日本は太平洋側にフィリピンからやってきた日本海流(黒潮)が通っており、沖縄などではサンゴ礁の発達も見られ、沖縄やフィリピンの間では魚の種類はある程度共通種がみられたりします。しかし勿論のこと、両地域を比較しますと沖縄にしかいない魚、逆にフィリピンにのみ見られる魚というのも存在します。
ベラ類、ハタ類、フエダイ、ブダイ類などは卵も仔魚もサイズが小さく、黒潮にのって広範囲に分布を広げられます。この仲間は日本にも同じ種類がいたりします。逆にハゼ類、テンジクダイ類、スズメダイ類などは卵や仔魚が大きいためにあまり分布を大きく広げないものもいます。このような分類群は日本に産しないものもいます。
スパインチークアネモネフィッシュPremnas biaculeatus (Bloch)は西部太平洋に生息するクマノミの仲間ですが、眼下に目立つ大きな棘があるなどクマノミ属と違う点がみられます。現在のところ1属1種です。
生態はクマノミ属の魚とほぼ同様で主にサンゴイソギンチャクと共生します。本種は雌雄で色彩やサイズが大きく異なることが報告されています。雌は雄よりもずっと大きくなり、黒っぽい体色が特徴的です。一方で雄は小さいものの、鮮やかな橙色と白色の帯が特徴の美しい魚です。雌は15cmを超える大型種です。
雄
観賞魚として利用されていますが、性格はかなり強くほかのクマノミや小魚とは一緒に飼うことはできません。その性格が災いし、三重県などで本種が釣りによって確認されたことがあります。このような放流は単独での放流のためあまり大きな影響がないと思うひともいますが、交雑などの可能性もありますし、その地域にいない寄生虫や感染症などが蔓延することも考えられます。基本的には飼育した魚は最後まで自分で面倒を見るべきでしょう。
スパインチークアネモネフィッシュの名称はもちろん大きな眼後方下の棘に由来します。ほか「しろみすじ」という和名があったり、アクアリストの間ではマロンアネモネフィッシュと呼ばれることもあります。