(※この記事は2019年3月31日に書いたものですが、2021年3月に株式会社桃鶴堂の社長氏に消され、アーカイブを残すこともできませんでした。そのため、ノンオリジナルとなります。あらかじめご了承願います)
今日は平成30年度最後の日です。明日には新元号が発表されます。楽しみです。
これはスズキ目・ハチビキ科・ハチビキ属のヒチビキという魚である。名前は「ハチビキ」に似ているがいち文字違う。古い図鑑には掲載されていないが、本種は1998年に新種記載された比較的新しい魚だからである。
一見体高の高いロウソクチビキやトゲナシチビキに見えるが、ロウソクチビキやトゲナシチビキは第1・第2背鰭が大きく離れていて、ロウソクチビキは二つの背鰭の間に小さい棘がある(トゲナシチビキにはない)のに対し、ヒチビキは第1背鰭と第2背鰭はあまり離れておらず、すべての背鰭棘に鰭膜があるか鰭膜のない棘は1本程度であることによりロウソクチビキやトゲナシチビキと見分けることができる。ただしこの個体はやや鰭がぼろくなってしまっていてこの特徴はわかりにくい。なお、本種はハチビキ属に含まれているのに対し、ロウソクチビキやトゲナシチビキはロウソクチビキ属というまた別属の魚となっている。
ハチビキ科の魚は外洋の中深層を泳ぎ回るような種が多く、分布も広域に及ぶように思われるが、本種はあまり広域に分布する種ではないようである。タイプ産地は高知県御畳瀬の市場で、ほかに兵庫県日本海側の浜坂や長崎県、九州-パラオ海嶺からしられている。日本産のハチビキ科はロウソクチビキ属の2種のほか、ハチビキ属のハチビキ、ハワイチビキ、そして本種の計5種が生息している。Plagiogenion属のナンヨウハチビキが高知県から得られたという話もあるが、おそらく海外で漁獲されたものを水揚げしたか、海外から持ち込まれたものと思われるが、どうやら体高なども異なるようでヒチビキを含むほかのハチビキの誤同定かもしれない。当時は今のような高品質な図鑑などなかった。
ヒチビキの食についてではあるが、インターネットで「ヒチビキ」と検索してもそれらしい情報にはなかなかたどりつくことができない。おそらく食べられていてもハチビキやロウソクチビキなどと混同されているのは間違いないようである。しかし今回は塩焼きで美味しくいただいた。ちょっと焦げてしまったけれど美味しい。今回のヒチビキも長崎 印束商店 石田拓治さんより。いつもありがとうございます。