今日で7月もおしまい。ということで、以前飼育していた魚を。ブダイ科・アオブダイ属のヒブダイ。ヒブダイは成長するにつれて色彩や模様が大きく変わるが、幼魚のうちは同じ個体でも、全く違う模様に変化することがあり興味深い。この個体はアオブダイと思われたが、どうやらヒブダイが近いように思われる。体側に縦帯が入っていても、いつのまにかその縦帯が消え、薄い緑色の体に白い縦帯が入っていたりする。なお、上記の2枚の写真は、異なる魚のようにも見えるが、いずれも同じ個体である。
動きは素早く、サンゴがある南日本太平洋岸では枝状サンゴの中に隠れることもよくあるため、採集は結構難しい。大きな潮だまりに入ることもあり、その場合は少しは採集もしやすいかもしれない。
飼育は特に難しいというわけではないが、ブダイ類は夜間、岩の隙間などの中に入り完全に寝てしまうので、夜活発に動く甲殻類との飼育は難しいことがある。特にヤドカリやカニなどは小型のブダイに限らず、小魚を食べるので一緒には飼育しにくいといえる。餌は何でもよく食べるので、海藻類を餌に与える必要はなかったりする。この個体は2008年の秋に採集したもので、小型のテンジクダイやベラ、スズメダイなどと飼育していた。
ヒブダイもほかのブダイ同様、成魚の雄と雌で色彩が大きくことなる。上の写真の雌のほうがよく知られているだろうか。黄褐色の体で、背中に水色の模様が数本入る。幼魚はかなり頻繁に模様を変えるが、ここまで大きくなるとさほど模様は変わらない。ただし、体の色は濃くなったり薄くなったりすることがある。
雄は背鰭や頬の部分が橙色っぽく、尾鰭の端、上下は少し伸長するのが特徴だが、写真の個体はほかの魚につつかれたのか伸びていない。ヒブダイの雄はほかのブダイ類の雄と比べると特徴は少ない。また色彩は水中でみただけではわかりにくいだろう。比較的温帯域にも適した種と考えられ、九州以北でも大型の雄個体が定置網で漁獲されている(このぶろぐでも過去に紹介している)。ブダイ科の魚としては大きく育つもののひとつであり、全長80cmくらいにまでなる。沖縄では重要な食用魚のひとつであり、沖縄では「あーがい」と呼ばれる。