魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

コイチ

2023年11月30日 15時14分29秒 | 魚紹介

久々のニベ科の記事。4年ぶりくらいだろうか。有明海産のニベ科魚類であるコイチを入手。ニベ科・ニベ属の魚であり、本科の代表的なもののひとつといえるだろう。ニベ科の魚は中国~東南アジアの内湾にはたくさんの種がいるが、日本にはぜか種が少ない。10数種が知られているものの、ニベ、コイチ、シログチ、クログチ、オオニベの5種をのぞいてほとんどが東シナ海や黄海に生息するものとなっている。以西底曳網でたまに漁獲がある、というがそもそも以西底曳網漁業自体が衰退しており、入手は至難の業である。全身が真っ黄色なキグチやフウセイなど、漁獲されませんかねぇ。見てみたいんですが。

コイチの特徴は色々あるのだが、まず届いたコイチをみて驚いた。腹部が黄色っぽいのである。これがコイチとニベを見分けるポイントになるようだ。ニベでは腹部は黄色くないため見分けは難しくない。ただし液浸標本とかだとこの色は残ることはないため、標本の同定には使えない。

外見からわかるもう一つの特徴は、側線上方の暗色帯がコイチではしばしば乱れていることで、これがニベではほとんど乱れないことで見分けられる。また外見以外では鰓耙数でも区別でき、コイチでは21本以下、ニベでは22本以上である。また頭長と最長の鰓耙の比率も同定に使えるという。ひとつの形質だけで同定しないでいくつかの形質を同定に使ったほうがよいと思われる。また生息環境もニベは外洋に面した砂底、本種は内湾や大河の河口周辺の砂泥底に多いという違いがある。分布域は山陰・高知県以南、瀬戸内海、有明海、東シナ海沿岸。海外では南シナ海、黄海、渤海で、有明海や瀬戸内海、黄海、渤海に多いのは内湾を好む本種の特徴といえる。このほかに東北地方の八戸や利根川流域での採集例もあるというが、どこから入ってきたのだろうか。

コイチと出会うのは今回が初めてではない。2019年にも兵庫県瀬戸内海産の個体を入手している。この個体は体長218mmほど、決して小さくはないのだが、体は銀色っぽく、腹部の黄色も薄かった。鮮度的にはこの2019年の個体のほうがよいので(シめてあった)、新鮮なもの、もしかしたらシめたものでは明瞭には出ないのかもしれない。でも、側線の上の模様の違いでコイチとわかりやすい。産地の違いとしては、瀬戸内海で腹部が黄色のコイチが上がっており、あまり関係はなさそう。なお、臀鰭はどの個体も黄色っぽい。

ニベの仲間はいずれも中国では高級食材として扱われる。しかし近年は中国の沿岸域の開発や、乱獲がたたりあまり見ることができていないらしい。さらに厄介なことに中国で養殖されている大型のニベ類Sciaenops ocellatusが逃げ出して在来のニベ科と競合する可能性もある。まだそこまでのことはないだろうが、2007年までに長崎県では磯からレッドドラムが釣れている(椎名さんはそのサイトへのアクセスが不可とされているのでソースは表示できない)。今回のコイチは唐揚げにして美味しくいただいた。ニベ科は大陸部では塩干物にしたり、鰾からにかわを取ったりしている。ほか練製品の原料としても利用される。今回のコイチは長崎県の石田拓治さん、2019年のコイチは北村太一さんより。ありがとうございます。

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ヒシダイ

2023年11月28日 15時32分14秒 | 魚紹介

ご無沙汰ぶろぐ更新。つい先日入手したかわいい魚のご紹介。スズキ目・ヒシダイ亜目・ヒシダイ科のヒシダイ。

ヒシダイは従来はマトウダイ目の独立した亜目に含められていたが、「日本産魚類検索」の第三版ではスズキ目の中に含められている。もっとも最近は「スズキ目」を数多くの目に分割していたりするので、これも暫定的なものであろう。Nelson et al. (2016)ではCaproiformes、和訳すると「ヒシダイ目」(仮)となっている。もっとも分子分類だけではなんともいえないだろう。科はふたつの亜科、CaprpninaeとAntigoniinaeの二つに分けられているが、どちらも1属のみからなる。前者は東太平洋と地中海の固有属で1種のみ、後者は三大洋に10数種が知られている。日本産はヒシダイ、ベニヒシダイ、ミナミヒシダイの3種である。

ヒシダイは福島県、房総半島以南太平洋岸~沖縄舟状海盆に分布している。海外では非常に広い範囲にすみ、大西洋、インド洋、太平洋の熱帯・亜熱帯域にすみ、タイプ産地はマデイラだというが、この種とされていてもいくつかは別種として独立するかもしれない。なおヒシダイを紹介するのは今回が初めてではなく、過去3回ほど紹介しているが、行数は少なかった。今回はしっかりご紹介。ヒシダイの特徴としては口が若干上を向いていることであり、この特徴でベニヒシダイと見分けられる。ベニヒシダイでは吻がやや長くて口も水平である。また頭部背縁はヒシダイでもくぼむが、ベニヒシダイのほうがよりくぼむ。背鰭と臀鰭軟条もヒシダイより少なくそれぞれ25~30、25~27であり、これでも見分けられそうである。ベニヒシダイはヒシダイよりもやや南方系なのか、琉球列島で多く見られるのは本種のように思われる。ただ三崎以南でも漁獲されている。英名でIndo-pacific boarfishと呼ばれ、スリランカ~桓武海山まで見られる。「沖縄舟状海盆及びその周辺海域の魚類」では「アフリカ」との記述もあるのだが、別種との誤認かもしれない。

ミナミヒシダイもその名の通り南方の種である。口の形状はヒシダイに似ているが、背鰭や臀鰭の軟条数はそれぞれ26~30、25~28であり、背鰭・臀鰭軟条数が33~37、30~35のヒシダイに比べて少ない。分布域は小笠原諸島、和歌山県すさみ、沖縄舟状海盆で、国外では南シナ海、カイ島、オーストラリア東岸、ニュージーランドである。タイプ標本はクイーンズランドから採集され、1985年には上記の「沖縄舟状海盆及びその周辺海域の魚類」のなかで日本初記録とされ種標準和名が提唱された。なお、残念ながらベニヒシダイ・ミナミヒシダイも私は入手していない。もしベニヒシダイやミナミヒシダイが獲れたという方はご一報いただきたい。市場に出ることもたまにある。高知県大月の道の駅で購入した個体は「アカマンボウ」として販売されていたが、アカマンボウとは大きく異なる魚である。

ヒシダイの刺身。ヒシダイは体高があるが薄っぺらく、食するところは少ない。身は薄い赤みがあり美しく、味もかなり美味であった。やはりマトウダイの仲間とは違うと感じさせられた。今回のヒシダイは長崎県の石田拓治さんより。いつも、ありがとうございます!

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クマノミも5年

2023年11月23日 05時12分35秒 | 魚介類飼育(海水)

なんだかんだと我が家にきて色々あったクマノミも5周年。当初からあまり大きくはなっていない。当初は全身が黒く腹部がオレンジという、メリハリのある美しい色彩であった。左に写っているのは黄色がきれいなイエローリップダムゼル。この子も来月に5周年を迎える。

野生のクマノミというのは皮膚が弱いことがある。そのため採集して持ち帰ってしばらくはメイン水槽には放さず様子をみる必要がある。それさえ乗り越えれば基本的には丈夫な魚である。体側の帯は白色と思いがちだが、実際には水色で美しい。

最近のクマノミは腹部のオレンジの面積が狭くなり、色も黄色っぽくなった。また小さい黒斑が出てしまっている。しかし帯は薄い水色で美しい。クマノミの仲間はうまく飼うと20年くらい生きることもある。我が家の子たちも長生きしてほしい。

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サビウツボ

2023年11月22日 02時23分11秒 | 魚介類飼育(海水)

我が家で飼育しているサビウツボ。先月に我が家に来て5年がたった。

海水魚に限らず、長期飼育というのは色々とトラブルが起こることがある。この個体は2021年の冬に水槽の酸欠により死にかけたことや、水槽から飛び出そうになったりしたこともあった。ことし3月にも体表の粘液が大量に出るというトラブルもあった。

サビウツボは動物食性であり、自然下ではイカやタコのほか、小魚や甲殻類も食う。我が家ではイカをメインで与えているほか、小魚や海に行ってカニなどを捕まえて与えたりもしている。本種は昔はウツボ属ではなくSiderea属とされていたこともあった。この属には甲殻類食いとしてよく知られるアセウツボも含まれており、やはり甲殻類は与えたらよく食うのである。もちろん与えるカニはイソガニやイワガニ、クモガニ(小型のもの)が無難。オウギガニ科のカニなどは猛毒をもつこともあり、与えないほうがよいだろう。

ウツボ類は肉食性がつよく、上記の餌は水を汚しやすい。そのためろ過槽もしっかりしたものが必要になる。我が家では上部ろ過槽を使用しているが、上部ろ過槽は意外なほどパワーがあり、オーバーフロー水槽でウツボ類を飼育しない場合の第一候補になりうる。外部ろ過槽との併用もよいが、パイプを水槽に取り付ける必要性があり、すきまができやすい(外部ろ過槽のみだとパワーが不足する)。この方式に限らず、ウツボ類の脱走には細心の注意を払いたい。ウツボ類の死因は共食い、拒食からの飢え死に、そして脱走がほとんどであろう。長寿な魚であるため、しっかり飼育できる環境を整えたい。私も今後長く飼育していきたい。

 

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ナミマツカサ

2023年11月20日 22時26分35秒 | 魚介類飼育(海水)

我が家に新しいイットウダイ科・アカマツカサ属魚類がやってきた。ナミマツカサという種である。

ナミマツカサは以前このぶろぐでも紹介したことがある。全身の写真をこのぶろぐにアップしたのは昨年が初めてではあるが、実はここ何年かコンスタントに釣っているし食したこともある。しかし飼育するのは実は今回が初めてであったりする。今回はナミマツカサは夜釣りで釣れたのだが、針がちょこっと下顎の先端にかかっているだけ。これだと魚体へのダメージを極めて少なくすることができる。その後やや小さめの個体も釣れ、2匹とも無事に1000kmほどの道のりをクリア。魚を運ぶ時には運搬中にはエアーポンプを切るとスレ傷などを予防でき状態よく運ぶことができる。なおトップの写真は大きいほうの個体である。

すでに我が家にはもう4年ほど飼育しているセグロマツカサがいるため、この水槽に2種類のアカマツカサ属が入ることになった。そのため不安もあったのだが、90cm水槽であってもうまく共存している。到着後3週間ほどたった今では餌も爆食いしており、もう心配はない。こうしてみるとセグロマツカサよりもナミマツカサのほうが赤色が強くでている。基本的には夜行性の魚であるが、水槽内では敵がいないためか昼間から泳ぎ回っている。

この場所ではナミマツカサはよくいるが、昼間は岩の影やテトラの中に潜んでいるのかまったく出てこない。このナミマツカサを採集した場所で発信器を取り付け、昼間はどこにいるのか調べてみたいものである。アカマツカサ属はセグロマツカサとナミマツカサしか飼育したことはないのだが、2種ともすぐに餌を食べてくれるのがうれしい。一方イットウダイ属は餌付けに難ありのものもいるようで、この間のテリエビスは結局痩せが回復せず弱って死んでしまった。餌は当初はホワイトシュリンプやキビナゴなどを与えていたが、慣れれば人工餌も食べてくれるはず。11/20現在は冷凍餌から配合餌の切り替えの途中でどちらも併用しながら与えている。

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