようなイベントをやっていたということに驚いたものではあるが、やはり今どき河川にキンギョ、マス、ウナギなどを放流するのはよろしくないことといえるのではなかろうか。

以前このぶろぐでは「キンギョの放流」についての記事を書いたことがある。このときはちょうど大阪府泉佐野市の河川に「キンギョを放流して自然の河川で金魚すくい」という趣旨のイベントであったと思う。当然このイベントは色々な方面から批判を浴びたが、結局強行開催ということになった。そして、泉佐野市の観光サイトを見ていると、どうもまだやっているようである。ご丁寧に(遠景ではあるが)ポイを持っている親子連れの写真も掲載されている。

最初にこれがニュースで話題になったのは2016年。2017年には日本魚類学会の公開シンポジウムが開かれている。そこで「第三の外来種」(キンギョやニシキゴイなどはこれに含まれうる)問題について話し合われたのだが、結局いつのまにかまたうやむやになってしまった。昨年2022年もコイの放流が話題になったし、今でもオウジャンカラーカープ(ニシキゴイ)やらニジマスなど放流しているところも多い。結局「魚類学会が公開シンポ」したってなにも効果はないし、特定外来生物指定してもオオクチバスやコクチバスをいまだにあちこちに放流している輩さえいるというのが現状である。

今回は都市河川ということであまり影響はなかったのかもしれないが、それでもその都市河川に生きる生き物もわずかにはいるだろうし、病気を持っている個体もいるはず(外見で判別できないことも多い)。そしてこの都市河川から外部へ逸脱することもあるかもしれない。そもそもこのイベントの趣旨は「河川の大切さを学ぶ」そうだが、今回の放流によって誤った学びを得る危険性もある。魚が少ない河川にキンギョなどほかの生き物を放つようなヒトが育成されてしまうかもしれない。ということもあり、「ヒトが管理できるような小池などをのぞき生き物を放流すべきではない」というのが私の意見である。なお、今回も文と写真にはなんの関係もない。写真は格好いいオランダシシガシラ。高校時代に巨大なジャンボオランダを育てている人がいたが、あのキンギョはまだ健在なんだろうか。

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オイランヤドカリ近縁種

2023年07月28日 18時38分50秒 | 甲殻類(昆虫等をのぞく)

殺人的に忙しかったが今日はお休み。ということで久しぶりに甲殻類のご紹介。オイランヤドカリ近縁種Dardanus sanguinolentus(種和名なし)とのこと。この写真は2008年9月に磯で採集したもので、このぶろぐでもご紹介したと思っていたのだが、残念ながらそうではなかったらしい。

この種は種の和名がないが、新しく見つかったわけではないようである。従来オイランヤドカリとされていたものだが、赤い模様があるのはやっぱり別種ということになるようだ。したがって学名はあるがまだ種標準和名がないので(学名だと長いし)、ここでは「名無しさん」とさせていただく。ゴメン。早く名前がつくといいね!

南紀以南の太平洋岸に生息するというが、関東当たりでも見つかっているらしい。生息場所は特に深くはなく、水深1mくらいの場所で何回も採集している。ただし、春から夏はオイランヤドカリは採集できたが、夏~秋だとこの「名無しさん」ばかりになってしまうようである。この2種は同じような環境にいるものの、同時には見たことがない。水温がこの2種との出会いを妨げているのかもしれない。

オイランヤドカリ

またこの「名無しさん」もオイランヤドカリも、最近は採集しても持ち帰っていない。結構大きくなる貝に入るので、レイアウトを破壊しやすいのである。この種だけでなく、ヤドカリの仲間全般に言えることだが、サンゴ水槽でヤドカリを飼育するなら、サンゴの土台は専用の接着剤でライブロックやサンゴ岩に固定してあげたほうがよい。そうでないとすぐひっくり返ってしまい、とくにハードコーラルが弱ってしまう。もう一つ飼育しない理由は、なぜか長生きしないこと。最初はごそごそ、状態よくはい回っていてもやがて水槽から貝殻を残して姿を消すということが多い。餌が足りないのか、栄養素がたりないのか、魚が多いと意外とストレスを感じるのか。これらについてはまだわからないことばかりである。オイランヤドカリは一般的な巻貝よりイモガイやマガキガイなどの貝殻を好むようである。同じようにこの仲間を好むのにはイモガイヨコバサミや、ベニワモンヤドカリなどの種がいる。

今回のオイランヤドカリの仲間についてはHirayama Shoさんより情報提供していただいた。また1.023Worldの解説などを参考にさせていただいた。みなさん、ありがとうございます。

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アオスミヤキ

2023年07月24日 22時35分58秒 | 魚紹介

最近は殺人的な忙しさでした。したがってぶろぐの更新はだいぶ減ってしまっていたり、遅れてしまっている。申し訳ない。

この間久々にすごく心躍る魚が我が家にやってきた。クロシビカマス科・アオスミヤキ属のアオスミヤキという魚である。この種は10年ほど前、2012年に我が家にやってきそうだったのだが、その時は入手することができなかった。ようやく今回、対面ということになった。なお名前の「スミヤキ」は炭焼きで、クロシビカマスの別名でもあるが、宮崎で「すみやき」といえばシマイサキのことも指すので注意が必要である。

アオスミヤキがほかの日本産クロシビカマス科魚類と大きく異なるのが腹鰭の存在と、側線の形状である。アオスミヤキ(やトウヨウカマス属)は腹鰭が大きいが、カゴカマスやクロシビカマスなどは腹鰭を欠くか、極端に小さい。

アオスミヤキの側線分岐

トウヨウカマスの側線分岐

アオスミヤキはトウヨウカマス属に似るが、側線の形が異なる。トウヨウカマス属の側線は鰓蓋付近を通るが、アオスミヤキのそれは胸鰭の上方で分岐することで見分けられる。ほかのトウヨウカマス属魚類(トウヨウカマス、エラブスミヤキ、タチカマス)も同様の特徴を有する。トウヨウカマスについてはかつてこのぶろぐでも記事にしてきた。そのため覚えている読者の方も多いと思われる(残念ながらこのぶろぐは「継続して見に来てくれている方」というのは少ない。 自分の研究についてもほとんどネタにしていないし)。

トウヨウカマス属は上記のように3種が三大洋から知られるのに対し、アオスミヤキ属は1属1種とされ、その学名はEpinnula magistralis Poey, 1854とされた。キューバのPoeyということで、やはり西大西洋産のものがタイプ標本である。日本においても長らくこの学名が使用されてきた(もっとも、日本ではまれな種ではあるが)。その後2017年にHo博士らが太平洋産(西太平洋とハワイ諸島産)のものをEpinnula pacifica Ho, Motomura, Hata and Jiang, 2017として新種記載。しかしこの学名はEpinnula orientalis pacifica (Gray, 1953)の新参ホモニム(この学名は現在トウヨウカマスにあてられている)として新たにEpinnula rex Ho, Motomura, Hata and Chiang, 2022という学名になった。「なんとかrex」という学名は「Tyrannosaurus rex」でお馴染みであるが、「~の王」を意味する(アオスミヤキのほうもたぶんこれが由来だと思うが、Zootaxaはフリーではないのだ)。いずれにせよ「暴君竜の王」よろしく、深海の強力な捕食者であったろう。写真はT.rexとのツーショット。暴君竜の王とアオスミヤキ属の王のツーショットが、6500万年の時を超えて実現した。

さて、そんなアオスミヤキを食する。「クロタチカマス科の魚は美味しいけど、骨がねぇ...」とお嘆きのそこの奥様に朗報である。アオスミヤキはどうやら、クロタチカマス科としては小骨が少ないらしいのである。実際に以前食したトウヨウカマスも同様に骨が少なくて食べやすいものであった。これがカゴカマスやクロシビカマスとなれば、もはや骨との戦いとなる。これはまだ食していないエラブスミヤキにも期待が持てそうである。味についても脂がよくのり非常に美味しかった。分布域は三重県尾鷲、土佐湾、口永良部島、トカラ列島、琉球列島。~台湾、ニュージーランド、ハワイ諸島。

今回の個体は長崎の石田拓治さんより送っていただいたもの。いつもありがとうございます。

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キタテハ

2023年07月20日 20時03分14秒 | 昆虫・クモ

ちょっと前(7月頭)に撮影したタテハチョウらしいタテハチョウ。アカタテハという名前が頭に思い浮かび、キタテハとも違うようだったのでTwitterにあげたらHN「daichan」さんから「キタテハの夏型」ではないかとのこと。いつもありがとうございます。梅雨が明ければ、昆虫も増えてくるでしょうか。

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ゴマモンガラ

2023年07月18日 23時55分44秒 | 魚紹介

今回ようやく手に入れた魚。フグ目・モンガラカワハギ科・モンガラカワハギ属のゴマモンガラの幼魚。ゴマモンガラはモンガラカワハギの仲間としては大型で、60cmを超えることもある。基本的にサンゴ礁に生息する魚ではあるが、幼魚は死滅回遊魚として関東近辺の海にも出現することがある。

ゴマモンガラの幼魚に似ているものにキヘリモンガラの幼魚がいる。キヘリモンガラの幼魚は以前奄美大島で釣ったことがある(写真)。内湾の泥底の環境にリボンスズメダイの類と一緒にいて、お世辞にもきれいな場所とは言えなかった。このほか四国でも流れ藻やロープについている幼魚を見たことがある。

ゴマモンガラの頭部

キヘリモンガラの頭部

ゴマモンガラとキヘリモンガラの見分け方は頭部を見るとよい。ゴマモンガラは吻、口の周りがびっしりと鱗でおおわれているのだが、キヘリモンガラでは吻端付近に鱗がないところ、無鱗域があるので見分けられる。またゴマモンガラの口から後方には無鱗の皮褶があるので、同じ属のモンガラカワハギと見分けることができる。ただし、モンガラカワハギとゴマモンガラは別属とするべきではないか、と私は思っている。

ゴマモンガラといえば古くは「ツマグロモンガラ」の名前で呼ばれていたという。これは背鰭軟条部、臀鰭、および尾鰭の縁辺が黒く縁どられることに由来するが、この黒い縁取りはもう少し大きな個体でないと出てこない。このくらいのステージでは吻の周りの鱗の有無で見分けるのがよいのだろう。成魚は鱗も黒く縁どられ、頭部が黄色っぽくなり、非常に格好いい魚になる。また歯も大きくなり、成魚に噛まれると出血することもある。親は卵を保護しているとき、卵を守るため大きな魚にも向かっていくが、その牙はダイバーにも向けられるので注意が必要。

ゴマモンガラもキヘリモンガラも、幼魚は死滅回遊魚として各地の海に出現する(太平洋岸に多いが、日本海岸にも出現)。しかし大型になり非常に気が強くなるため、採集して飼育するということはおすすめしない。安易に飼育しても持て余してしまうだけである。この2種の成魚が見られる琉球列島やインドー太平洋の熱帯域では、突き漁などで漁獲されることがあり、食用として市場にでることがある。私はキヘリモンガラは食べたことがあり、美味であったが、ゴマモンガラの方はまだ食していない。今回のゴマモンガラは宮崎県産で和田正昭さんよりいただいたもの。いつも、ありがとうございます。

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