11月になりました。今年もあとふた月。早いものです。
今回は久しぶりの「魚紹介」。アジ科・シマアジ属のシマアジ。シマアジは以前も記事にしたと思っていたが、記事にしたことがなかったどころか撮影した写真もほとんどなかった(ハレーションの酷い1枚のみ)。ようやく今回撮影することができたのであった。
さて、シマアジといえばヒラマサとならび以前から、何種かに分けられるのではないかという話がある。実際に古くは「タイプA」とか「タイプB」と呼ばれる2タイプが知られている。これは遺伝的に区別できるものとされ、タイプAは脊椎骨数25、背鰭軟条数24~26(ふつう25~26)、臀鰭軟条数20~22(ふつう21~22)、タイプBは脊椎骨数24、背鰭軟条数23~25(ふつう23~24)、臀鰭軟条数20~22(ふつう20~21)とされる。また幼魚に出現する横帯はタイプAでは不明瞭だがタイプBでは明瞭であるらしい。この個体は軟条数などを計数するとタイプAであるようだ。
沖縄県ではタイプBのものが水揚げされているが、写真を見た感じでは沖縄のものは本州~九州沿岸のものとはだいぶ異質であった。しかしながらタイプBのものも九州以北にも見られる。今後シマアジは外見だけでは識別できない時代も来るのだろう。なお、海外のシマアジ属魚類の分類もまた難航しているという話である。
アジの分類は古くから混乱があり、従来は本種をCaranx、つまりギンガメアジなどと同じ属の中にぶち込んでいる文献もあった。現在はPseudocaranxがシマアジ属とされる。Pseudoとは「偽の」とかそんな意味である。「Pseudochromis」が「偽のスズメダイ」すなわちニセスズメ類の学名であることを思い浮かべていただければわかりやすいだろう。現在は分類学的にはマアジ属だとか、メアジ属に近縁とされるが、やはり、カイワリとはとくに近いようだ。カイワリは長らくFishbaseや欧米の文献などではCarangoidesに含められてきた過去があり、Carangoidesのグループに近いと思いきや、それほど近縁ではないらしい。
シマアジの体側の傷
シマアジはよく知られているように美味しい高級魚である。そのため養殖もされている。しかしながらその肌は非常に弱いらしい。この個体にも体側に血がにじんだような傷がある。これは養殖個体ではなく、天然モノのようでほかのアジの仲間といっしょに網に入ったようである。ただ網による擦れか、ほかの魚との接触により擦れたのかはわからなかった。それとも寄生虫によるものなのかもしれない。
シマアジの刺身
さて、そんなシマアジ。シマアジを食べたのももちろん初めてではないが、アジ科の仲間でもシマアジの含まれるクレードにはメアジやらカイワリ、マアジなどが含まれこれらはみな美味しいものばかりである。そのお味は、もちろん美味。
一見おいしそうだが、実際には想像以上に美味なのだ
脂ののりもいいが、その乗り方もまた上品である。養殖物のようなぎとぎとしたものではない。ああ、うまかった。なお今回のシマアジも長崎県 マルホウ水産 魚喰民族 石田拓治さんより。いつもありがとうございます。