魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

高知の海のオニカサゴたち

2020年08月28日 23時51分29秒 | 魚紹介

私はほぼ毎年高知の海に遠征に出かける。きれいな熱帯性の魚が多いがそのような魚を捕食するタイプの魚も多くみられる。オニカサゴ属の魚など、その代表的なものといえるだろう。今回はTwitterのフォロワーの方である「ばなんさん」さんのリクエストにお答えして、高知県の海で採集したり、見たり触れたりしたオニカサゴ属の魚を紹介したいと思う。

●オニカサゴ

オニカサゴ

オニカサゴ頭部、涙骨先端が皮下に埋没している

この個体は宿毛市の魚市場で競り落としていただいたもの。オニカサゴの仲間ではもっとも普通種であり、日本では外房から九州南岸にまで分布し、日本海岸でもたまにみられる。水深171mから記録されることもあるが、基本的には浅場に生息している。よく深場の釣りで「オニカサゴ」とされているものは、イズカサゴであることが多い。涙骨隆起の先端は皮下に埋没するが、これはほかの多くのオニカサゴ属に共通する特徴といえそうである。体側に黒い斑点があるのが特徴とされる。

●ヒュウガカサゴ

ヒュウガカサゴの幼魚

ヒュウガカサゴの成魚

ヒュウガカサゴの後頭部、くぼみに注目

ここにあげたヒュウガカサゴのうち成魚は、「魚類写真資料データベース」のKPM-NR108536と同一個体である。体側に黒い点があるように見えるが、オニカサゴほど顕著ではない。本種は眼後方に大きなくぼみがあり、オニカサゴと見分けることができる。高知県では何度か確認しているのだが、色の変異が多いため同定には難儀させられる。幼魚は大月の磯で採集し、成魚は宿毛の魚市場で上記オニカサゴと一緒に競りにかけられていて競り落としてもらった。ウルマカサゴにも似るが胸鰭の軟条数は少ない。

●イヌカサゴ

イヌカサゴ小型個体

イヌカサゴ成魚

イヌカサゴ頭部

イヌカサゴは内湾からやや沖合に面した岩礁域にまでひろく生息しており、河川の汽水域にも入る。幅広い環境に適応しているといえるかもしれない。動物食性が強く、キビナゴを丸のみにすることもある。私は2個体見ているのだが、いずれも大月の内湾である。この地域では普通種といえるのかもしれない。ほか友人が宿毛でも釣っている。

イヌカサゴの涙骨隆起先端。棘が露出する

色は褐色が強いが決めてにならないだろう。また臀鰭鰭の縞模様も目立つがこれも同定ポイントにはならないと思われる。オニカサゴやヒュウガカサゴなどとは涙骨隆起の先端が皮下に埋没せず、露出することで見分けられる。オニカサゴなどでは皮下に埋没する。

●サツマカサゴ

サツマカサゴ

サツマカサゴ

サツマカサゴ胸鰭内側

サツマカサゴは伊豆以南の太平洋岸ではよく見られる魚である。高知県でも浅いところではよく見られ、浅いとこでオニカサゴ属を見た、といえばサツマカサゴとオニカサゴのどちらかであることが多いように思う。生きているときは灰色っぽい体が特徴だが死後は写真のように急に黒っぽくなってしまうことが多い。オニカサゴに似るが、背中が若干盛り上がっていることが多く、区別は容易であろう。

胸鰭の内側は色が鮮やかである。ニライカサゴにも似るが胸鰭の内側の模様により見分けることができる。宿毛でも大月でも普通種であり、それより北の愛南町でも採集される。

沖合底曳網漁業で漁獲されたサツマカサゴ

基本的には浅場に生息する種であるが、土佐湾では沖合底曳網により水深150mほどの海底からも漁獲されたことがある。写真がその個体である。

ヒュウガカサゴを飼育している60cm水槽

上記の4種のほかにニライカサゴという種も採集できたわけではないが確認している。この種は従来セムシカサゴと呼ばれていたものであったが、「せむし」というのが差別用語であるとされ、2004年に本村ほかにより、ニライカサゴと改称された。この中では今回紹介したイヌカサゴとヒュウガカサゴを日本から初報告し、これらの標準和名があたらしくつけられた。

●文献

本村浩之・吉野哲夫・高村直人,2004. 日本産フサカサゴ科オニカサゴ属魚類(Scorpaenidae: Scorpaeniformes)の分類学的再検討.魚類学雑誌,51(2):89-115.

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ハナフエダイとウスハナフエダイ

2020年08月17日 10時12分05秒 | 魚紹介

しばらく「バタバタ」していたのが落ち着いてきたので、魚の写真でも。石垣島で撮影した魚の写真でもうpしてみましょう。

石垣島の魚市場で見た面白い魚。下はハナフエダイなのだが、上の2匹はつい最近有効種として復活し、標準和名がついたウスハナフエダイである。2012年に魚類学会が山口県であったときに講演を聞いたことがあった。懐かしいものである。

ハナフエダイとウスハナフエダイの見分け方は尾を見ればわかる。ウスハナフエダイは尾鰭の下方が少し縁どられているだけ。

一方のハナフエダイは尾鰭の上葉まで白く縁どられている。石垣島では本種がよく水揚げされていたが、残念ながらサンプルを入手することはかなわなかった。基本的にどちらも深海性の種であるが、ウスハナフエダイのほうがより深所を好むらしい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アマクチビ

2020年08月09日 22時28分34秒 | 魚紹介

 

今年の3月に石垣島を訪問したが、そのときにはいろいろな魚と出会うことができた。現地でお世話になった方の知り合いのお店を訪問したのだが、赤さび色の変わった魚を売っていた。アマクチビという魚である。

アマクチビはフエフキダイ科の魚なのだが、イソフエフキみたいな普通の顔、キツネフエフキみたいな吻が長くスマートな顔ではなく、アマクチビには申し訳ないのだが「醜い」。しかし、それだけにどこか犬のような魅力を感じてしまう魚である。

アマクチビはフエフキダイ科のフエフキダイ亜科に含まれる。もうひとつのメイチダイ亜科にはメイチダイ属、コケノコギリ属、ノコギリダイ属、そしてヨコシマクロダイ属が含まれているのに、フエフキダイ亜科はフエフキダイ属だけである。そのかわり、この属はフエフキダイ科のなかの最大勢力なのだ。そのフエフキダイ属もふたつの亜属に分けられ、片方は胸鰭の基部内側に鱗があるもので、ハマフエフキやアマミフエフキ、イトフエフキ、そしてイソフエフキなどが含まれる。もう片方にはフエフキダイ、シモフリフエフキ、アミフエフキ、そしてキツネフエフキなどが含まれるもので、こちらは胸鰭基部内側に鱗がない。アマクチビはどちらになるだろうか。

アマクチビの胸鰭基部内側には鱗がある。つまり、ハマフエフキなどのほうに近いのだ。こちらの属の魚のほうが、がっしりした体形のものが多いように思う。キツネフエフキやアミフエフキなどはほっそりとした体形をしている。

今回のアマクチビは見つけて一目ぼれであった。きれいな白身で脂がよく乗っており美味しい。沖縄本島よりも魚の価格がずっと安いのもうれしいところである。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ヒレジロマンザイウオ

2020年08月02日 08時49分12秒 | 魚紹介

久しぶりにぶろぐを更新。シマガツオ科・ヒレジロマンザイウオ属のヒレジロマンザイウオである。

見た目のシルエットはマナガツオに似ているかもしれないが、全く関係ないグループである。科の標準和名はシマガツオ科であるが、カツオ(サバ科)との関係もない。マンザイウオというのも同じシマガツオ科の魚だが、別属の魚である。

ヒレジロマンザイウオは非常に大きな胸鰭を有しているが、腹鰭は非常に小さい。ツルギエチオピアなどではもう少し大きな腹鰭を有しているが、それでもそんなにおおきいものではない。ただマグロ類だってあれほど体がでかいのに腹鰭は小さい。回遊魚や中・深層を遊泳する魚は腹鰭もそれほど必要ないからであろうか。

筆者はシマガツオ科の魚をこれまで何度も見てきた。リュウグウノヒメ、ベンテンウオ、マルバラシマガツオ、シマガツオ、ヒメシマガツオ、ヒレジロマンザイウオ、チカメエチオピア、ツルギエチオピアといった魚である。特にこれらの魚は太平洋よりも日本海岸や長崎沿岸のものを見ることが多く、これらの地域以外で見たのはベンテンウオ、ヒメシマガツオ、シマガツオくらいのものである。とくに日本海岸でこれらの魚の問い合わせが多い。

ヒレジロマンザイウオの食性は動物食性で、とくに同じように遊泳している魚を食べている。この種に近いチカメエチオピアの胃の中からはカタクチイワシやマアジ、オキヒイラギなどが大量に出てきた。小さい、けれど鋭い歯でたくさんの魚を食するのであろう。格好いい形のハンターだ。

ヒレジロマンザイウオはお刺身にして食べた。なかなか脂がのり風味もよく最高の魚であった。今回のヒレジロマンザイウオは福井県の旅館金龍さんより。いつも、ありがとうございます。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする